|
NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
職業柄外科医は食事が早い。その点では僕も人後に落ちない。
朝食事をしたら、次はいつ食えるか、昼食は手術の合間に数分でかっ込んでしまうのはサバイバルのため、身についた習慣である。 秘書嬢が僕の仕事を手伝うようになってから、早食いが習慣となり、皆と食事すると一人だけ早く終わってしまい恥ずかしくて、と文句を言われた。 だが数日前皆との会食のとき、気がついたら彼女のほうが僕より早く終わっていた。 だからこれは僕のせいではなく、彼女の天分であろう。 今ひとつ外科医の癖は、何事でもデッドラインを決めて、それから逆算してなんとしてでも間に合わせてしまうことである。 そのために要求されるのはスピードだけでなく,不必要なものぱっぱと切り捨てる潔さである。 その点内科医は逆である。まず必要そうなことから順次組み立てて、納得できるまでひねくり回しているから、いつ結論が出るかは余人のうかがい知るところではない。 これは方法論も違い、又目的とするところも同じでないから、一概に優劣は言えないが、お互いに自分たちのやり方が正しいと信じ、相手方のやり方は軽蔑する習わしになっている。 その点でも典型的な外科医の僕だが、最近あることがきっかけでいささか偏見が是正された。 スローライフという言葉がそのきっかけである。 この言葉には何かほっとさせる響きがある。 生まれてこの方、いつも何かに追われていたような気がする。広く言えばデッドラインという奴だ、そしてその為の準備と。 だが定年になり、子供たちも皆結婚して家を離れ、まだしたいことはいくらもあるが、どれもいつまでに仕上げなければならぬものでないし、又新たに準備が必要なものでもない。 しいて言えばこの先避けられないのは、永遠の眠りだけである。 だがこれは向こう様のお迎えで、こちらがデッドラインを決められるわけでない。 この期に及んで何をあくせくするのだろう、まだ外科医の習性の虜なんだな、お前は。これからは内科医?スタイルのスローライフをと反省しているところへ、秘書嬢が入ってきた。 “先生、来週のご予定の調整をお願いします。” “ふむ、じゃあこれとこれを入れ変えて、これはキャンセルし、この講演の準備をこの週末に・・・”と、一瞬にして又外科医に戻ってしまった。 哀れむべきは外科医の性(さが)である。
by n_shioya
| 2006-09-14 16:46
|
Comments(0)
|
塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
以前の記事
検索
カテゴリ
全体 アンチエイジング スキンケア 医療崩壊 キズのケア QOL 老年病 介護 手術 全身療法 食生活 サプリメント エクササイズ エステティック ヘアケア 美について コーヒーブレーク 医療全般 原発事故 睡眠 美容外科 再生医療 再生医療 未分類 最新のコメント
フォロー中のブログ
ICELANDia アイ... 九十代万歳! (旧 八... ・・・いいんじゃない? 京都発、ヘッドハンターの日記 美容外科医のモノローグ ArtArtArt 芙蓉のひとりごと 真を求めて 皆様とともに... ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
|
ファン申請 |
||