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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
年をとると抵抗力が落ちるということは当たり前のようにいわれる。
だが何故だろう。 一言で言えば「免疫能の低下」が原因である。 若いときはちょっと風邪を引いたぐらいで治ってしまうのが,老人ではちょっとこじらすと肺炎になって,下手をすると命にも関わるようになる。 火傷でもその差は歴然としている。 体表面積の20%の火傷の場合、幼少児を除いての60歳までの死亡率は10%だが,60歳以降では90%と逆転してしまう。 また,死亡率で年齢差のはっきりでる手術はなんだろうか。 三時間かかる乳がんの手術と,なれた外科医なら一時間もかからない胆嚢の手術と。 乳がんの手術は年齢に関わらず死亡率は非常に低いが,胆嚢手術は高齢者でリスクが急増する、というのが実はアメリカの専門医の試験でよく聞かれる問題だった。 現在は内視鏡で簡単に胆嚢摘出は行われるので話は違ってきたが。 乳がんの手術は時間はかかるが内臓には手を加えない表面だけの操作である.それに反し胆嚢を取るにはまず腹腔をあける。 そして胆嚢という決して無菌的でない物にメスを入れるため,腹膜汚染の可能性がごくわずかでも生ずる。 若い人なら問題にならない程度の汚染でも,老人の場合には腹膜炎を併発し得るのは,風邪から肺炎を併発という場合と同じである。 このように人間の体を外敵、特に細菌等の侵襲から守ってくれるのが“免疫機構”である。免疫機構は外敵だけでなく,癌細胞のような内なる敵からも守ってくれる大切な働きをしている。 その主役は白血球の一つのリンパ球で、T細胞とB細胞の2種類がある。 T細胞は胸腺由来で,胸腺,ThymusのTをとってその名が付けられB細胞は骨髄由来で,骨髄つまりBone marrowのBからその名が付けられた。 それぞれにまたいくつかの種類があり、その働きも最近詳しく分かってきた。 老化とともにこれらの細胞の産生能は低下し,ことに胸腺は年齢ともに退化していく。 また細胞の数は同じでも,ここの細胞の活性自体が衰えるという面もある。 この免疫能をいかに強化するかも,抗加齢医学のこれからの重要な課題である。
by n_shioya
| 2008-07-03 21:59
| アンチエイジング
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Comments(3)
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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