ペーパーバックの数が増えていく TEXT+PHOTO by 片岡義男

25 秋の人々の雨のような足音

25 秋の人々の雨のような足音_b0071709_177011.jpg 九歳頃に貸本屋で借りた海野十三の小説を別にすると、ここにあるレイ・ブラッドベリーのこの『オクトーバー・カントリー』は、僕が最初に買ったファンタジー小説ではないか。一九五五年あるいは一九五六年、まだ中学生あるいはもう高校生、といった年齢の頃だ。表紙絵を何度となく眺めた記憶がある。これも読書のうちだろうか。いつも十月のような国。それはいったいなんだろう、と少年の僕は思った。
 『ダーク・カーニヴァル』から初期の作品を十四作選んで大幅に修正し、そこにその時点での最近作を五編加えて、『オクトーバー・カントリー』となった。バランタイン・ブックスはこの頃からSFやファンタジーを熱心に刊行していた。このペーパーバックの巻末に、バランタインからすでに刊行されていたサイエンス・フィクションのリストがかかげてある。題名と著者名を順番に見ていくと、目まいがしてくる。レイ・ブラッドベリーが「若い作家」と呼ばれていた頃だ。
by yoshio-kataoka | 2006-07-25 19:09




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