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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
2010年 01月 16日 ( 1 )
岡田謙三展
人は死期が近付くと透明になっていくことがある、丁度蚕が繭を作る時のように。
あの時、下駄履きで門まで送りに出て、枝折戸を開けてくださった岡田謙三画伯にも「不思議な透明感」があった。
「あの人、自分では知らないけど、前立腺癌の末期なんですよ」ときみ夫人が僕に囁いた。

ある医療雑誌の企画で、医学以外の分野の友人と語るシリーズがあって、僕に番が回ってきたとき、躊躇なく選んだのは、ニューヨーク留学中に知り合った岡田画伯だった。当時画伯は日本に戻られ、目黒にお住まいだった。

昭和初期に芸大(そのころは美校)を中途退学し、パリ留学。その後は二科会で活躍されたが、戦後間もなく突然にアメリカに移住。彼の地でも成功をおさめ、その画風は“幽玄ニズム”ともてはやされた。
ニューヨークの北のレンスラーヴィルに広大な別荘を持ち、岡田ホテルと称して貧乏な留学生をもてなしてくださった。
僕もその恩恵を受けたひとりである。

銀座の御木本画廊で今個展が開催中で、今日はギャラリートークということで、美術評論家の木島氏が話をされた。
木島氏の話では、岡田氏の絵は批評家は誰でも非常に説明に苦しむという。

岡田謙三展_b0084241_8264089.jpg
その理由の一つは、西洋の絵画はアングルで「写実主義」の頂点に達し、その後は既成概念の破壊に次ぐ破壊、つまり「革命」を旨としてきたという。それが岡田氏の場合は、日本の伝統が連綿と生きているという。

今一つは、西洋の画家は一か所に固定された視点から描くのを常識としてきた。
其れを破ったのがセザンヌであり、更にはピカソになるという。ところが日本画の場合は、屏風絵でもわかるように、春夏秋冬が一枚のタブローに収められ、視点が動くだけでなく、時間も過去現在が無理なく混在している。同じように岡田氏の晩年の抽象画も時間軸が混然としているからだという。

専門家でも苦労される解釈を、又聞きで僕が記しても分かりずらいとは思うが、木島氏の論旨はおおよそこんなところだったと思う。
僕自身、岡田氏の晩年の作風をどう受け止めてよいか困っていたが、なんか木島氏のお話で、ちょっぴりとっかかりができたように感じられたのは救いだった。

ところで岡田画伯は僕の訪問後まもなく亡くなられた。
夫人は医師の宣告を最後まで隠しておられたようだが、ご本人はとっくに御存じだったと僕は思う。
あの不思議な「透明さ」がそれを物語っていた。
by n_shioya | 2010-01-16 22:57 | 美について | Comments(2)




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