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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
回想の慰め
年取ってからの楽しみの一つは、“回想”にある。

それまで無我夢中で走り続け、ちょうど車窓の風景のように、切れ切れに飛び去っていった過去の想念を、丹念に手繰り寄せて反芻する時期でもある。
若いころの愛読書を読み返すのも、その一つといえる。
それが著者の自伝か回想記なら、尚のこと興味は深く、己の回想も深まる。

一冊の本といわれれば躊躇なく中勘助の「銀の匙」をあげてきたが、加賀乙彦氏もこう書いている。
“何度も読んでいる。読むたびに見どころが少し違って、何らかの発見があったと思う・・・
記憶の底にあったものを、そっと取り出してくる回想記なのだが、決して大人の高みから見下ろしている、整理された説明調の文章ではない。子供の心情に入り込み、その身になりきってしまい、今始めて体験するような驚きと臨場感に満ちている。これが、他にいくつもある幼年記や少年記と違う、この本の独創である。“

確かに。

そして加賀氏はこう結んでいる。
"そして思い出すに値する子供の時代を持つ人は、それがどんなに不幸な思い出であろうとも、幸いな人なのだ。子供の時代を生き生きと思い出して、人生の原点を知ることは、人が挫折したとき、病気になったとき、何よりも老いたときに、すばらしい癒しとなる。
銀の匙」を読むと至福の感情を覚えて、慰められるのは、そのせいであろう。

お分かりでしょう、僕のいいたいことは。
加賀先輩にこういわれると、ホルモン療法だ筋トレだと、表面的なことにうつつを抜かすだけでは、味わい深いはずの老年期を、行き過ぎたアンチエイジングが、いかに浅はかなものにしうるか、更に言えば、出世のために人間性をそぎ落としてきた役人共の唱える“ピンピンコロリ”が、なんと戦時中の軍部のスローガン、“撃ちてし止まん!”と同列な空ろな響きになってしまうかを。
by n_shioya | 2006-07-31 17:00 | QOL | Comments(3)
Commented by 本好き at 2006-08-01 00:50 x
 深い教養に裏打ちされた真摯なご発言に、いつも学んでおります。アンチエイジングの先頭に立っておられながらアンチエイジングの足下を冷静にご覧になる先生のバランス感覚は信頼の源です。
Commented at 2007-01-31 17:17 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by n_shioya at 2007-02-02 22:47
これからもご一緒に加齢を楽しみましょう。


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