触れておきたい展覧会2本 '06.May
岡本太郎 他『帰国展 CHIKAKU 4次元との対話』
『帰国展 CHIKAKU 4次元との対話〜岡本太郎から始まる日本の現代美術〜展』@川崎市岡本太郎美術館/開催中(6/25まで)
http://www.taromuseum.jp/
第二次大戦後、東北や沖縄を精力的にめぐり、縄文土器を芸術として再発見した岡本太郎。それらの、表面的な現実性を超えた四次元との対話に可能性を見た彼の視点をキイに、日本の代表的現代作家を集めたグループ展。ヨーロッパ巡回を経ての会場は、川崎市岡本太郎美術館。知覚と想像力を爆発させ、力強く圧倒的な造形を生み出した太郎の軌跡を見た後、同展の展示をめぐるのは新鮮だ。触れるとさわさわ光がさざめく森脇裕之のメディア・アート、太郎にひけをとらない強さを持つ中平卓馬の写真、テントを被った少女の物語を映像化したやなぎみわ、マンガ的な擬態を精緻な彫刻にする小谷元彦、日本でフィールドワークしたトリン・ミンハの映像etc.。大きすぎる問題提起を一点一点で検証するのは容易じゃないが、逆に太郎の業績を振り返る意味で興味深い展覧会。(宮村周子)
南桂子『bonheur(ボヌ−ル)展』
南桂子『bonheur(ボヌ−ル)展』@ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション/開催中(8/6まで)
http://www.yamasa.com/musee/ 南桂子作品集『bonheur』(リトルモア刊)は5月下旬発売
2004年に享年93歳で逝去した版画家、南桂子。新潮文庫版オスカー・ワイルド『幸福な王子』や谷川俊太郎『うつむく青年』の装画が比較的知られている彼女の作品は、現在の感覚で見ても新鮮だ。南桂子は、銅版画の巨匠・浜口陽三の夫人であり、43歳で渡仏。パリで本格的に銅版画を習得し、ニューヨーク近代美術館のクリスマスカードやユニセフのグリーティングカードに作品が採用されるなど、国際的にも評価された……というプロフィールを持つ。ぽつんと立ち、空を見上げるどこか寂しげな少女の姿が特に印象深いけれど、その姿は故郷日本を遠く離れて暮らしていた南自身の孤独にどこか重なりもする。しかしその一方で、とても叙情的で、やさしく洗練された色彩感覚は、まだどこかに存在するに違いない「幸せ=bonheur(ボヌ−ル)」への祈りを感じさせてくれる。(猪野 辰)

http://www.taromuseum.jp/
第二次大戦後、東北や沖縄を精力的にめぐり、縄文土器を芸術として再発見した岡本太郎。それらの、表面的な現実性を超えた四次元との対話に可能性を見た彼の視点をキイに、日本の代表的現代作家を集めたグループ展。ヨーロッパ巡回を経ての会場は、川崎市岡本太郎美術館。知覚と想像力を爆発させ、力強く圧倒的な造形を生み出した太郎の軌跡を見た後、同展の展示をめぐるのは新鮮だ。触れるとさわさわ光がさざめく森脇裕之のメディア・アート、太郎にひけをとらない強さを持つ中平卓馬の写真、テントを被った少女の物語を映像化したやなぎみわ、マンガ的な擬態を精緻な彫刻にする小谷元彦、日本でフィールドワークしたトリン・ミンハの映像etc.。大きすぎる問題提起を一点一点で検証するのは容易じゃないが、逆に太郎の業績を振り返る意味で興味深い展覧会。(宮村周子)
南桂子『bonheur(ボヌ−ル)展』

http://www.yamasa.com/musee/ 南桂子作品集『bonheur』(リトルモア刊)は5月下旬発売
2004年に享年93歳で逝去した版画家、南桂子。新潮文庫版オスカー・ワイルド『幸福な王子』や谷川俊太郎『うつむく青年』の装画が比較的知られている彼女の作品は、現在の感覚で見ても新鮮だ。南桂子は、銅版画の巨匠・浜口陽三の夫人であり、43歳で渡仏。パリで本格的に銅版画を習得し、ニューヨーク近代美術館のクリスマスカードやユニセフのグリーティングカードに作品が採用されるなど、国際的にも評価された……というプロフィールを持つ。ぽつんと立ち、空を見上げるどこか寂しげな少女の姿が特に印象深いけれど、その姿は故郷日本を遠く離れて暮らしていた南自身の孤独にどこか重なりもする。しかしその一方で、とても叙情的で、やさしく洗練された色彩感覚は、まだどこかに存在するに違いない「幸せ=bonheur(ボヌ−ル)」への祈りを感じさせてくれる。(猪野 辰)
by switch-art
| 2006-05-19 00:00