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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
「ドングリ異聞」
この奇妙な木彫りはドングリである。
「ドングリ異聞」_b0084241_2243815.jpg

径三センチ長さ十センチほどの樫の実が、5センチほどの台座に支えられ、その台座には何か英語が刻まれている。よく見ると、
“From little acorns mighty oak trees grow”
と書かれている。これはイギリスの格言だそうだ。
この由来を語ることがわが「創傷治癒センター」の歩みを語ることになるが、まず話を1992年の英国に戻したい。

処はハロゲート。ヨークシャーの中心にある森に囲まれた、人口七万ほどの静かな田舎町である。
僕ははここで、スミス&ネフュー社の招きで、第二回Wound Management Symposium に参加していた。学会を終えて後、ヨークに移動し、スミス&ネフュー社の研究所を見学する事となる。
スミス&ネフュー社はコンバテック社とともに、当時、「湿潤療法」の先陣を切っていた。
理論はよくわかった、それで実際は、と問いかけると、学術部長のクリス・ロバーツ博士は、ウェールズにあるカーディフ大学を見学なさい、ご案内しましょうという。

当時カーディフ大学には、キース・ハーディングという若い内科医が、「創傷治癒センター」の旗印を掲げ、「湿潤療法」を軸に、創傷治癒と取り組んでいた。
“実は、”とキースは話してくれた。
二年前、このセンターの開設に当たっては、スミス&ネフュー、殊にウェールズ出身のクリスが全面的にバックアップしてくれたという。
其の頃は未だ日本には寄付講座と言う考えは無かった。
“これはうらやましい、「産学協同」はこうじゃなきゃならん、日本にも「創傷治癒センター」はあってしかるべき、”と僕はクリスをけしかけた。
“よーがす”と彼は言った。いや、よーがす、という日本語を言うはずはないが、クリスがウェールズ訛りで話すとそう聞こえたから面白い。

帰国して早速僕は、大学当局と交渉を始めた。病院長は救命救急の大和田教授で分かりはいい。また、幸い医学部長は僕のクラスメートの佐藤教授だったので、話は早い。
運営はすべて企業の基金でまかない、場所は小部屋を一つ、工面してもらうこととなった。その基金で、分子生物学にたけた優秀な研究員を一人、リクルートすることもできた。

僕はクリスに書いた。“こう言うわけでスタート出来そうです、本当にささやかな規模ですが。ついては、オープニングにお招きしたい。”
ささやかなセンターで、ビールとするめのお披露目に、クリスはヨークから駆けつけてくれた。
お祝いに手渡されたのが、この木彫りのドングリである。奥さんのヘザーの手作りだそうな。
そこに彫られた格言、
「大きな樫の木も、小さなドングリから。」
は、ささやかな創傷治癒センターの門出に真にふさわしい、餞の言葉であった。

あれから20年。
やっとわが国にもドングリが、いや「湿潤療法」が根付き始めた。
其の目的の為に開発された医療用の「モダーンドレッシング」も医療現場で定着し、その家庭判としては「キズパワーパッド」などが普及している。
by n_shioya | 2013-04-02 22:06 | キズのケア | Comments(0)


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