ビーチサンダル・クロニクルズ TEXT+PHOTO by 今井栄一

004【ashes and snow, & The Nomadic Museum】

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 2月に滞在したロサンゼルスで、ずっと見たかったGregory Colbertの個展『ashes and snow』を見ることができた。
 昨年の初夏、やはり仕事でニューヨークに行ったとき、わずかなタイミングで見られなかった。NYに僕が到着したその日が、NY展の最終日。駆け込みたかったのだけれど、どうしてもその日に見に行く時間がとれなかったのだ。
 グレゴリー・コルバートの名前を聞いたことがある人はいるだろうし、彼の作品展示を見たという人もいるはずだ。2〜3年前、彼は来日して個展を開いている。けれど、そのときの個展は美術館でのものであって、現在彼が「The Nomadic Museum」で展開している大規模なエキシビションとは、かなりーーいや、まったく、と言った方が正確だろうーー異なっている。

 日本国内よりも欧米で著名な日本人建築家、シゲル・バンによる、紙パイプとコンテナを使ったユニークな美術館を、バンとコルバートは、「The Nomadic Museum=遊牧民たちの美術館」と名づけた。コルバートによる個展『ashes and snow』は、その美術館と一体化したもので、どちらが欠けても成立しない。
 コストがものすごく安価で、軽いから持ち運びが簡単、誰にでも組み立てることができ、再生可能、さらに燃やすことができるーーバンが考案・発明した「紙パイプを使った住居、建造物」は、すでに世界中で知られているが、最も有名なのは、阪神大震災直後の仮設住宅や、スマトラ沖大地震によって発生した津波で大きな被害を被ったアジア各地の浜辺に自ら作った仮設住宅などだろう。バンは常にマイノリティや弱者の住環境に関心を寄せているようだ。

 「The Nomadic Museum=遊牧民たちの美術館」は、その名前通り、遊牧する=旅する美術館である。前述したとおり昨年初夏にはNYにいた。船に乗って旅をし、この冬のLAにやって来ていたのだ。
 そう、この美術館そのものが「船」。「旅する美術館」なのだ。
 コルバートは、自分の作品展「ashes and snow」を開催するには、何か特別な形、スタイルが必要だと考えたのだろう。考えたというより、それは自然に(必然的に)閃いたのかもしれない。バンが設計した紙パイプを多用した巨大な倉庫は、無数のコンテナで形成されている。コンテナの中にコルバートの作品はしまわれ、コンテナ船ごと旅をするのだ。そして、到着した港に土地を借り、コンテナを今度は外壁として使用する。入っていた作品をその内側に展示する・・・というわけだ。
 一生懸命書いたけれど、やっぱりわかりにくい。興味を感じてもらえたなら、是非とも自分の目で見、身体で感じて欲しい。「The Nomad Museum」は今また海を旅している。LAの次の寄港地、つまり展覧会開催会場は、横浜である。

 僕は幸運なことに、LA滞在時にサンタモニカ・ピアに寄港・開催されていた「ashes and snow」を見ることができた。美術館はもちろん素晴らしいが、やはりコルバートによる作品群に圧倒された。
 彼のHPを見ることでその独特な世界を多少は感じてもらえると思うけれど(美しいHPだ)、大きな和紙にプリントされた写真群、ヴァージンシネマ六本木の一番大きなスクリーンよりも巨大なスクリーンに投影された映像、そして、イマジネーションを喚起する音楽・・・、それらはやはり、実際に見、体感して初めてわかるという類のものだと思う。好き嫌いは人それぞれだと思うけれど、僕には、実に心地よい空間・時間だった。「ああ、僕が言いたかったのはこれなんだ!」という共感、驚き。会ったことのない作者の意志と意図に、僕は100%同調した。美しいシンクロニシティを感じる展覧会だった。たぶん、僕と同じようにそんなシンクロニシティを感じる人が大勢いる「場」だったはずだ。横浜へこの「遊牧民の船」がやって来たとき、是非とも多くの人たちに見に行って欲しいと願う。僕は、現地で買ってきた展覧会用の写真集やDVD映像を知人・友人たちに見せたりして、「絶対行くべき!」と今から熱く語っている(売られている写真集やポストカード、CD、DVDがどれも素晴らしい。内容はもちろん、そのデザイン・装丁が)。

 我々は何処から来て、何処へ行くのか。我々とは何か。
 コルバートは、インドやアフリカの美しい人々を旅人に、そんな問いへの彼自身の思いを想像力豊かに、詩情豊かに、物語性豊かに、表現している。その世界では、無数のゾウやクジラたち、鷲や鳥やヒョウたちが、瞑想している。ヨガの極致のように、見ている者たちもそんな瞑想世界へ誘われるだろう。


<今回の旅のヘヴィ・ローテーション>
『LET ME SEE THE FISH』SIGUR ROS
『FAKE』THE EMIGRANTS
『LIFE IS WATER』SIM REDMOND BAND
『PLEASE SMILE MY NOISE BLEED』MUM
『IN THE REINS』CALEXICO & IRON AND WINE
by imai-eiichi | 2006-05-06 16:31




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