12 ニューヨークの地下鉄小説

しかし読んでみるとこれがたいへん面白い。巧みによく書けている。四人の実行者たちのうち、もっとも臆病で神経質な、したがって予期せぬ突然の展開を前にしてパニックにおちいりそうな男性に関して、著者はもっとも多くの言葉を使っている。だからこの男だけが、身代金の分け前を持って、ひとまずはトンネルから脱出するのだろうな、という程度までなら予測がつく。そしてそのとおりになる。路上へと出た彼がアパートメントの部屋に戻り、すぐに刑事の来訪を受けてパニックを起こし、あっさりと逮捕されるまでの、ごく短く簡潔に語られる展開の部分が、もっとも面白い。
「やがて大作の映画になる」と、書評の賛辞を集めたページにうたってある。映画になって日本でも公開されたような記憶がある。なんという映画で、誰が出演したか。見たいものだ、と僕は思う。
by yoshio-kataoka
| 2006-06-09 11:44