読んでおきたい本4冊 '06.Dec
『僕たちは歩かない』古川日出男/角川書店/1600円(税別)
『ベルカ、吠えないのか?』『LOVE』の著者によるクリスマス・ストーリー。短く刻まれる軽快なリズムのような文体が、ポンポンと読む者を物語の彼岸へと押しやり、いつのまにか物語固有のルールのなかに運びこまれる。そして、ポーンと飛躍する行間を跳ぶ快感に身を委ねているうちに、知らない場所に立つ。「26時間制」の東京、というパラレルワールドに入りこんだ若き料理人達が、「余分な2時間」を使って切磋琢磨するふしぎな青春群像劇が、物語の入口。(猪野 辰)
『グリムのような物語 スノウホワイト』諸星大二郎/東京創元社/952円(税別)
諸星大二郎の最高傑作(!?)「Gの日記」が収録された『トゥルーデおばさん』に続く、グリム童話を題材にした短編漫画集第2弾。前回は不条理&ホラーな印象が強かったが、本書ではSF&ミステリー的趣向がややアップ。とはいえ一瞬先は闇、現実原則を無視したでたらめな物語展開は健在で、諸星の不安(定)な作画タッチとあいまって、夢の世界を漂うような読み心地だ。この本を読んでから寝ると、奇妙な夢が見られることは臨床実験済み。初夢用に、ぜひ。(吉田大助)
『スープの本』南風食堂/主婦と生活社/1350円(税別)
大地や海や太陽と繋がっている食物を素材としてスープを作ること、そしてそのスープを食べることは、私たちの身体に、心に、何をもたらしてくれるのだろう。それはこの本にレシピと共に描かれる物語……、みつばちが旅をしながら自然が育むいのちと出逢い、自分がこの世界に生きている実感を感じていく過程の中に答えがある。スープはだから、喜びのときも哀しみのときもいつも心を温かくする。人はこうしてすべてと繋がっていると知ると幸せであれるのだ。(川口美保)
『われら猫の子』星野智幸/講談社/1600円(税別)
2000年から2006年までに発表された作品12篇を収録した短篇集。「紙女」という作品は、「紙になりたい」女と出逢い結婚した小説家ホシノさんが体験する奇妙な話。あるいは「砂の老人」。ホシノさんは友人で日系アルゼンチン人のホルヘ・ルイス・ボルヘス三世とブエノスアイレスに赴き、三世君の祖父であり、かの有名な小説家であった不死の老人と会見する……というふうに、ラテンアメリカ文学的な途方もない話をアップデートしていく手つきが興味深い。(猪野 辰)
by switch-book
| 2006-12-19 00:00


