読んでおきたい本4冊 '07.Feb

http://ecodec.com/melbourne1/1000円(税別)
柴崎友香、長嶋有、名久井直子、福永信、法貫信也による限定1500部の同人誌。第1号には歌人・穂村弘と漫画家・ほしよりこ、中原昌也をゲストに迎えている。柴崎友香の描き下ろし短編小説『レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー』は、日常の些細な発見も大きな恋のはじまりも、同じベクトルと同じ湿度の中で交わっていて面白い。また、「穂村弘と三人」と題したインタビューでは、歌人・俳人・小説家のそれぞれの人間性が世代とも照合され、言葉の性質と宿命がスリリングに語られている。(坂本亜里)

榎本俊二/秋田書店/800円(税別)
これまで数多くの女性漫画家達が、自身の体験をもとに育児エッセイ漫画を発表してきた。この一大ジャンルに本邦ほぼ初、男性漫画家の榎本俊二が殴り込み。『えの素』『ムーたち』など唯一無比のギャグを生み出す漫画家業と、同業者の妻と分担しながら姉弟2人を世話するパパ業兼務の日々が、これ全部1コマ漫画!?と感じられる高密度な笑いとテンションで描かれていて、せわしなくも面白く、そしてうらやましい。パパ目線の育児漫画、断然ありだと思います。(吉田大助)

ホイチョイ・プロダクションズ/小学館/2,200円(税別)
『気まコン』は週刊ビッグコミック・スピリッツの名物連載。その23年分をまとめた辞書級のブ厚さの本書は、極めてクオリティの高いギャグマンガであり近代風俗史だ。バブルに浮かれ、四足から二足歩行へと進化するが如く携帯とメールが普及し、サラリーマンの生態やメディアの価値が景気で変化していく様はいわゆるギョーカイ人ならずとも一読の価値アリ。ちなみに登場人物の細川が披露する、『○×△の毛を燃やす』ワザ、私も実在の広告マンで達人を知っています。(内田正樹)

速水健朗/洋泉社/780円(税別)
年間ヒットチャートの9割をタイアップソングが占めた90年代、それは日本の歌謡史におけるひとつの頂点として記憶されるだろう。広告メディアと結びついた歌謡曲は、どのような行程を経て現在のJ-POPと呼ばれるものへと進化していったのか。戦前の流行歌から「シャボン玉ホリデー」、コカ・コーラ、レナウン、「東京ラブストーリー」、ビーイング、携帯電話……時代を映し出すいくつものキーワードを「歌謡曲」という一本の線で繋いだ風俗史としても読める一冊。(菅原 豪)
by switch-book
| 2007-02-19 00:00