20 アメリカの戦争体験

なんらかのかたちで戦争を主題にすえた、アメリカの作家たちによる、二十二編の短編がこの一冊のなかにある。ペーパーバックになったのは一九九一年のことだ。東京で買った。二千円ほどもしただろうか。本、特にアメリカのペーパーバックは、買いやすい。あ、これは、とちょっとでも思ったなら、とにかく買っておけばいいじゃないか、というきわめて純粋に反射的な行為として、ペーパーバックを買ってしまう。四百二十ページのなかに、すぐれた作家たちによる二十二とおりの戦争がある。いちばん最初にあるアンブロース・ビアースの『行方不明のひとり』という作品から、その戦争のなかに入っていくことが出来る。最後にあるティム・オブライエンの『幽霊兵士たち』までたどりつくと、一冊の短編集のなかに入り込んで過ごした想像力の体験は、自分に一生ついてまわるだろう。
by yoshio-kataoka
| 2006-07-07 10:55