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Feature of the month '07.Jan

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メーヴェに乗って

『OpenSky 2.0 八谷和彦展』@NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]/開催中(3/11まで)
www.ntticc.or.jp

 メーヴェに乗って、ナウシカのように空を飛んでみたい──そう願ったことのある人は多いはず。アーティストの八谷和彦は、そんなみんなの秘かな願いを叶えるべく、二〇〇三年、一人乗り飛行機を実現させるプロジェクト「OpenSky」を開始した。航空工学の専門家に協力を仰ぎ、二分の一サイズのジェット機や模型で実験を行い、二号機にバンジー・ジャンプのようなゴムを付けて人力で牽いて飛ばすテスト飛行を行った。あとは今年の夏を目標に、ジェット・エンジンを付けた本格的なフライトを準備する段階だ。ICCの個展では、山あり谷ありの奮闘の軌跡が、実機と記録映像、フライト・シミュレーター体験などを通じて詳細に伝えられている。尾翼を持たないカモメのような機体に、ナウシカさながらの前傾姿勢で八谷が乗る。ふわりと空を飛ぶ姿は、ちょっとした感動の光景だ。
 自称「シャーマン体質」。「みんなが欲しいものをつくるアーティストで、誰もが無理で、できっこないと思っていたことほど燃えるタイプ」(八谷)。十年前に仕掛けた「メガ日記」は今のSNSを予見していたし、動物たちが手紙を運んでくれる人気メールソフト「ポストペット」の開発者でもある。アーティストでありつつエンジニアと組み、人の可能性を拡張する夢の道具づくりに取り組んできた。
 日本に飛行機の製造会社がないのは政治的理由ではなく、じつは熱意と根性がたりないだけでは? と彼は言う。以前も、ジェット・エンジン付きのスケート・ボード「エアボード」を試みたことがあり、人間が宙に浮くという無重力への憧れは本気で現実にしようとしてきた。飛行機の実現は、その夢がようやく形になった集大成だ。
 ゴムによるテスト飛行は、ミクシィで参加者を募って、参加型にした。将来的にはグライダーの練習をすれば誰でも乗れるようにしたいそうだが、飛行の手伝いを楽しむ参加者も多い。空を飛ぶというテーマは、大勢で共有する大きな夢に広がってきた。それがリアルに叶うから人は興奮するのだろう。「ゴムで飛ぶ飛行は、エンジン音もなくて美しいんです。夢の中で飛ぶ体験に近いんじゃないかな」。
 本当に空、飛びたくなってきた。(宮村周子)
by switch-art | 2007-01-19 00:05




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