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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
“グッドモーニング、サー”といって、中肉中背の精悍な男が、ロビーのソファーで休んでいる僕に声をかけた。それでも年の頃は60代だろうか。
その男の名前はキースといった。 キース・ベル。 元ロイヤルエアフォースのパイロット。今はスミスアンドネフュー社の要人用のドライバー。 本社のあるヨークからヒースロー空港まで約600キロ。ヨークを出るのが何時になっても、必ず要人の出発便には間に合わすというツワモノである。 その日は「湖水地方」を彼が案内してくれることになっていた。 中学時代、だれでも英語の授業で習うワーヅワースの詩「水仙」に接して以来、ワーヅワース、キーツ等多数のイギリス詩人を育てた「レーク・ディストリクト」は憧れの地だった。 今回、スミスアンドネフュー社の招きで、ヨークの研究所を訪問し、創傷治癒に関する討議に参加したご褒美に、「湖水めぐり」を計らっていただいたのである。 キースは「湖水地方」の生まれである。スタートはまず彼の生誕の地、アンブルサイドから始まった。 そこからワーヅワースの生地、コッカマウス、最もプロダクティヴな時期を過ごしたダブ・コッテージ、終の棲家となったライダル・マウント。 更にはラスキンの館、そしてその地方の中心であるケズィック。 このへんの順序は後に述べる理由で定かではない。 最後がピーター・ラビットのベアとリックス・ポッターのニア・ソーリー。 そこでは、キースが子供時代から可愛がってくれた、モリー・グリーンというおばあさんの家を訪ねた。 その地方独特のスレート造りの、かわいらしい一軒家に住んでいる。もう90歳は越していたと思う。一人住まいだが、身の回りのことはまだ全部自分でやるという。 その日も、ストーブを焚いて、マッフィンを焼き、我々を待っていてくれた。 あれほど素朴だが味のあるマッフィンをその後食べたことがない。 イギリスの田園は哲学者出隆が「英国の曲線」という本で述べたように、高い山はないが、なだらかな起伏が続く。そのアップダウンの激しい、またカーブの連続する山間の道を、キースは自慢のBMWをスピットファイア(戦闘機)のように縦横無人に走らせる。最後には僕もくらくらしてしまい、どのような順序でまわったかは定かでない。 ところで今日はニューヨークの孫が二週間の滞在を終え成田から発った。 出発便が遅れたので、ターミナルの本屋で買った雑誌をめくっていると、「湖水地方」の特集が載っていた。 昔を懐かしみながら、掲載された写真で「湖水地方」の一巡を終えるころ、準備の整ったコンティネンタル8便は、ニューヨークへ向け無事A滑走路から飛び立っていった。
by n_shioya
| 2009-09-03 23:31
| コーヒーブレーク
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Comments(5)
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at 2009-09-04 07:33
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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だんぷ
at 2009-09-04 07:45
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あらまぁ…これまた憧れの地がなんと魅力的に登場してるんでしょう!
ところで、出会った人=普通なら通り過ぎる人と 実に素敵なお付き合いに発展するのは先生の特技ですか? 旅の深みが変わりますよね? 一期一会とは言いますがなかなか…
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n_shioya at 2009-09-04 22:59
だんぷ さん:
キースについては続きをご覧ください。
夏の湖水地方は本当に美しい保養地ですね。私も37年前、28歳の頃近くのランカスタ大学院ーに1年間留学していました。1年前と3年前、定年を前にして、追憶の旅を妻とともに楽しんだものです。イギリスのドライブは素敵な旅でした。ポターのリンデスハウ ホテルも花で一杯の心和む環境でした。
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n_shioya at 2009-09-17 09:20
jupiter さん:
ケズィックで見たのですが、夏に一週間ほどのワーズワースの合宿セミナー、ウォーキングを含めた、などがあるそうで、一度参加したいと思ってます。
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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