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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
2008年 03月 01日 ( 1 )
インフォームドコンセント
ある時、母親に付き添われて、やけどの跡を気にした女子高校生が外来を訪れた。
“私の不注意でこんなにしてしまって”と母親は嘆く。
四歳の時、台所でお湯をかぶって火傷を負い、上腕に手のひらほどの浅い傷跡を残している。
赤くもないし、つれがあるわけでもない。
人が見てもそれほど気にならない薄さだが、本人はそのため夏でも袖無しが着れないでいたそうな。
“大きくなったらきっと何とかしてあげるから”と、今まで我慢させてきたという。

じつのところ、僕達形成外科医がいちばん判断に迷うのが、この程度の余り目立たない傷跡なのである。
この場合、治療法としては植皮術しか考えられないが、それで跡かたなくなるわけではない。叉、本人の皮膚が必要であり、新たに傷を増やすことになる。つまりやって得か損か、僕たちも判断に苦しむ。

こちらには手術すればこうなるという予測はつく、しかしそれをあらかじめ見せることは出来ない。
患者の頭にはこうなりたいというゴールがしっかとある。しかし外からそのイメージはつかめない。
何とかそのギャップを埋めるために我々は問診を繰り返す。時には似た症例の写真をお見せすることもある。そしてそのギャップがほぼ埋まったと思われたとき、初めて手術に踏み切ることが出来る。
このようなプロセスが、最近のはやり言葉で言えば、「インフォームドコンセント」ということになる。

その主旨は、診療に当たって医師は、患者によく自分の考えなり方針を説明し、患者の同意を得たうえで治療に当たれということであり、平たく言えば納得ずくの医療ということに過ぎない。
そもそも「インフォームドコンセント」は元来欧米で発生じた考えであり、個人主義の契約社会では、説明義務という法律面が強く押し出されているのに反し、わが国では医師と患者の意思疎通というニュアンスで、道義的にとらえられている気味がある。
いずれにしても現在では、医療に携わるものの常識になりつつある、形成外科医にとっては今に始まったことではない。
先程の例でもおわかりのように形成外科はその性質上、患者による自発的な意思決定が必須とされる科だからである。

この高校生の場合は、話し合いの結果、本人のの考えがはっきり固まってきたので、手術に踏み切ることにした。
“やけどの跡のため自分は子供のころずいぶんと苦しんだ、その傷跡が無くなればたとえ手術の傷が残っても我慢できる、それは自分の意志で生ずるものだから”という事だった。

このように十分な情報を与えられて患者が意志決定を行うのが、「インフォームドコンセント」であるが、形成外科、美容外科の場では、手術を引き受けるか否か,医師にも裁量権がある。
ここで医師の測の意志決定のプロセスを追ってみよう。

患者の訴えを聞いた医師は、まずその訴えが妥当かどうか見極める。
傷跡にしても、醜形にしても、気にするのももっともとこちらが思えるかどうかである。医師個人の好みより、いわゆる社会通念に照らしてのことだが。
次に、患者の希望する事が、現在の技術で可能で且つ安全であるかどうか。
この際、患者の持つイメージと、こちらが考えている手術結果との間にギャップがないかどうか、いろいろとシミュレーションが必要になる。
医師は、手術による効果とデメリットを十分に説明する義務があり、これが先に述べた「インフォームドコンセント」の前提である。

こうして十分に意志疎通が確認されたところで、医師の立場から手術をしたら得か損かを、患者に告げる。
その上で、手術を受けるか否かの最終判断は、患者本人にゆだねるように僕はしてしてきたつもりである。
by n_shioya | 2008-03-01 19:23 | 医療全般 | Comments(4)




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