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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
年取ってからの楽しみの一つは、“回想”にある。
それまで無我夢中で走り続け、ちょうど車窓の風景のように、切れ切れに飛び去っていった過去の想念を、丹念に手繰り寄せて反芻する時期でもある。 若いころの愛読書を読み返すのも、その一つといえる。 それが著者の自伝か回想記なら、尚のこと興味は深く、己の回想も深まる。 一冊の本といわれれば躊躇なく中勘助の「銀の匙」をあげてきたが、加賀乙彦氏もこう書いている。 “何度も読んでいる。読むたびに見どころが少し違って、何らかの発見があったと思う・・・ 記憶の底にあったものを、そっと取り出してくる回想記なのだが、決して大人の高みから見下ろしている、整理された説明調の文章ではない。子供の心情に入り込み、その身になりきってしまい、今始めて体験するような驚きと臨場感に満ちている。これが、他にいくつもある幼年記や少年記と違う、この本の独創である。“ 確かに。 そして加賀氏はこう結んでいる。 "そして思い出すに値する子供の時代を持つ人は、それがどんなに不幸な思い出であろうとも、幸いな人なのだ。子供の時代を生き生きと思い出して、人生の原点を知ることは、人が挫折したとき、病気になったとき、何よりも老いたときに、すばらしい癒しとなる。 「銀の匙」を読むと至福の感情を覚えて、慰められるのは、そのせいであろう。 お分かりでしょう、僕のいいたいことは。 加賀先輩にこういわれると、ホルモン療法だ筋トレだと、表面的なことにうつつを抜かすだけでは、味わい深いはずの老年期を、行き過ぎたアンチエイジングが、いかに浅はかなものにしうるか、更に言えば、出世のために人間性をそぎ落としてきた役人共の唱える“ピンピンコロリ”が、なんと戦時中の軍部のスローガン、“撃ちてし止まん!”と同列な空ろな響きになってしまうかを。
by n_shioya
| 2006-07-31 17:00
| QOL
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Comments(3)
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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