art

Feature of the month '06.Apr

Feature of the month \'06.Apr_b0071700_20113039.jpg

藤田嗣治『藤田嗣治展』 元祖スーパーフラット・アーティスト?

『藤田嗣治展』@東京国立近代美術館/開催中(5/21まで)
http://www.momat.go.jp/Honkan/Foujita/index.html

 村上隆に代表されるように、日本のアートシーンが世界にインパクトを与え始めているのはまぎれもない事実。けれど世界で認められた日本の画家の先駆が、藤田嗣治(一八八六〜一九六八)だったことは、忘れてはならない重要な史実だ。未発表作を含む百点近くを国内外から集めた回顧展は、時代に翻弄されながらも、世界を舞台に堂々活躍した孤高の画家の全貌を初めてじっくりと俯瞰するものだ。
 東京芸大時代の自画像から始まって、一九一三年にパリに赴いて以降の画業の変遷、中南米旅行を経て日本へ帰国、戦争体験、パリへの帰還と、めまぐるしく展開した生涯に沿って、作品は並ぶ。大学で教わった黒田清輝らのアカデミックな志向にはなじめず、渡欧先で出会ったピカソの破壊力に即刻感化され、自身のオリジナル表現を追求した藤田。まもなく確立したのが、「乳白色の肌」と称される美しい絵肌をもつ一連の人物画だ。陶器のようになめらかな色面に、水墨で線描する繊細かつフラットな画法は、浮世絵の影響もあり、油絵と日本画が融合した藤田特有のスタイルとなった。キャラクター化した人物、猫や小物など細部にいたるまでのすべてが藤田印。西洋かぶれの日本人像を超越し、彼は一躍エコール・ド・パリの寵児となったのだった。
 そんな成功者・藤田が中南米でさらなる異文化に触れ、一九三三年に日本へ凱旋帰国した際、過剰にレトロな日本趣味へ走ったというのも面白い話だ。見方が国籍を超えている。戦時下に従軍画家として戦意高揚と記録のため描いた戦争画も出展されている。戦後その罪を糾弾された彼は再びパリへ戻ってフランスに帰化し、最後はカトリックに改宗して教会を建てるのだから、まさに波瀾万丈の人生である。
 実は展覧会場で最も心惹かれたのが、晩年に描かれた子供や動物のいる寓話的世界だった。生涯子供を持たなかった藤田にとって、子供は想像上の存在。大人社会を風刺するちょっとコワカワイイ風貌の彼らは奈良美智の絵を彷彿とさせなくもない。また、生活雑貨を手作りし、服装や髪型にこだわったという意外な逸話は、今時の自己流ライフ・スタイル志向とどこかつながっても見える。やっぱり藤田はスーパーフラットの始祖? (宮村周子)
# by switch-art | 2006-04-18 19:48

触れておきたい展覧会2本 '06.Apr

ジム・ランビー『P.I.L.』展

触れておきたい展覧会2本 \'06.Apr_b0071700_19433057.jpgジム・ランビー『P.I.L.』展@ミヅマアートギャラリー&ミヅマ・アクション
開催中(5/13まで) tel. 03-3793-7931 http://mizuma-art.co.jp/

もともとポップ・アート発祥の地であるイギリス出身で、今世界的に注目を集める次世代ポップ・アーティストと言えばジム・ランビーだ。1964年グラスゴー生まれの彼は、1990年代後半から頭角を現し、昨年は「ターナープライズ2005」にノミネートされて話題となった人物。日常の素材を使い、音楽などのポップ・カルチャーを引用した幾何学的でサイケデリックなインスタレーションが人気を呼んでいる。DJやバンド活動も行い、旧友であるプライマル・スクリームのアルバム・ジャケットを手がけるなど音楽シーンとは関係が深い。日本での初個展で見せるテープを使った展示については、「ジャズで言うなら床のビニールテープがベースラインを奏でるベースとドラムで、その上に配置される作品はギターやヴォーカルのようなもの」とのこと。現地制作される新作も期待大!(宮村周子)




ヴィム&ドナータ・ヴェンダース写真展

触れておきたい展覧会2本 \'06.Apr_b0071700_19433861.jpgヴィム&ドナータ・ヴェンダース写真展『Journey to Onomichi〜尾道への旅』@表参道ヒルズ地下3階「O(オー)」/4/29-5/7 http://wenders.jp/

『パリ、テキサス』以来、約20年ぶりにサム・シェパードとのコンビで製作された最新作『アメリカ、家族のいる風景』も話題のヴィム・ヴェンダース。映画監督としてだけでなく、写真家としても高い評価を得ているヴィムと、その彼に認められ、写真家としての才能を開花させた妻ドナータ・ヴェンダース。本国ドイツで出版された『アメリカ、家族のいる風景』のスチール写真集でも、ドナータが撮影した写真が多数使用されていたことは記憶にあたらしい。そして、本写真展では、ヴェンダース夫妻が昨年秋に来日し、尾道、直島、鞆の浦を旅しながら、美しい日本の風景を撮り収めた写真の数々を公開する。かつ、てヴィム・ヴェンダースは映画『東京画』で日本を舞台としているけれど、今回ヴェンダース夫妻が切り取った日本の風景は、どんな佇まいをしているのだろうか。(猪野 辰)
# by switch-art | 2006-04-18 19:45




ページの上へ