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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
僕の運命を決定付けた一冊の本がある。いや性格には二冊組みであるが。
題名は「アート アンド プリンシプル オブ プラスティックサージャリー」 著者はギリエスとミラードという二人の20世紀を代表する形成外科の巨人の傑作である。 僕がアメリカで外科を修行中、将来は脳外科をやるか、いや心臓外科にすべきかなど迷っていたとき、“違う、お前は形成外科に進むべきだ”と、決心させたのがこの名著である。 入門書でもない、歴史でもない、テクニックでもない、いやそのすべてであり、しかも“形成外科のエスプリ”を余すことなく伝えてくれた魅力的な著書である。 この中で著者たちは形成外科医の守るべき10か条の心得を挙げている。 その中の一つ“明日できることは今日するな。”というのが僕を魅了した。 早とちりしては困る。決してこれは事なかれ主義の霞ヶ関の村民たちの、“先送り体質”を奨励しているわけではない。 そもそも形成外科手術は熱傷や外傷などを除き、一刻を争うものは少ない。 むしろじっくり時間を掛けて問題を分析し、頭の中で手術法を練りに練って、最適と思われる方法に絞り込めたところでメスを入れるべきで、とりあえずの行きあたりばったりの手術はつつしめという戒めである。 ある意味で形成外科の手術にはルーティンはなく、すべて応用問題といってよい。 しかも他の手術と違って、先へすすめなくなったらいったんメスを収め、間をおいて手術を再開することも可能な分野である。 また、手術の種類によっては、二回、三回とステージを分けて手術を行ったほうが安全な場合がある。 第二の理由としては、これが一番多いケースだが、当初目立つ傷跡でも、日にちが経つに連れ自然に目立たなくなることが多い。外傷などでは、受傷当時は細かい細工がしにくいし、また感染を誘発しやすい。 とりあえずは傷をふさぎ、半年、一年たって再評価して、目立つ部分だけを対象にすれば、修正の範囲も少なくてすむし、また操作もしやすくなる。 また小児の場合は、機能障害や生活に支障がない限り、成人するのを待って手術を行えば、子供のときには入院して全身麻酔が必要だったのが、局部麻酔で通いの手術で済む場合もあり、また術後の管理もしやすいというメリットがある。 つまり、形成外科では、“待つ”ことも治療の重要な一環であることが多い。 これほど大切な一か条だが、実は学生には教えないことにしている。 最初の講義でこれを得々と説いたら、その日から彼らは勉強しなくなったからである。 だから、美女軍団の皆さん! スキンケアだけは、“今日出来ることを明日に延ばす”と後悔しますぞ、と脅しをかけるのは、目下当方は画期的なアンチエイジング化粧品を懸命に開発中だからである。
by n_shioya
| 2008-01-22 22:39
| 手術
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Comments(4)
確かに傷跡は変化しますね。私は3歳の時の傷跡が顔にあります。2カ所傷跡があり、眉毛のところを2針縫ったのはキレイに直ると言われました。その通りになりました。目の下のかすり傷は、色が薄くはなっても消えることはない、と。これもその通り。それでも、思春期から20代の頃はそのカスリ傷も薄くなり、化粧でカバーできました。30代以降は傷跡(色素沈着)が再度目立つようになりました。鏡を見ない限り自分からは見えないので、本人(=私)は気になりませんが、私の顔を見た方が時々「どうかしましたか?」と心配なさるので、幼い頃の傷跡であることを説明しなければなりません。それが厄介。他人に心配をかけないよう、というのが傷跡の悩みです。
息子も幼い頃、額に4-5針縫うケガをし、傷跡が目立つ場所なので気になり形成外科医に相談したところ、「大きくなってから、少なくとも中学生になるのを待つべき」と言われました。これもその通りですね。10年前の傷跡はよく見ない限りわからないし、男子なので、本人も全く気にならないようです。 アンチエイジング・スキンケア、首をなが〜くしてお待ちしています!
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子供さんの場合、親があせりすぎるのが一番困ります。
親が自分の責任と感じ、何とか早くと思うのは分かりますが、無理すれば結果にひびく場合もあります。 また、何時も言うのは、子供が怪我をしないで育つのは奇跡に近い。 むしろそれだけ元気なのだと、喜んで欲しい。 怪我をするのは子供の特権なのだから、とさえ僕は諭します。 一つには、親があまり罪悪感を持つと、これをギルト・コンプレックスと呼びますが、子供に心理的な悪影響を及ぼすこともあるからです。
アンチエイジングな化粧品・・・とっても気になります。
最新の記事の「癌だと思い込ませないこと」がポイントならば。 「自分の肌は衰えてると思い込ませないこと」をポイントにするのでしょうか?(笑) ところで、本題です。 先生のページはいろいろな意味で勉強になるのでリンクいただいちゃいました。 もし、ご迷惑でしたらおっしゃってください。速やかにはずしますので。 ちなみに、もしリンク断られてもそれで恨んだりここに来るのやめたりしませんので。
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![]() 塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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