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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
まあ、よくこれだけ歯のことを知らずに、これまで平気で医者をやってきたと、我ながら呆れている。
去年、昔のブリッジが外れたのを機会に、本格的な歯の治療を始めてもう半年になる。 その時点ではほとんどの歯が歯周病か、もっと進行して抜歯が必要な腐れ歯に化していた。 以来、月2回ほどのペースで治療を受け、今日もたっぷり一時間、歯のお手入れを受けて帰ってきたところ。 テレビなどで、たとえばたけしの番組「本当は恐い家庭の医学」などで皆さん先刻ご承知だろうが、歯周病とは歯と歯茎の間にポケットが出来て、ばい菌が繁殖し始めた状態である。 糖尿病や動脈硬化の原因ともなり、それが悪循環を引き起こし,それこそ“ほっておくとコワーイことになりますよ!” ところで歯科衛生士の可愛いお嬢さんに、チクリチクリといじめられる歯の治療は、僕のマゾ嗜好を満足させてくれ、一石二鳥の効果がある。 だが実際にはお嬢さんの手際が良すぎて痛みはほとんど感ぜず、もっと痛くと頼むほどのサディストではないので、ただうつらうつらと心地よく寝そべっている姿は、ちょうど“千鳥がワニの歯をくちばしで突っついて掃除しているような図柄”ではないかと夢想している。 これほど歯のケアがきめ細かくなったのは最近のことなのか、ただ僕が不勉強なだけなのか、往年の劣等医学生は気になって主治医の鈴木先生にお伺いした。 歯周病と全身疾患との関係についてはアメリカでは20年ほど前から研究が盛んになったという。 日本ではその頃やっと正しい歯の磨き方の指導が始まったという。 アンチエイジング医学の三割は歯の問題である、と分かったようなことを説いてきた僕だが、鈴木先生のご説明を聞くほどに、歯周病対策の重要性を痛感し、その啓蒙の必要性と、医療保険の改善をこのブログで訴えていくことを決心した。 たとえば僕が今日受けた“ミス千鳥”による綿密な治療。診療報酬はいくらだと思います? わずか千数百円。コンビニのパートのお姉さんの時給に毛の生えたぐらいだ。 良い医療をするほどに赤字は増大します、と鈴木先生も嘆いておられた。 そして今僕は突飛なことを考えている。 いっそ、医者と歯科医の壁を取っ払ってしまったらどうか、ということだ。 医師は人間の臓器の一つとして、歯牙領域に理解を持つべきだし、歯科医も歯科治療という専門技を持った全身管理も可能な医師としての自覚と経験と誇りを持つべきであろう。 詳しいことは検討の必要があるが、僕が理解する限り、医師も歯科医師もカリキュラムのコアは共通するところが多い。そして今医師不足が叫ばれているなか、歯科医は反対に供給過剰になっている。 その点でも、医師不足を解決する合理的な方法ではなかろうか。 僕が現役の頃、僕の形成外科教室には医科歯科大学の歯学部から、口腔外科医や矯正歯科医が参加してくださっていた。彼らの医師としての資質や能力は医学部出身者となんら遜色は無い。要するに医学部出身であろうと歯学部出身であろうと、いい奴はいいし、駄目な奴は駄目なだけである。 たとえば、細菌感染の重要な形態の一つであるバイオフィルムに関する研究は、その全身への影響を含め、われわれ医学部に禄を食むものたちよりも、歯学部の専門家たちのほうが遥かに進んでいるようだ。 結論から言うと、歯学部も医学部も基本カリキュラムは一体化して、すべて医師として教育し、その上で歯科も医学の一専門分野と位置づける。勿論医師免許を一本化するには、ある期間の無理の無い経過措置が必要だ。 乱暴な話だと? われわれ外科医だって昔は床屋の仲間で、最近やっと内科医が医者の仲間に入れてくれたのはご存知でしょう。 また医師会なんてどうせギルドだから、この案には大反対だろうし、目下のところ、自分達の低レベルを維持するのに汲々としているから、無視してもいいだろう。 何、低級なのは歯科医師会も同列だって? それなら共同して切磋琢磨し、医療の現場に無知な、机の上の数値あわせに追われている霞ヶ関のなまくら村民のケツをひっぱたいて、医師のプロ意欲を喪失させるような医療制度を改めさせようではないか。
by n_shioya
| 2008-02-22 22:24
| 医療崩壊
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Comments(4)
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at 2008-02-23 00:44
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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n_shioya at 2008-02-23 10:37
Katzさん:
コメント有難うございます。 これから過激な発言が増えるかと思いますが、僕もそろそろ“いい子”をやっているのにうんざりしたからです。 もう“持ち時間”も限られてきてますので、右顧左眄せず、言うべきことは言い、やるべきことはやって、遺言状ではじめて“いい子”の仮面を脱いだ鴎外の轍は踏まないようにしたいと思います。
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katz
at 2008-02-23 22:35
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塩谷先生は孔子様のいう「心の欲するところに従って矩(のり)をこえず」でいらっしゃると思います。先生のような教養を背景に、さらに自己韜晦されてしまったりすると、私のようなボンクラには何をおっしゃっているか真意が掴みきれません。どうかおっしゃているように、このブログでは思うままを真っ直ぐに語って頂けたらと思います。
Commented
at 2008-02-24 17:09
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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