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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
国際線に乗っていると、“お医者さん居られませんか!”という突然の機内放送で夢を破られることがある。
こういうときにアメリカの医師は絶対に立とうとはしない。後難を恐れるからだ。 機内には医療設備は無いに等しい。もし好意的に治療して結果が悪かった場合、訴えられれば敗訴するからだ。 かつてスチューワデスに看護師の資格が必要とされた頃は、救急箱は整っていたという。 今は、血圧計があるだけで、薬は一切用意されてない。 このような場合思うように治療ができなくても、医師は免訴してもらえるという法律がニューヨークの議会に上程されたことがある。 世にいうグッド・サマリタン(良きサマリヤ人)法である。これが否決されたとき、医師側はそれなら路上で怪我人や、急病人を見かけても見殺しにするのもやむをえないということになったのを覚えている。 だから機内での救急コールに答えて立ち上がるのは、大概日本の医師である。 およそ聴診器と縁の薄い形成外科医の僕でも、誰も応じなければ、こちらの心臓をどきつかせながら、恐る恐る席を立つことにしている。 外科医の僕は、どんな大出血でもびくともしないが、ちょっとでも脈の乱れた患者を前にすると、こちらの心臓が止まりそうになるからだ。 そんなあるとき、呼び出しに応じてわざとゆっくり駆けつけてみると、幸いにもう金髪の若い医師がその場に到着していた。 、足を挙上して寝かされた患者は、血色も戻り血圧も落ち着いてきた。 聴診器をぶら下げた若い医師に、“君がいてくれて助かったよ、俺は形成外科医だから”というと、 “俺だって、精神科なんだ”とニヤリと小声で答えた。彼はやはりアメリカ人ではなく、フィンランドの医師だった。 その後の経験で分かったが、ほとんどの場合は、忙しいビジネスマンが寝不足のまま搭乗し、睡眠剤をアルコールで煽って寝込んで起こる、一過性の貧血である。今のように寝かせて足を挙げればほとんど回復する。 もっと遥かに深刻な事態で、ジャンボ機をアラスカに緊急着陸させた経験や、そもそも「グッド・サマリタン法」とは何であるか、別の機会に譲ることとしよう。
by n_shioya
| 2008-03-17 22:22
| 医療全般
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Comments(3)
![]() ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
先生、日本でも医師(医療施設)が救急患者の診療を断った時の罰則が比較的軽いのに対し、受け入れた医師の医療措置の瑕疵(かし)に対する罰則が非常に重い、という現実があります。最近多発している医療機関の急患受け入れ拒否の背景には、アメリカと同じような事情があるのでしょうね。
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![]() 塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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