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Feature of the month '06.Jul

『芸術起業論』一億円の本当の価値。

Feature of the month \'06.Jul_b0071699_20212198.jpg 村上隆の作品は、二〇〇三年に他の作品が六千八百万円で売買されて以来、日本人の芸術作品として史上最高額の価格が付いていると言われているが、二〇〇六年五月、サザビーズニューヨークのオークションで、村上隆のペインティング「NIRVANA」が一億四千四百万円で落札され、大きな話題となった。このニュースに対する日本人の反応はさまざまだろう。「すごい」「憧れる」という反応もあれば、逆にネガティブな反応もありうるだろう。いずれにせよ、日本のアート界にあって、村上はかなり特殊な存在感を示していて、しかし一般的に「なぜ村上隆は特別なのか」ということは、「なんとなく」しか理解されてこなかったのではないか。
 その村上隆がまさに満を持して上梓した本書は、これまでに村上隆がさまざまな場所で語ってきた戦略の集大成であり、ダイジェスト版だ。
 いかに歴史に名を残す作品を生み出すことができるか。そのゴールに向けて周到に練られた戦略と、さまざまな無理解に対する闘争について、本書における村上は雄弁に余すことなく語っている。
 自らを天才ではなく凡才と規定し、その上でいかに世界規模の戦略を持つに至ったのか。目次にもかなり過激な見出しが目立つ。「なぜ私の作品は一億円で売れたか」「芸術作品の価値は、発言で高めるべき」「芸術の顧客は、栄耀栄華を極めた大金持ち」「世界で評価されない作品は、意味がない」「美術界の構造は、凡人のためにできている」等々、どれも私達が持っている上品で浮世離れしたアートのイメージとは真逆の価値観が提示され、芸術家に必要な資質としてコミュニケーション能力や社会性がいかに重要かということについて教えてくれる。
 現在小誌で連載中の佐藤可士和との対談においても、この手の話題、つまり「アートを買うことの意味」にまつわる話はよく出てくるけれど、自らを肉食動物にたとえ、芸術家として自分の欲望に忠実であることを高らかに宣言し続ける村上隆というアーティストは、やはり日本の美術界にとっては「黒船」的な存在なのだろうと思えてくる。
 しかし、やや極端とすら思える本書の内容は、極端であるがゆえに、世界を変革するような価値を持ちうる。村上隆は、あえて悪役(ルビ*ヒール)を買って出て、日本/世界の美術界を揺さぶってみせる。
たとえば、ルイ・ヴィトンとのコラボレーションについて、村上はこんなふうに書いている。
<「アーティストがファッションブランドと組む」ということは、悪役としてわざと掟を破る行動のはずでした。だからこそぼくは躊躇がなさすぎるぐらいに破廉恥に本格的にルイ・ヴィトンと組んで結果を出してきたのです。ところがそれを欧米の本場の芸術家たちは「アートの文脈」として評価するのではなくて、「ムラカミ、うまくやりやがって。うらやましいなぁ」と捉えていたことがわかったのです。>
 つまり、村上隆は<金儲けのための金儲け>ではなく、あくまで<アートのための金儲け>をしているのだということが、本書を読むと少し見えてくる。

『芸術起業論』 村上隆 幻冬社 1600円(税別)

by switch-book | 2006-07-19 00:05




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