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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
善きサマリヤ人の法
今から50年前のアメリカ留学時代の話だが、「グッド・サマリタン法」という法案がニューヨークの州議会だったかに上程されたが、否決されて医療界で大問題になったことがある。
善きサマリヤ人の法_b0084241_20593699.jpg

ことの起こりはどこかのプールでの事故だった。
準備体操なしにさっと飛込みをした男が心臓麻痺を起こした。
居合わせた若いインド人の医師がとっさに心臓マッサージを試みたがむだだった。
するとその医師が家族に訴えられた、死んだのは医師の医療ミスだというのであると。
免許は持っていても、インド人ということも不利な要因だった。
これが論議を呼び、このような医療設備の無い緊急事態に対処した場合は、譬え治療が成功しなくても、医師は免責にし得るというのが法律の趣旨だった。

この法律案の名前には聖書にある「良きサマリヤ人のたとえ話」の説明が必要だ。
“隣人を愛せよ”と説いたイエスにある律法の専門家が、“私の隣人とは誰ですか”と聞いた。
イエスは譬えを使ってこう問い返した。
“強盗にあい半殺しになった男が街道に倒れていた。
通りがかった祭司も、レビ人もその男を避けて行き過ぎた。
ただ一人、あるサマリア人だけが男の手当てをし、宿まで運び、治療費も宿の主人に渡して行った。
誰がこの強盗に襲われた人に対して、隣人として振舞ったと思うか?”
律法の専門家は答えた。
“あわれみをほどこした人です”
イエスは言った“あなたも行って、同じようにしなさい”。

これは「隣人」とはあなたのほうから求めるのではなく、あなたが進んで隣人になりなさい、という教えだとされている。ちなみに当時サマリア人は下層民族として軽蔑されていた。

この法律が否決されたとき、医療界は自衛のために次のような指針を打ち出した。
「道端でけが人や病人を見かけても、うかつに手を差し伸べないように」と。
こうしてアメリカの医療は崩壊がはじまり、訴訟問題に嫌気がさし、医師免許を返上する者が増えているという。いま日本も同じ道をたどろうとしているのではなかろうか。
by n_shioya | 2013-09-04 21:00 | 医療全般 | Comments(0)


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