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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
いやはや大変なことが起きてしまった。
若返りの秘薬として喧伝されてきたボトックスで、死亡例や健康被害が発生してFDAが調査中だという。 数日前にFDAの発表があり、日本では今朝、テレビや新聞で報道されたようである。 このことを僕はマスコミの取材を受けて初めて知り、今慌ててインターネットでFDAの報告を調べているところである。 今分かっているところでは、十数名の死亡例はほとんどが小児で、しかもこの薬剤の使用が認められていない小児麻痺の痙攣に対して使われたようである。 一例だけ美容目的の患者が含まれているが、それはボトックスと関係ない肺炎によるものと分かったそうだ。 したがって結論から言えば、今の段階ではボトックスの美容目的の使用は問題がなさそうでほっとした。 ボトックスとは食中毒の原因であるボツリヌス菌の毒素を抽出したものの商品名である。 これはれっきとした神経毒で、筋肉に注射すると、神経末端の伝達機構がブロックされ、筋肉が麻痺する。 そもそもは眼瞼痙攣の治療に使われ、保険も認められているが、いわばその副作用として、目じりの皺が取れたことから、皺とりの手段に使われるようになった。 最も効果的なのは額の横じわ、眉間の縦しわ、そして目の周りのいわゆる“カラスの足跡”である。ただし日本ではまだ、美容目的のためには認可されてないので、個人輸入に頼るしかない。 細菌毒素と聞くとぞ、ぞっとなるむきもあるかも知れぬが、使われるのはごく微量で、しかも麻痺する箇所は注射箇所に限るので、全身には影響はないとされている。 アメリカでは美容医療の中で現在最も需要の多い治療法になっており、“ビューティ・ポイズン”と言う愛称?で呼ばれることもあるくらいだ。 ただ効果は一時的で、せいぜい半年なので反復使用が必要になるが、それがリピーターを生み、施術そのものは実に短時間で終わるので、美容外科医にとっては最も費用対効果の多い、ありがたい収入源になっている。 勿論注射の打ち方にコツがあり、下手に打つと顔がアンバランスになるが、これも一時的なものである。 ただ、打ちすぎれば無表情になるので、俳優などは表情が乏しくなるのが難点とされている。 ただまれに、麻痺が注入箇所から離れたところに波及して、呼吸麻痺や嚥下障害を起こしたりすることもあるという。 また、片頭痛や多汗症にも良いとされている。 いずれにせよ、FDAの広範囲の追跡調査の結果が出るまでは、施術者も患者もボトックスの使用には、細心の注意を払う必要があるだろう。
by n_shioya
| 2008-02-13 22:50
| アンチエイジング
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Comments(4)
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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