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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
「テティスの逆鱗」 唯川恵
画竜点睛」とはこのことだろう。
永年美容外科に携わってきて、何時も釈然としなかったのは、受ける側の動機が本音のところで知りたくても、男の僕には掴みかねたことであった。
その生臭い本音が、唯川恵の新著「テティスの逆鱗」で小気味よく描き出されている。
「テティスの逆鱗」 唯川恵_b0084241_18501620.jpg

『「美のカリスマ」と呼ばれ、世の女性に羨望される女優の條子。堅い出版社に勤めながら、ある日突然不倫の恋に落ちる多岐江。故郷を離れ、東京でキャバクラ嬢としてのし上がろうとしている莉子。亡くなった母親の面影を嫌悪し、資産家の父親も恨む涼香。4人の共通点は同じ女医から美容外科手術を受けていること。4人の美への欲望は次第にエスカレートしてゆき、ついには禁断の領域へ――。「美」と「恐怖」を見事に融合させた傑作長篇小説です。』

など言う書評を見ると、何か猟奇的キワモノを想像してしまうが、どうしてどうして、よく調べもついた力作である、勿論テーマ自体が猟奇的であることは避けられないが。
だが、誇張はあるにしても、作中の4人の患者像はすべて僕もいやと言うほど経験済みだし、また女医である美容外科医の悩みも理解できる。

慄然としたのは、美容外科と言う美に対する執念の為にメスを入れるという行為の恐ろしさと言うか、その背後の闇の深さである。
知らぬが仏とはよく言ったもので、これまではひたすらナイーブに、ただ患者の希望が常識的に納得がいくか、医学的に安全で効果を期待できるかだけの判断で、「禁断の領域」に踏み込んでいたおめでたさを改めて思い知らされた。
その背後にある患者たちの動機と言えば聞こえがいいが、女同士の思惑の渦も知らずに。

かつて僕が手術を手がけた患者達、又患者と割ない仲になって週刊誌を騒がせた美容外科医たちの亡霊が、闇の中から続々と正体を顕してくるような妄想に取りつかれている。

唯一つ気になるのは、これだけ調べが完璧なのに、「美容外科」が万能のように描かれていることである。
著者は当然、手術の限界や失敗はご存じのはず。またカリスマと言えども技術的には完璧ではありないこともお解りのはずだ。
だが、あえてそこに「虚構のカリスマ像」を描いたのは、それでなければ、しかも女性の医師でなければ、「テティスの逆鱗」に触れることはできないという読みだったのだろうか。
by n_shioya | 2010-11-22 18:51 | 美について | Comments(2)
Commented at 2010-11-22 19:22
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by n_shioya at 2010-11-23 22:48
ruhiginoueさん:
そうでしたか。
知らせてくださってありがとうございます。


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