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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
鳥飼久美子(漢字が出てこないので失礼)女史の「歴史を変えた誤訳」を読み始めた。なかなか面白い。
歴史的には、不適切な訳語が惨事を引き起こした例としてよく挙げられるのは、太平洋戦争末期、連合国側の最後通牒の筈のポツダム宣言に対し、「黙殺」と日本の鈴木首相が言った言葉が、「Ignore」 と訳され、これすなわち「Reject」とられたため、原爆投下に繋がったというエピソードである。 これが原爆投下に影響があったかどうかも議論のあるところだが、言葉の持つニュアンスのギャップをどう埋めるか、難しい問題で「翻訳は反逆」という言い方をする人もいるくらいだと鳥飼女史は言う。 氏が序章で言われている、“翻訳とは言葉を訳すことではなく、文化を訳すことだ”とは至言である。つまりは相互理解の問題であり、「相互理解」と言うと、帰国後早々にライシャワー大使の通訳をさせられ、冷や汗をかいたことを思い出してしまう。 「40年以上も前のことだが、米国留学からかえってまもなくのこと、高島屋で今は亡き岡田謙三氏の個展が開かれた。 ニューヨークで親しくお付き合いしていた関係で、そのオープニングにまねかれ、のこのこ顔を出したところ、突然岡田夫人にマイクの前に引きずり出された。 これからライシャワー大使の祝辞があるので、通訳をせよという。 冗談じゃない、大使のほうが日本語はずっとお上手でしょう、と抵抗すると大使は言われた “アメリカ大使として公式に話すときは、英語で話します。これは大使の務めですから。” さらに小声で付け加えて“不適切な表現があっても、それは通訳の不手際ですと逃げることも出来ますからね”、とにやりとされた。 通訳とは特殊技術であり、ただ日本語と多少の英語がしゃべれるだけでは勤まらない。 適当にはしょって通訳していたら、そばで“チョッとずるしてますね”とライシャワーに言われてしまった。 それはいいが、突然“ソーゴリカイ”なる意味不明の言葉を彼が口にした。 ソーゴリカイ、耳にした事のない英語なので、立ち往生してると彼が助け舟を出してくれた,“相互理解。ミューチャルアンダースタンディングですよ、英語なら。” 参加者は大笑いで、ライシャワーはしてやったりと満足げである。 そのライシャワーも、岡田謙三氏も今は亡き人である。」(アンチエイジングブログ2007-06-28 23:59より)
by n_shioya
| 2011-04-11 22:30
| コーヒーブレーク
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Comments(4)
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HOPE
at 2011-04-12 13:28
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なんとも愉快なエピソードをありがとうございます。
先生のちょっと自虐的な(?)ユーモアたっぷりの文章にかかると、冷や汗体験も楽しく聞こえてしまう不思議。 でも、こういう力こそ相互理解の基なのではと思ってしまいます。 音字言語同士でも分かり合えないことも多々ある昨今ですもの、こういうお話いいなあと思ってしまいます。
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n_shioya at 2011-04-12 22:31
HOPE さん:
確かに日本人同士でも、相互理解に難渋することがありますね、それが同じ屋根の下となると・・・
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御隠居@横丁
at 2011-04-13 17:54
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鳥飼玖美子
と表記するのに、もしお役に立てば、と書きます。 先生がPCからでGoogleを使えて、簡単にコピー&ペーストできればの話ですが、Googleの検索窓で、とりあえずひらがなで、 とりかいくみこ と入力すると、グーグルサジェストがオンなら、こういう有名人の場合、サジェストで漢字が出ます。それを選択すれば、漢字のエントリが出るので、それをコピー&ペースト。 サジェストを使えなくても、とりあえずひらがな「とりかいくみこ」で検索すると、検索結果に漢字を含むエントリがかならずあります。 以上、わたしがかな漢字変換でなかなか出ない漢字、あるいはドイツ語・フランス語・スペイン語等の特殊な字(ç、ñなど)を入力してる時にためしている方法です。
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n_shioya at 2011-04-13 23:06
御隠居@横丁さん:
ありがとうございます。おっしゃるように、いろいろなやり方がありますね。
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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