|
NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
今から50年前のアメリカ留学時代の話だが、「グッド・サマリタン法」という法案がニューヨークの州議会だったかに上程されたが、否決されて医療界で大問題になったことがある。
ことの起こりはどこかのプールでの事故だった。 準備体操なしにさっと飛込みをした男が心臓麻痺を起こした。 居合わせた若いインド人の医師がとっさに心臓マッサージを試みたがむだだった。 するとその医師が家族に訴えられた、死んだのは医師の医療ミスだというのであると。 免許は持っていても、インド人ということも不利な要因だった。 これが論議を呼び、このような医療設備の無い緊急事態に対処した場合は、譬え治療が成功しなくても、医師は免責にし得るというのが法律の趣旨だった。 この法律案の名前には聖書にある「良きサマリヤ人のたとえ話」の説明が必要だ。 “隣人を愛せよ”と説いたイエスにある律法の専門家が、“私の隣人とは誰ですか”と聞いた。 イエスは譬えを使ってこう問い返した。 “強盗にあい半殺しになった男が街道に倒れていた。 通りがかった祭司も、レビ人もその男を避けて行き過ぎた。 ただ一人、あるサマリア人だけが男の手当てをし、宿まで運び、治療費も宿の主人に渡して行った。 誰がこの強盗に襲われた人に対して、隣人として振舞ったと思うか?” 律法の専門家は答えた。 “あわれみをほどこした人です” イエスは言った“あなたも行って、同じようにしなさい”。 これは「隣人」とはあなたのほうから求めるのではなく、あなたが進んで隣人になりなさい、という教えだとされている。ちなみに当時サマリア人は下層民族として軽蔑されていた。 この法律が否決されたとき、医療界は自衛のために次のような指針を打ち出した。 「道端でけが人や病人を見かけても、うかつに手を差し伸べないように」と。 こうしてアメリカの医療は崩壊がはじまり、訴訟問題に嫌気がさし、医師免許を返上する者が増えているという。いま日本も同じ道をたどろうとしているのではなかろうか。
by n_shioya
| 2013-09-04 21:00
| 医療全般
|
Comments(0)
|
塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
以前の記事
検索
カテゴリ
全体 アンチエイジング スキンケア 医療崩壊 キズのケア QOL 老年病 介護 手術 全身療法 食生活 サプリメント エクササイズ エステティック ヘアケア 美について コーヒーブレーク 医療全般 原発事故 睡眠 美容外科 再生医療 再生医療 未分類 最新のコメント
フォロー中のブログ
ICELANDia アイ... 九十代万歳! (旧 八... ・・・いいんじゃない? 京都発、ヘッドハンターの日記 美容外科医のモノローグ ArtArtArt 芙蓉のひとりごと 真を求めて 皆様とともに... ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
|
ファン申請 |
||