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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
“形成外科医になりたいけど、器用でなければだめですか?”と聞かれることがしばしばある。
僕はこう答えることにしている。 "そんなことはありません。当たり前の手を持っていれば、誰でもなれますよ。僕を見なさい。”と。 すると相手は、またはぐらかされたかという顔をするが、僕は真面目である。 もちろん器用であることに越したことはないが、大切なことは形成外科に魅せられることと、あとはその人の努力である。 下手の横好きは困るが、自分の腕を過信せず、地道に基本から積み上げ、計画性を会得し、確実な手技を習得することにある。 器用な人の中には時折、あまりプランニングをせず適当につじつまを合わせてしまい、大成しないことがある。 “でも美的センスは必要でしょう?” これもよく聞かれる質問だ。 “僕はこれも並みのセンスで十分。”とお答えする。 一番の理由は、SF映画と違い、今の形成美容外科のレベルでは、顔を思い通り自由に変えることなど不可能だからだ。 たとえば造鼻術。眼や外傷で欠けた鼻を皮膚移植で再建しても、かろうじて鼻らしいものが出来るのが今の技術の限界を示している。 最も難しいのはペニスだ。機能ははじめから諦めても、形状すら大浴場で他人様に開陳できる代物ではない。 余談になるが、性転換の手術で、男から女は比較的容易だが、その反対は難渋するのはそのためである。 必要なのは美的センスよりも美に対するこだわりだろう。仕上がりに対するあくなき執念。この点でも僕は失格者だと自認している。 仕上がりの完璧さを追求するほどリスクは高まり、僕の場合外科医としての判断がストップをかけてしまうからだ。 だが僕は、患者の心臓が止まっても、まったく気づかずに夢中で細工を続けた名工?を知っている。 そこまでいかなくても最も恐いリスクは、細工に凝りすぎて皮膚が死んでしまうことだ。血流が断たれてしまうからである。 20世紀の名形成外科医ラルフ・ミラードが “形成外科とは美と血流の永遠の相克である。”と喝破したのはこのことである。 さすがミラード先生、洒落たことをおっしゃいますね。
by n_shioya
| 2008-01-17 21:37
| 手術
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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