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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
![]() 新幹線で急病人が発生してドクターコールしても、応答がないことが多いという。 ある時,学会の帰りで一車両殆どが医者仲間のことがあった。 “お医者様は!”と言うアナウンスが突如あったが,皆顔を見合わせるだけで立とうとはしない。 最寄りの駅に救急車を手配してくれた方が、と言う横着な判断もあったとおもう。 だが国際線ではそうはいかない。 或る時のフライトで。 シートベルト着用サインが消え、ドリンクサービス、ディナーに続いて映画が始まった。イヤフォーンを耳に付ける。 何の映画だったか、心臓発作で主人公が倒れ、医者はどこだと皆が右往左往する。やがてサイレンと主に救急車で搬送される。ところが医師の診察が始まったのに、まだ医者はいないかと響いてくる。ひょっと気がついてイヤフォーンをはずすと、それは機内放送であった。 すぐアテンダントの誘導で患者の席に駆けつけた。 こういうときにアメリカの医師は絶対立ち上がらない。その理由はあとで触れるが。 実は僕は外科医なので、大量出血ならびくともしないが、心臓発作だとお手上げで、こっちの心臓がおかしくなる。だがそうは言ってられない。 幸いもうすでに一人の医師が、聴診器を当てて診察を始めていた。ブロンドで大柄な、北欧系と思える男だった。 幸いすぐに血圧も持ち直して、顔色も回復してきた。 この患者もそうだったが、直前まで仕事に追われ,過労のまま乗り込み、機内サービスのワインをぐいとひっかけ、睡眠剤でぐっすりと思ったら、血圧が急降下しまったというのが、よくあるパターンである。 スウェーデンから来たという医者仲間に言った。 “お前がいてくれてよかったよ、俺は形成外科医なんだ。” “いや、俺も産婦人科であまりこういうのは得意でないんだ。” 二人で顔を見合わせて、にやりとした。 なぜアメリカ人の医師は立たないか。 訴訟を恐れるからである。 機内には聴診器以外、応急処置に必要なものはほとんどおかれていない。 その昔、スチューワデスに看護婦の資格が必要だった頃は、応急セットは完備していたという。 アメリカは訴訟天国である。 機内とかこれは路上でも同じだが、何もないところで、十分な処置が出来ず、また、処置に関係なくも、何かあとで問題が起こったとき、医療過誤で訴えられれば、善意が仇となり医師は敗訴するからである。 ところでこういうとき、航空会社はどんな御礼をすると思います? 座席に空きがあれば、上のクラスにアップグレード。それからワインの一本とか。 僕はワインがあまり飲めないので、マイレージバンクのポイントでも、ボーナスしてくれたほうが有難いのだが。 こんな経験はこれまでに三度ほどあったろうか。
by n_shioya
| 2013-05-19 20:47
| 医療全般
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Comments(4)
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アメリカは訴訟を恐れて医師が急患を見て見ぬ振りすると俗にいわれてますが、疑問です。そんなことが発覚したら、それこそ追及されます。だから自分の体験は言わないし、他の医師にも無視を推奨しません。なのにどうしてわかるのでしょうか。アメリカが訴訟社会だという話から大袈裟な話が作られたのではないでしょうか。
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マイケル クライトンが書いてましたが、逮捕した人に警官が暴行を加えて死亡したら、それを応急手当した医師のせいにした例があるそうです。搬入された病院の治療に問題があったのに、最初の応急手当に原因があったと責任転嫁することもあります。すると、緊急事態の限られた条件で出来る限りのことをしたのなら責められないけど、警察や病院が責任を押し付けてきたら、相手は権力を持つので抵抗しにくい。そういう現実があるから、おそらく医師は見て見ぬ振りするであろう、ということではないでしょうか。
序破急さん:かつて、[良きサマリア人法」と言う法案が提案されたことがあります。これは設備も嬉々もない場所での緊急時の救命処置に関しては、医療過誤の大正とはしないと言う法案でした。
此の法案が否決されたため、場合によっては見過ごすのもやむを得ないという考えが生まれたようです。 ![]()
始めまして。私は北里の卒業生のナースです。
卒業して間もない頃、東北新幹線で呼ばれました。 たまたまゼミの仲間と旅行で、彼ら(はDr/Nsではない)が「行けば」と言うので行ったのですが、医師1名看護師他に二名が来ました。残念なことに自殺企図でかなり深手、次の駅に救急車を手配(医師は年配で何かあまり救急・外傷処置に慣れていない様子でした)しました。後日御礼も何もありませんでしたが、、、先日も夜道端で老人が酔って転んでいたときも、何人か集まりました(素人さんたちでしたが)。 難しいところではありますが、できる限りは焼く救急隊に引き渡す、というのが次善策のように想います。 法整備を進めて欲しいところです。
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![]() 塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日) 以前の記事
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