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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
美しき惑いの年
高島屋で開催されているバーナード・リーチ展を観てきた。
バーナード・リーチは柳宗悦、河井寛次郎等と日本で民芸運動を育んだ大先達である。
そこには独創的な魅力ある作品の数々が展示されていた。
併設された民芸展では、益子の陶芸や、松本家具などが一杯に展示され、暫く「民芸の世界」を彷徨う事が出来た。

学生時代、僕を「たくみ」と言う今も新橋にある民芸店に連れて行き、民芸の楽しさを手ほどきしてくれたのは、ウィニーと言うボランティア活動で日本に来たハーバードの女子学生だった。
益子を訪れたのも彼女と一緒だったと思う。

そして僕の民芸好きは嵩じて、僕なりのカントリー・ライフを夢見るようになった。
武蔵野の雑木林のなかで、玉川上水ぞいに黒塗りの梁に白壁の民家に住む。そして家具は松本家具。もちろん食器は益子焼。
そこからジャグァーXKで東京の仕事場へ通う。ちなみにXKは当時日本で乗っていたのは三船敏郎ぐらいだった。
だが、肝心の仕事は何をしたいのか決めかねていた。とりあえず医学部には籍を置いていたものの、医者になるつもりはさらさらなかったからである。
医師で作家のハンス・カロッサの言う「美しき惑いの年」であった。

だが、結局は医者になり、結婚して5人の子供に恵まれると、とてもスポーツカーどころか、住まいもままならず、とりあえずは利便性にかまけ、和室もない家に50年も住み続ける仕儀となった。それでもやがてはささやかな茶室を建てますつもりではあったが。

家具もこれまでは、ともかく安いもので間に合わせてきたが、今頃になってスペースもないのに、岩手や八ヶ岳山麓の家具作りの友人の作品で、がっしりした造りのものを運び込んで、居場所もままならぬまま悦に入っている。
ちなみに、安い家具も買えぬインターン時代は、自分で古材木で机や子供のクレードルなど造った事もある。これは趣味と実益を兼ねた苦肉の策でもあった。

何故これほど「民芸」は魅力的なのだろう。
一言で言えば「ぬくもり」である。
人間不在の現代社会で、“安らぎの住環境”を生み出す最高の手段だからだ。
当然“アンチエイジング”にも打ってつけの筈。
可能なら今からでも建て直そうかと迷いが出るが、高齢になって家を建て替えるのは寿命を縮める最も確実な方法とされているので、矛盾する事甚だしい。
改築の資金がないのがもっけの幸いといえる。

こうして僕の「美しき惑い」は今も続いている。
by n_shioya | 2012-08-29 22:47 | 美について | Comments(2)
Commented by HOPE at 2012-08-30 08:27 x
ぬくもりといえば、よくおいでになるという山小屋もそうでしょうか?
いつも山のお話の時はほっこりとした雰囲気が文面から感じられるので…素敵だなと思っています
Commented by n_shioya at 2012-09-07 22:49
HOPEさん:
僕が好きな言葉は「ぬくもり」と「人の営み」です。


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