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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
カテゴリ:キズのケア( 112 )
ベンチャー ビジネス
今日は1日中、昨日のフォラムの討議を反芻していた。

特に再生医療の最先端を突っ走る京大の田畑教授の発言にこだわっている。
それは“医学の世界で遊んでいるだけでは駄目。医療の現場で生かすところまで持っていけなければ”といった御趣旨である。

再生医療とは本人の幹細胞を人工の骨組みに植え込んで、臓器の再構築を図る手法である。
培養皮膚の成功が再生医療の夜明けをもたらしたことはご承知の通り。
その後、骨、軟骨、心臓、神経組織などさまざまな臓器の再生が実験室で試みられた来たが、臨床の現場に到着したものはまだ僅かである。

培養皮膚にしても、昨日のブログではこれによって多くの熱傷患者が救われたなど書いたが、現実はそう生易しいものではない。
十数年前、ボストンで98%の火傷の男の子が培養皮膚で救われたとき、もうこれで皮膚に関しては問題は解決したかに思えた。
そしてこれを商業ベースに乗せるべく、ボストンにバイオサーフィスというベンチャー・ビジネスまで誕生した。

ところで皮膚は表皮と真皮の2層構造をしている。
バイオサーフィスが手がけたのは表皮の培養のみである。
真皮は俺たちがという事でサンディエゴでアドバンスト・ティッシュウ・サイエンスというベンチャーが名乗りを上げた。
こうして培養皮膚に携わるベンチャーはアメリカでゾクゾクと誕生したが、始めの二つを含めすでに殆どが消滅している。

何故か?
問題は実際の患者での成功率の低さと、作成にかかる莫大なコストである。

つまり研究室で成功した医学の成果が臨床の場で医療として取り入れられるまでには、いくつものハードルがあることを如実に示している。

このハードルには大雑把に言って2段階がある。
まず患者に使った場合、安全で効果があること。
次にある程度の量産が可能で、企業として採算ベースに乗せられること。

このそれぞれをクリアするには、研究室レベルの作業に比べ、比較にならぬほど莫大な人と金を必要とし、先端研究ほどこの要求は厳しいものがある。
だがの二つはバイオのベンチャーがビジネスとして成功すための必要条件である。

これはバイオだけでなく医薬品業界でも同じで、もはや一企業だけで新薬の開発は不可能になった。
世界的な製薬メーカーが合併を重ね巨大化する中で、わが国も立ち遅れぬためには、例えば昨日触れた第一製薬と三共の合併も、サバイバルのためには必要な手段ということになる。

そのためには、せっかく13年続いたフォラムが中断されてもやむをえないか、というのが今日のブログのオチである。
by n_shioya | 2006-06-25 20:46 | キズのケア | Comments(0)
創傷治癒フォラム
創傷治癒フォラム_b0084241_10394435.jpg13年続いた研究会が今日幕を閉じた。
第一製薬主催の皮膚創傷治癒フォラムである。
創傷治癒を軸に基礎と臨床、皮膚科と形成外科の橋渡しを勤めてきた、ありがたい研究会なので残念だった。

創傷治癒というのは平たく言えば傷の治りに関する学問である。
具体的には

①傷跡をいかに目立たなくするか。この中にはいわゆるケロイドなども含まれる。
②皮膚の再生医療、というのは培養皮膚のことだ。切手大ほどの本人の皮膚を取って、体外で促成培養して3000倍ほどに伸ばし、又本人に戻す。金はかかるがこれで救われた重症熱傷患者も少なくない。
褥瘡の予防と治療。褥瘡とは床ずれのことである。床ずれというといかにも寝たきりになれば出来てもやむをえないととられがちだが、じつは適当なケアで予防は可能だというのが我々の主張である。
④いわゆるモイストウンドヒーリングとそのためのモダンドレッシングの研究。傷は乾かしてかさぶたを作って治すのは間違いで、ポリウレタンとハイドロコロイドを貼り合わせたモダンドレッシングで、傷口から出る体液を温存して、湿潤環境を保ったほうが早く綺麗に治るというのが最近の考えである。
サイトカインやその他の薬剤で傷を早く治す。この中には第一製薬で開発したアクトシン軟膏も含まれる。

例年6月にホテルオークラで開催され、全国からこの分野に携わる皮膚科医、形成外科医が3,400人集い、熱心な討議を重ねてきた。
又、始めの頃は海外からの専門家を毎回お一人招待する慣わしで、世界中の専門家は殆どこのフォラム参加したことになる。

そのほかフォラムの関連行事としては、ボストンでアメリカの創傷治癒学会が開催されたときは、第一製薬がホストとなって日本人参加者と、欧米の専門家を網羅的にディナーパーティにお呼びしたのを思い出す。
場所はボストンの埠頭にあるアントニー・ピア4という老舗のシーフードレストランで、通常は予約を取らず大統領でも順番をお待ちいただくというのを、一部屋借り切った豪華なパーティで今でも語り草になっている。

それほど由緒あるフォラムだが、来年の第一製薬と三共との合併を控え、いったん中止ということになったのだ。

残念ですね、何とかなりませんか、と世話人一同担当役員に詰め寄ったが、いえ、私達の身分もどうなるかわかりませんので、と頭を掻いておられた。
創傷治癒フォラム_b0084241_10403313.jpg

by n_shioya | 2006-06-24 22:42 | キズのケア | Comments(0)




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