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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
カテゴリ:キズのケア( 112 )
ボストン大火と湿潤療法
第二次大戦の最中、アメリカでは戦場での大量の熱傷患者の発生に備え、いかに最小の手間で、迅速に対処できるかの研究を進めていた。
その一つとして、それまでの手のかかる消毒法や、包帯をやめて、消毒も抜きにして、唯ワゼリンガーゼでぐるぐる巻にすることが検討された。

丁度その頃、ハーバード大学の外科の教授、オリバー・コープ博士は、火傷の皮膚を乾かしてかさぶたで治す従来の熱傷治療に疑問を抱き、新しい方法を模索していた。
火傷で出来る水ぶくれ、水泡の液には創面にプラスな物質が含まれているに違いない。叉水泡膜はそのんs577保護膜になるのではないかと言うのが博士の考えであった。
つまり、余計なことを先ず省いて、自然にまかせようということである。
たまたま博士は自分の姪が手に火傷をしたとき、家族によく訳を話して、水泡を破らずに、叉薬も塗らずに、きれいに治し、確信を深めたところだった。
丁度この研究は戦時下の国の思惑とも合致し、相当額の予算を国から受けて、実用化に向けて体制を整えていた。1942年のことである。
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其の秋、ボストンのナイトクラブで大火事が発生し、五百人以上の重症の熱傷患者が発生した。
大戦の最中、我々は食うや食わずで防空壕生活をしていたときに、ナイトクラブでどんちゃん騒ぎ等、彼我のゆとりの差を感じさせるが、たまたまその週はアメリカの感謝祭の連休で、叉ボストンカレッジのフットボールの試合とも重なって、街はお祭り騒ぎで沸き返っていた。
重症の患者達はまず、ボストン市立病院に運ばれたが、すぐ満杯となり、残る患者はすべてコープ博士のマサチューセッツ総合病院に搬入された。
そこでは数百人の重症熱傷患者を一時に治療するという、前代未聞の必要に迫られて、検討中であったいわば最大限手を抜いた治療方針を適用したのである。
処がその結果は、今までの手の込んだ処置よりも、かえって成績が良いことがわかった。
そのナイトクラブがココナットグローブという名前だったので、「ココナットグローブ大火」としていまだに外科の教科書に引用されている。

これを機会に、今までの火傷を含めた総ての傷の処置が見直され、余計な操作を一切省いた処、熱傷の死亡率もぐんぐん下がり、現在我々が提唱している、過度の消毒は避け、創面は乾かさずにといういわゆる「湿潤療法」の誕生のきっかけとなる。
by n_shioya | 2013-03-03 15:10 | キズのケア | Comments(0)
「正しい傷の手当」
「正しい傷の手当」_b0084241_2155618.jpg


“怪我をしたらどうする?2
“まず、「消毒薬」をつけて、フウフウと乾かして、「かさぶた」を作るに決まってるじゃないか。”
“それが大間違い”、というのが今日のテーマだ。

傷口は水でよく洗い、「消毒剤」はなるべく使わない。
また、傷口から染み出る体液はなるべく逃さず、「モダーン・ドレッシング」でカバーし、乾かさずに早くキレイに治そうというのが、最近の考えである。

「火傷」も同じことだ。やけどで作ってしまう水ぶくれ、これを水泡というが、その「水泡液」が漏れないように、水ぶくれの薄い膜つまり「水泡膜」を保護しておくと、火傷も早くキレイに治るということは、実は昔から経験的に言われてきた。

これを豚の皮膚で実証したのが、イギリスの動物学者ウィンター博士である。1962年のことだ。
その後の研究で、傷口から染み出る液の中に、傷を治す「化学物質」が豊富に含まれていることと、キズを治すのは「表皮細胞」とか「繊維芽細胞」といった本人の細胞であり、生きた細胞は乾けばミイラ化して死んでしまい、又「化学物質」も働かなくなってしまう。つまり「湿潤環境」はキズが治るのには最適の環境であるということがわかってきた。

「水泡膜」の役目をする保護膜として、傷の治療用に試みられたのが、その頃外科領域で使われ始めたオプサイトと呼ばれる高分子の膜で、それを改良したものが、「モダーン・ドレッシング」と呼ばれるガーゼに代わる「被覆材」である。

既に医療用にはさまざまな「モダーン・ドレッシング」が開発されているが、その後ジョンソン・アンド・ジョンソンが、家庭用に「キズパワーパッド」という、バンドエイドタイプのものを発売し人気を呼んでいる。又最近では他のメーカーからも同様な被覆材が発売されている。

