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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
エリーゼのために
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「ベートーベンは不思議な男である。あの鬼瓦みたいないかつい顔をして、ダ・ダ・ダ・ダーンと「運命」に扉を叩かせるだけでなく、バイオリン曲では「ロマンスヘ長調」や「スプリング」など、最も甘美な調べを紡ぎ出してくれる。そうそしてピアノなら「エリーゼのために」は忘れることが出来ない。隠して居たわけでもないが、僕は昔ピアノを習い始めたことがある。旧制一高の夏休み、家にピアノがないので、近くの従姉妹のC子の家で練習をさせてもらって居た。遅いスタートなのでスピードを上げて、一夏でバイエルを制覇し、ハノンで指の筋トレをし、モーツアルトのト調のメヌエットをこなすとこまで行った。そういう習い方もあるのね。と叔母にはからかわれた。その頃従姉妹は「エリーゼのために」をいとも軽やかに弾きこなしていたのを思い出す。そこに東大受験が割り込んできて、ピアノは一時中断したが無事合格し、3月末にまた従姉妹の家に向かった。だが、玄関先で叔母に“今日は帰ってちょうだい”と告げられる、“C子が死んだので”。あとでわかったが、僕の進学が決まった時、自分も来年は東大を受験したいと叔父に言ったそうな。“あかん、東大なんか女の行くところでない”という叔父の一言で彼女は家を飛び出し、帰らぬ人となったという。そして僕のピアノレッスンも、中断したまま今に至っている。
by n_shioya | 2018-03-11 19:54 | コーヒーブレーク | Comments(0)


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