9 西部劇小説という銃の世界

ゴールド・メダル・ブックスで刊行された数多いペーパーバック作品のなかから、題名にGunあるいはGunsという言葉を持った西部劇小説を、十五冊抜き出して集合写真を撮ってみた。ゴールド・メダル・ブックスは、コネティカット州のグリニッチに本社を置いていた、フォーセット・パブリケーションズという出版社から、刊行されていた。いまではフォーセットはどこか大きな出版社の傘下だろう。ゴールド・メダル・ブックスという名は、もう使われていないのではないか。
一冊ずつ手に取っては、呆れたり妙に感心したりしながら眺めているのとは、また違った感銘を写真から受ける。どの作品も表紙絵をともなっている。西部という現場において、男たちによって銃がさまざまに駆使される様子が、どの表紙絵にも描かれている。リアリズムひと筋の絵だ、と思ってしまうとそれは誤解となる。一見したところ、リアリズム描写のように思える。しかしなおもよく観察していくと、銃の駆使されかたに独特な美化があり、その美化はファンタジーにつながっている、ということがわかってくる。
アメリカの銃はリアリズムだ、と多くの人に思われているが、リアリズムという面は確かに持ちつつも、基本的にはファンタジーなのだ。ファンタジーとしての銃。アメリカの理念を押し立て前進させていくのが銃であるとして、その銃がじつはファンタジーなのだとすると、理念もまたファンタジーではないのか。銃で渡り合う敵はファンタジーを成立させる敵役だ。そして戦場は、ファンタジーを限りなく現実へと接近させる、悲しい試みの場だ。
by yoshio-kataoka
| 2006-05-26 21:31