18 ケンジーロという名のサムラーイ

表紙絵のなかにいる男性が、帝国日本の侍であるケンジローだ。その彼がうしろから抱き寄せているのは、彼が愛したイギリス女性、エリノア・ミルズだそうだ。十九世紀の中国を舞台にした『ジェイド』という小説がベスト・セラーになったパット・バーの第二作は『ケンジロー』といい、「十九世紀の日本を描いた小説」と、副題がつけてある。
物語は一八六二年のヨコハマから始まっている。薩摩、長州、幕府、朝廷、攘夷、といった時代だ。次の年の七月には、薩摩藩がイギリスの艦隊を相手に、鹿児島湾で戦争を始めている。五百ページだからさほど大部な作品とも言えない。イギリス女性エリノアが、恋人となるケンジローという男性に、西欧のそれとはいかに異なったセクシュアリティを発見するか。それだけを追うのも、ひとつの読みかただと僕は思う。
by yoshio-kataoka
| 2006-06-30 15:25