その1からの続き・・・
コウセイ「どうしたっすか?」
田代 「なんかさー、歩けないって言うんだよー」
マダム「助けてください!」
なーんだ犯罪じゃないんや。よかった、ホッ。
「ちょっと兄ちゃんさ、悪いんだけどそこに座らせるから手伝ってくんない?」
田代はフロントスープレックスの体制のまま、アゴで石垣を指した。
「ああ、いいすよ」
俺は両手の買い物袋を傍に置き、マダムに肩を貸した。
俺が左、田代が右。マダムは捕まった宇宙人のような格好になった。
“応答せよ、応答せよ、宇宙人捕獲に成功…”
田代「いくよっ」
コウセイ「はいっ」
田代&コウセイ「せーのっ!」
“お、重てぇよ~”
田代の荒い息づかい、俺の荒い息づかい、マダムの荒い息づかいのハーモニィが路地に響き渡る。数分間の格闘の末、我々は無事、宇宙人を石垣に座らせる事に成功した。
マダム「ありがとうございました!」
田代&コウセイ「いえいえ」
路地には我々3人だけである。
田代「足はどうですか?」
マダム「歩けないですぅ」
コウセイ「じゃあ病院行った方がいいですね」
はぁ~疲れた、これで一件落着だー。
「いやっ!病院は嫌です!」
いきなりマダムのスイッチが入りパニックになった。
田代「嫌って言ってもあんた…」
マダム「病院は嫌ですぅ!助けて下さい!」
シーン。沈黙。
マダム「あっ!わかった!タクシー!タクシー呼んで下さい!」
コウセイ「いや病院行った方がいいっしょ」
マダム「嫌です!家すぐ近くなんでタクシー呼んで下さい!」
田代「タクシーは無理ですよ、病院いきましょ」
マダム「いやっ!」
コウセイ「行った方がいいって」
マダム「いやっ!」
そう言った直後、マダムがいきなり立ち上がった。
「ア、タテマシタ」
マダムはまるで温度ない口調でそう言った。
シーン。沈黙。
俺と田代は顔を見合わせる。
田代&コウセイ「じゃっ、そういう事で」
俺達が逃げるように帰ろうとすると、マダムは田代に近づき、こう言った。
「わたしの家、すぐ近くなんですけど寄っていきませんかぁ~」
ぎゃ、ぎゃ、逆ナンかよぉぉー!!!
俺は買い物袋を抱え、走りだした。
まっ白な頭の中で俺は思った“しかも俺、選ばれてねぇし…”
ほんの少し悲しいのは何故なんだろう。
(Vo.G:安部コウセイ)