では「消毒剤」がなぜいけない?
まず、「消毒剤」はばい菌も殺すかもしれないが、先に述べたキズを治す傷口の細胞たちにも障害を与えるからである。
今ひとつの理由は、傷口からごみや細菌を除くには、水で機械的に洗い流すことがもっとも有効であり、よっぽど汚い傷で無い限り、“「消毒剤」に頼る必要はない”というのが最近の考えである。

そうは言っても、慣れというのは恐ろしいもので、われわれ医師のあいだでも、理屈ではわかってもなかなかこれまでの消毒法や、ガーゼによるカバーから脱却することが難しいのが悩みである。
by n_shioya | 2013-02-07 21:06 | キズのケア | Comments(0)
かわいい子には怪我させよ
われながら過激な表題だと思うが、今の子供達の異常なまでの過保護を目の当たりにすると、あえて叫びたくなる。

「創傷治癒」を専門分野としていると、子供の怪我の処置について話をする機会が多い。
“消毒は水道水で洗い流せば充分。”その後は湿潤療法(モイストヒーリング)に話しを進め、“傷を吹いで乾かさないでください。かさぶたをつくればそれだけ治りも遅れ、跡も残ります。”
と言って「湿潤環境」の大事さを説くわけだが、最後に必ずこう付け加えることにしている。
“怪我をするのは子供が元気な証拠と思ってください。
遊びまわるのは子供の権利で、多少危ない目にあいながら、自分で対処する方法を身につける。少しぐらい転んで怪我したり、いたずらして台所で火傷したっていいじゃないですか。”

僕は五人の子供がいるので、といっても育てたのは配偶者だが、その経験から言えることは、もし子供が怪我一つしないで育てば、それは奇跡ともいえる。
切り傷、擦り傷、火傷など僕の子供は皆一度は親父の世話になっている。念入りに、二度、三度も手を焼かせた子もいるほどだ。
いくら親が気張っても、目が届くのは1割にもならない。後の9割は天上のどっかでどなたかが見張ってくださるとおまかせしたほうが気が楽である。

子供は皆生まれつき「羅針盤」を持っている、というのが僕の信条だ。
怪我に限らず、危ない目にあうことでその「羅針盤」が働き始める。それを過保護に育てれば「羅針盤」が機能しない哀れな人間を作ることになる。
“可愛い子には旅させよ”、と昔の人は言ったではないか。
動物の世界はもっと厳しい。獅子は子を千尋の谷に突き落とすという。

今ひとつ世のお母さん方に言いたいのは、“だから子供の怪我は親の責任ではない”ということだ。
不必要に自分を責めないで欲しい。お姑さんも余計な口を出さないで欲しい
ただ運悪く怪我をしたときは、“その時点で最善と考えられている治療を受けさせるのは親の務めですよ”、と最後は「湿潤療法」の勧めに話を落とすことにしている。
by n_shioya | 2013-02-05 20:30 | キズのケア | Comments(0)
何故「顔の移植」を
“「顔の移植」に踏み切ったのには二つきっかけがある。”
イーロフはこう切り出した。
あるとき、怪我で顔を失った男に、何故、自分の顔も見えないのに、顔が欲しいか、あえて聞いたそうだ。
すると男は、
“このままではタクシーを呼び止めても、止まってもくれないから”と答えたと言う。
今ひとつは、世界初の腎移植成功でノーベル賞を受賞したマレー教授、彼の前任者だが、に「倫理的問題」について問うたところ、
“倫理的には腎移植も顔の移植も全く異なるところはない筈”
と答えてくれたと言う。

“それにね”と彼はいたずらっぽく付け加えた。
“四肢の移植よりも付きがいい事も分かったんだ。手足と違って顔は神経も短いし、筋肉も細く短い。だから、機能回復が早いんだ”
たしかにそうだが・・・
僕はそうサラッとといえる彼が羨ましかった。

