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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
2009年 07月 03日 ( 1 )
容貌のメッセージ性
10年ほど前、ベルゲンでフィヨルド巡りをした時、同じ列車に乗り合わせた日本人夫婦とお近づきになった。
それが菅沼ご夫妻で、御主人は理研にお勤めの科学ジャーナリストで、ご夫人はゲド戦記の翻訳で知られる児童文学者清水真砂子さん(旧姓)だった。現在は青山学院で教えられている。
帰国後も文通は続き、ご著書をいただいたり、お食事を一緒にさせていただいたり、頻繁ではないが、親しい交流を続けてきた。

来年で定年なのでその前に一度学生たちに講義を、とのお申し出を受け、二つ返事でお引き受けし、今日その責務を果たしてきた。
講義のタイトルは「容貌のメッセージ性」。
我ながら厚かましいテーマだと思ったが、長年美容形成外科に携わってきて、さまざまな患者の悩みに接し、その集大成としてこれから取り組みたい課題だったからである。
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形より心とよく人は言うが、どっこい人の気持ちはそんな建前で片づけられるものではない。
容貌のコンプレックスをメスで和らげるのが美容外科と僕は心得ている。
美は主観的なものともよく言うが、明らかに大方の認める美の基準は存在する。
たとえば白雪姫の顔を鬼婆で置き換えてごらんなさい。ぶち壊しでしょう。
つまり類型化が可能ということは、美の基準があるということではないか。

誰でも人に好かれたいし、人を不愉快にはしたくない。
だが、容貌が自分を裏切って、発したいメッセージと逆に人を不愉快にするとしたら、その苦しさはいかばかりであろう。
シラノは類まれな文才があり、素晴らしい恋文をかけたが、その世にも不愉快な醜い鼻がそのメッセージをぶち壊すと信じていた。
その朋友、クリスチャンは素敵な男振り、今で言うイケメンだったが、哀れにも言葉を操るすべを知らなかった。つまり顔にふさわしいメッセージを発信できなかったのである
そして二人で、絶世の美女ロクサーヌに恋の合作をしかけて、ドラマは展開していく。

容貌のメッセージ性_b0084241_17294275.jpgこれが名作「シラノ・ド・ベルジュラック」だが、僕はここに容貌のメッセージ性が描かれていると思った。もちろんこの戯曲の真髄はシラノの演ずる「男の美学」であることは言うまでもないが。

容貌とその発信したいメッセージとの乖離
このギャップを、メスによって安全に埋めるのが美容外科の使命、と熱弁をふるったが、50人ほどの学生の中で、シラノを知っていたのはわずか数人。読んだものは一人もいなかった。
それでも僕のつたない話に耳を傾けてくれた。

“今日の僕の話など忘れてもよい、だが、卒業までにぜひこのフランス文学の最高傑作「シラノ・ド・ベルジュラック」を読んでほしい”、とアピールして講義を終えた。
by n_shioya | 2009-07-03 22:54 | 美について | Comments(9)




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