ビーチサンダル・クロニクルズ TEXT+PHOTO by 今井栄一

036【音楽のある風景、NEW YORK, VANCOUVER, HAWAII】

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 最近、Gabby & Lopezの新譜を、繰り返し、繰り返し、聴き続けている。
 アルバム・タイトルは『Nicky's Dream』。今もラップトップのiTunesから流しながらこれを書いているところ。街を歩いているときにはiPodで、もちろん車の中で、ソファの上、エレベーターの中、地下鉄の中、書店をのぞきながら・・・。何処でも、いつでも。
 瞑想音楽。
 そんな感じ。
 瞑想と言っても、彼らの音楽はアンビエント・ミュージックの類ではないと僕は思う。静かなだけの音楽があるとするなら、彼らの音楽は対称的だ。彼らの音楽は決して静かではない。決してにぎやかではないけれど、強い主張がきっちりあるからだ。彼ら2人の奏でるギター・サウンドの根底にはロックのビートが響いている(もちろん音楽の受け取り方はひとり一人まったく異なるので、ここで書いているのはあくまで僕の個人的見解です)。
 とにかく、すごく、ものすごくいい。The Album Leafの新譜もいいけれど、Gabby & Lopezの新譜は至福。

 エレクトロニカ・ミュージック、いわゆるプチプチ系の音楽が、今、とても面白いように思う。これは日本に限らず、欧米的にもそういう流行があるみたいだ。
 自分のiPodのお気に入りソング・リストを振り返ると、少なくとも僕は、そのジャンルにあてはまる音楽ばかりを最近よく聴いている。The Album Leaf、Chari Chari、Natural Calamity、The Aurora、Moose Hill、Boards of Canada、Calm、Dub Tractor・・・。まだまだあるけれど、きりがない。今、気づいたけれど、このジャンル、日本人の音楽家が意外に多い。僕は邦楽と呼ばれる音楽をほとんど聴かないけれど、いわゆるプチプチ系サウンドに関してはフェイバリットな日本人音楽家がたくさんいる、ということだ。坂本龍一を筆頭に。
 こういった音楽家たちはテレビには登場しないし、FMラジオからも彼らの楽曲は、BGM的に時々使われる以外は、流れてこない。
 でもそれって、本当にひどいことだ。こんなに素晴らしい音楽が、「歌詞がないから」とか「長いから」とか、そういうアホな理由だけでオンエアされないのだから。インストゥルメンタルのナンバーだというだけで、DJトークの後ろで申し訳程度に流されるだけなのだから。だいたい昨今のFMラジオ局は3分半の楽曲しか流さない。5分以上あったらもうNG、それでも奇跡的にオンエアされたときには4分前後でフェイドアウトしていく始末。やれやれ、ひどい。日本の音楽ビジネスのファシズム的内情、音楽環境の貧しさが、このFMラジオに象徴されている。そこにはオルタナティブ性がないのだ。ヒット曲しか流れないから。「オルタナティブ=その他の選択」が皆無なのだ(これはTVや新聞なども同じ現状。そして政治や行政についても)。オルタナティブが皆無の現在の日本社会、これをファシズムと呼ばずして何と呼ぼう?

