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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
昔、旧制高校という教養主義の温床があって、そこの住人である旧性高校生という蛮族は弊衣破帽と高下駄で闊歩し、昼は寮の万年床に沈殿し、夜は酒を飲んでは寮歌を放吟してあたりを睥睨していた。
昨日うっかり教養主義という表現を使ったら、早速、では汝は教養主義をどう考えるかというコメントを頂いた。 例によって広辞苑をひもどくと、これも教養主義の悪癖といえるが、教養とは“単なる学識・多識とは異なり、一定の文化理想を体得し、それによって個人が身につけた創造的な理解力や知識。その内容は時代や民族の文化理念に応じて異なる。” ウーム、さすが岩波文化の結晶の広辞苑。一言も付け加える言葉も、省く言葉もない。 そう、蛮族のよりどころは岩波文化であった。 読むべき本は、阿部次郎の「三太郎の日記」、西田幾多郎の「善の研究」そして倉田百三の「愛と認識の出発」、話す言葉は和製ドイツ語と決まっていた。 教養主義が、それゆえに日本を破局へと導いたか、にもかかわらず破局への道を防げなかったとするか、ここでは論じない。 ただ、前出の定義を認めれば、教養を主義として掲げる意味は次の三つに要約できると思う。 ①物事の本質を見据える眼力の育成 ②多様な価値観の許容 ③己の立場の明確化 ちょうど、幼児期の味覚の発達、学童期の言語の習得など、人が能力を獲得するにはそれぞれ適当な時期があるように、教養の擦り込みにも適当な時期があるようだ。つまり古典、芸術などを吸収・・・できなくても、感受性を高める適齢期が。 過去を振りかえり今僕は、それは思春期すなわち15歳から18歳ぐらいではないかと思う。つまりちょうど今の高校時代ではなかろうか。 その大切な時期が無益とも言える受験勉強に費やされている。 大学の教養課程ではもう手遅れかもしれないし、本人たちは受験勉強で疲弊しきっているだろう。そしてさらに就職への準備過程が優先度を高め、教養など役立たずのお遊びの時間は消えていく。 だが僕は、ここで改めて教養主義の復権を叫びたい。 今になって僕は、昔の教養主義の遺産で食いつないでいることを痛感するからである。 迂遠な様でも、これが人生に幅と深みを与えてくれるのだと信じている、例え配偶者に貴方のはただのペダンティックな引用癖に過ぎないと迷惑がられようとも。
by n_shioya
| 2007-02-05 22:26
| コーヒーブレーク
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Comments(1)
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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