皆さん、決して顔の移植だからといって、猟奇的な目で見ないで欲しい。
患者にとってそれ以外に救いのない事は、手術前のフォトを見れば誰でも納得がいく筈です。
by n_shioya | 2012-09-07 22:37 | キズのケア | Comments(2)
新山下のシーフードレストラン、タイクーンにて
学会も中日。僕の出番はほぼこなしてほっとしたところで、企業主催の懇親パーティに出席。
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みなとみらいのぷかり桟橋から遊覧船に乗り込み、ベイブリッジを周遊して、新山下のイベントホール、「タイクーン」へ。
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広い体育館のような宴会場は数百人の会員で熱気ムンムン。
実はこのタイクーンは家から歩いて五分ほどのところにあり、毎日、銀座に車で出勤の際、何時も横目で見ながらまだ一度も入った事のない、シーフードレストランである。
三日間、ホテルの缶詰だったので、里心がでて、宴半ばで徒歩で家に戻り、元町で配偶者とそばを食べて今ホテルに戻ったところ。
あと二日で学会も終わる。
by n_shioya | 2012-09-04 22:13 | キズのケア | Comments(2)
男芸者
今日は一日学会場に缶詰。
学問だけでなく、セミナー、シンポジュームの司会、懇親会の乾杯。
男芸者も楽ではありません。
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どっと疲れが出たので、フォトでご勘弁を。
by n_shioya | 2012-09-03 22:49 | キズのケア | Comments(4)
世界創傷治癒学会開幕
いよいよ今日から世界創傷治癒学会開幕。
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パシフィコ横浜の大ホールの開会式では三笠宮の娘さんが特別講演をなさった。
オックスフォードではスコットランド風俗のタータンを勉強されたらしいが、今日のお話は「日本美の心」という題で、明治以来の「喫茶店文化」について話され、なかなかに面白かった。
パウリスタと言う喫茶店が、日本のコーヒー文化の始まりで、佐藤春夫などの文士がたむろしていたとは知っていたが、“芝公園から新橋駅を経て、ギンザのパウリスタでブラジル・コーヒーを賞味する”と言う佐藤春夫の言葉が、銀ブラの語源だと言う事を教えていただいた。
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明日から木曜までは勉学の日々が続く。
by n_shioya | 2012-09-02 22:48 | キズのケア | Comments(5)
怪我や火傷は形成外科で!
今日、知人から緊急の連絡が入った。
同じ職場の若い女性が先週の水曜日に転んで額が切れ、近所の皮膚科で縫ってもらい、昨日抜糸したが、未だ真ん中辺がジュクジュクしており、これ以上は形成外科で看てもらうように言われたと言う。

一瞬、ヤバいと思った。
その理由は
①まず、けがの処置は外科か、出来れば受傷した時から形成外科で治療を受けるのが望ましい。
②顔の場合、抜糸は5日が望ましい。一週間ほっておくと縫い跡が残りやすい。そして傷跡の修正よりも縫い跡の修正は遥かに手間がかかるからである。6日と言うのはボーダーラインである。
③通常の傷ならば、6日もすれば完全にくっついて、ジュクジュクしていては困る。
だがこれは形成外科医の言うことで、今の日本の診療体制では妥当な範囲内の治療と言える。
しかし見ないでは、そしてまたこれ以上は、推測になるので、とりあえず都内のしかるべき形成外科をご紹介した。

この事で改めて感じたのは、
①まだまだ形成外科の認知度が低い事である。形成外科と言うと即美容外科と思われ、せいぜいが傷跡の修正で、やけどや外傷の傷を受傷時から扱うと言う認識に乏しい。
②また、全ての怪我を扱いますと言い切るには、形成外科医の数があまりにも少ない。

だが、そうも言ってられないので、ここで改めて、火傷や外傷の傷の手当は形成外科へ、と声を大にして叫びたい。

そしてこの日曜日からは、横浜のパシフィコで「第4回世界創傷治癒学会連合会議」が5日間にわたって開催される。
by n_shioya | 2012-08-28 22:43 | キズのケア | Comments(6)
市民公開講座
予想を遥かに上回る参加者でほっとした。
福岡市で開催した、NPO法人創傷治癒センターと創傷外科学会共催の市民公開講座「けが、キズの治し方」である。
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市民講座は、呼びかけるべき母集団がないので、何時も集客に苦労する。
この市民公開講座は無料だし、知っていれば聞きたい方はたくさん居られるはずだが。
今回も、市の広報や、マスコミにお願いして告知してもらったが、事前の申し込みは実は20名ちょっとだったので、なんとか50名は来て欲しいと祈っていたが、蓋を開けると、100名近くの方が参加してくださった。

その内容は、
福岡大学の大慈彌先生がけがの処置とキズの治り方について、
産業医大の安田先生が床ずれと糖尿病による下肢の治りにくい潰瘍について、実に分かりやすく話してくださった。
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フォトは左から
安田先生:産業医大

清川先生:創傷外科学会会長
大慈彌先生:福岡大学
by n_shioya | 2012-07-27 22:41 | キズのケア | Comments(4)
創傷外科学会開幕
今日から福岡ニューオータニで創傷外科学会。
会長は久留米大学の清川教授。
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創傷外科?なにそれ?
それはね、キズのケアを専門に考える外科で、形成外科の最も基本となる、大切な外科です。
ケガをした時の処置。
そして傷跡が残った時の修正。
いずれは傷跡なしに治す、スカーレスヒーリングを目指しています。

と言う訳で、明後日、学会の最終日には市民講座を開き、「けが、キズの治し方」を学会の専門医の方々が、分かりやすくご説明しますので、是非ご参加ください。
場所はニューオータニ横の電気ビル3階。
金曜日の一時半からです。
入場無料。
by n_shioya | 2012-07-25 22:28 | キズのケア | Comments(2)




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