 やれやれ。またイライラ・ストレス病が・・・
 閑話休題。
 いずれにせよ、こういったプチプチ系の音楽は、マイナーな、アンダーグラウンドなものであることには違いない。でも、だからこそ、なのだろう、オリジナリティあふれる素晴らしい音楽を創造している人たちが、そのジャンル、フィールドにはたくさんいると言いたい。それって、良いことがほとんどなくなった今の時代において、実に素敵なことのひとつだ。
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 ニューヨークへ行くと必ず立ち寄るレコード・ショップがある(もちろん売られているソフトはCDがメインだけれど、この店は「レコード・ショップ」と今も呼びたい。実際、レコードもたくさん売っているわけだし)。「OTHER MUSIC」という店だ(前にもこのブログにちょっと書きました)。ダウタウン、イースト・ヴィレッジのセント・マークス・プレイスのすぐそばにある。地下鉄WEST 4th STREET駅から上がってすぐの路面店。
 OTHER MUSIC、つまり「その他の音楽」というレコード・ショップ。「その他」って、どういう意味?
 道を挟んでこの店の向かい側には、「タワーレコード」という世界的なチェーンの大型CDショップがある。そう、OTHER MUSICの主張する「その他の」というのは、タワーレコードで売っている「以外の」音楽、ということなのだ。「あちらのタワーがメイン・ストリームなら、こちらはオルタナティブですよ」と。
 こういうネーミングって、それ自体がすごく楽しい。そしてこの店は、そのユニークな主張(名前)と内容が見事に合致していて、そこがまた素晴らしい。小さな、地味なる店なのに、骨太。小さな巨人と呼ぶにふさわしいレコード・ショップなのだ。その強烈なメッセージを正しく発信させている姿は、魂の体育会系と呼ぶべきだろう。大型のタワーレコードが、ちゃらちゃらしたお遊び程度に見えてくるから不思議(でも、もちろん、そっちも僕は大好きです。とってもお世話になっているし)。
 OTHER MUSICに置かれている多くの音楽は、確かにアンダーグラウンドだったり、インディペンデントだったり、超マイナーだったりする。でも、滋養のある音楽が多いのも特徴だ。そう、滋養ある音。
 もちろん、こういう店は世界各地、都市には必ずあるのだろう。東京には実にたくさんの個性的なレコード・ショップが健在だし、パリやロンドンにも数多い。バンクーバーなんてとっても小さな街なのに、RED CAT RECORDという、これまた「小さな巨人」的CDショップがある。この店の入り口にはケニーGのレコードが飾られていて、そのジャケットには大きく「×」がつけられている。「NO KENNY G」、そう、「そっちの類の音楽をお探しなら、どうか他を当たってくれ」という無言のメッセージを入口からガンガン響かせている、というわけだ。ちなみにこの店のオーナーは、ニール・ヤングによく似ている。バンクーバーの友人に、「ニール・ヤングに似ているよね」と相づちを求めたら、「もみ上げだけじゃない?」とクールに言われたけれど。(RED CAT RECORDは、メイン・ストリートの25丁目界隈にあるので、バンクーバーへ行かれた際には、ぜひ入ってみてください。名前の由来もわかるし、素敵なオリジナルTシャツもオススメです)
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 今また、旅の途上。旅先のホテルで深夜、ケオラ・ビーマーのドキュメンタリー番組をやっていて、これがとても面白かった。
 ケオラ・ビーマーは、現代ハワイを代表する音楽家で、スラック・キー・ギター界の重鎮のひとり。重鎮でありながら、孤高と呼べばいいのだろうか、ハワイの音楽シーンのメイン・ストリームからは遠く離れた場所にいるような雰囲気を僕は彼の音楽から感じてきた。今回このTVインタビューで本人の言葉を聞いて僕は、彼が醸し出す「孤高性」のその理由を少しだけ知ることができた。
 1970年代初めのハワイ諸島にわき起こった「ハワイアン・ルネサンス」というムーブメント。その流行の中にケオラ・ビーマーもいた。当時は、カポノ・ビーマーと2人で兄弟バンドを組んでいた。ビーマー・ブラザーズという名で活躍、次々とヒット曲を出した。この兄弟バンドで最も有名な曲は「ホノルル・シティ・ライツ」だろう。当時の彼ら2人によるアルバムを数枚持っているけれど、僕が好んでよく聴くのはここ数年内に出されたケオラ・ビーマーのソロ・アルバムだ。
 『ISLAND BORN』というタイトルの1枚は特に大好きで、よく聴いている。雰囲気で日本語にすれば「島生まれ、島育ち」という感じだろうか。沖縄諸島の唄者のアルバム名にもなりそうだ。
 アルバム・タイトルにもなっている「Island Born」という曲が特に大好きで、こんな歌詞の唄だ。

