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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
このところ米国の美容外科の世界に異変が起きている。
今まで美容外科ナンバーワンだった皺伸ばしの手術が、脂肪吸引に首位の座を渡したのである。それに伴って、脂肪吸引だけで生業を立てている美容外科医も増えているようだ。 と、同時に進んでいるのが、患者のそして医師のメス離れである。 肥満体といってもアメリカ人のは数百ポンドといったけた違いの太り様であり、それとくらべれば日本女性が気にする肥満など可愛いもので、むしろ痩身願望のほうが異常といえる。 日本人の場合は減量のための脂肪除去というより、体形を整えるぐらいに考えたほうが無難だろう。 したがって日本では脂肪吸引の患者はアメリカに比べはるかに少なく、専門の医師も数が少なく、我々も吸引希望の患者の紹介先に苦労する。 メス離れは皺伸ばしの分野で著しい。 かつては顔の皮をへっぱがして吊り上げる、いわゆるフェースリフトしかなかったが、最近はケミカルピール、レーザー、ヒアルロン酸、ボトックスなど、メスを使わない方法が続々と現れてきた。 効果はもちろん手術に劣るし、永続性もないものが多いが、患者にとってはやはり切られるより、お化粧感覚でリピートしても、ということになるようだ。 しかし、小じわや筋肉の収縮で出来る皺は別として、本当のたるみはやはり手術で取り除く以外にない。 近着のアメリカ形成外科学会のニュースでは、このメス離れ現象に触れて、二つの対立した意見を掲載している。 まず、これからますますメス離れが進み、形成外科医もメスを捨てて、美容皮膚科に転向せざるを得ないだろうという悲観論。 それに対し、手術以外の方法を続けているうちに、患者もやはりこれ以上は手術をしなければ改善されぬと悟り、又外科医に戻ってくるという楽観論。 いずれにせよ形成外科医もメスだけにこだわらず、手術以外の方法もすべて自家薬籠中のものとし、まずは患者の要望に柔軟に対応することが、政策上大切ということでは両者の意見は一致していた。 日本の場合はどうだろう? 元来があまりラディカルなことを好まぬ国民性だし、手術を避けたい気持ちは万国共通なので、メス離れはますます加速していくのではないだろうか、メス一丁で渡世してきた形成外科医としてはいささか残念な気もするが。
by n_shioya
| 2006-10-08 20:59
| 手術
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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