 自分が何処へ向かっているのか。
 自分の本当の居場所はあるのか。
 迷ったとき僕は自分の故郷を思う。
 僕が生まれ育った島を。
 ああ、あの島に生まれて良かった・・・そう思う。
 島に生まれ育って良かった・・・ほんとうにそう思う。
 島の山、島の海、何もかも、
 I'm so proud to be Island born・・・

 山々の上に太陽が昇る。
 緑の木々を光で照らす。
 顔を上げて、思わずじっと見入ってしまう。
 今日という日が僕に与えてくれる素晴らしきもの。
 僕は思う、
 ああ、この島に生まれてほんとうに良かった。
 島に生まれ育って良かった・・・ほんとうにそう思う。
 山も海も何もかも、
 I'm so proud to be Island born・・・

 サビのパートで繰り返される、「I'm so proud to be Island born」という歌詞は、直訳すればこうなる。
 「僕は、この島に生まれ育ったことを誇りに思う」
 日本の本州というメイン・アイランドで生まれた僕もやはり「島生まれ、島育ち」だけれど、この歌詞のような言葉を自ら言う気分になれたことは一度もなかった。自分が「島にいる」という気持ちになれたことは、東京に暮らしていて、ない。だから沖縄の島などに旅行に行ったときにこう言うのだ、「島へ行ってきたよ」と。自分が今いるここも島なのに。
 もしかしたら、「自分は何処へ向かっているのか?」とか「自分の本当の居場所は何処なのか?」というような疑念が誰しも芽生える、誰しもそのことで一度ならず悩むというのは、結局、自分の本当の故郷に対して誇りを持って、「大好きだ、ここに生まれて良かった」と言い切れない現状にあるのかもしれない。どれほどの数の日本人が「ああ、この島に生まれ育ったことを誇りに思う」と言い切れるのか僕は知らないけれど、少なくとも僕は言えないからだ。
 だから、ケオラ・ビーマーのその唄を耳にすると、涙がこぼれそうになる。そう唄える彼を、彼にそう唄わせる島々を、うらやましく思うからだ。
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 このTVインタビューの中で彼は、「自分が今、探し求めている音」について、こんなふうに表現していた。
 「私は、ここにある花や緑の音を奏でたい。海や波の音を奏でたい。空や風、大地がもたらしてくれるもの、そういったものを私は、自分の身体を通して音楽として表現しているに過ぎないのです。ある意味で、私は音楽家ではなく、自然と人間との間に立つ媒介でしかありません。私がほんとうに好きなサウンド=音は、風で葉っぱがこすれる音や、波の音なんです。人間が奏でる音楽の中で本当によいサウンドがあるとするなら、それはきっと、サウンド・オブ・サイレンス、沈黙の音だけでしょうね」。
 彼が暮らしている場所は、人間が奏でる音楽というものが一切なくても、もっと素晴らしい音楽が流れているところなのだろうなぁと思う。究極的にはきっと彼は、「ギターを弾かない」という選択をするのだろうと思う。それはつまり、「その他の音楽」の選択、オルタナティブな選択だ。「自然が奏でる音楽で充分じゃないか」と思い、ギターを置き、それで満足すること。「I'm so proud to be Island Born」と唄う彼のその先には、もう「唄わない」という選択が待っている。唄わなくても、そこここに美しい音楽が流れているから。そういう場所に生まれ育った彼を、うらやましく思う。
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<今回の旅のヘヴィ・ローテ>
『NICKY'S DREAM』GABBY & LOPEZ
『STRAW HAT, 30 SEEDS』GABBY & LOPES
『ISLAND BORN』KEOLA BEAMER
『NEW LOST CITY RAMBLERS』LONESOME STRINGS
『WHOLE TRIP MUSIC』田原マサハ

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by imai-eiichi | 2006-12-04 07:35




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