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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
ディレッタントとしては僕のはるか上をゆく男として、順天堂大学の山内名誉教授がいる。
彼は教養学部時代「芸術新潮」を愛読し、授業中も当時評判になったアンドレ・マルローの美術論「沈黙の声」を読みふけっていたのがいまでも印象に残っている。 本業は整形外科医で、手の外科の名手である。順天堂大学の病院長も務めたが、傍らYY通信なる気まぐれエッセイをEメールで気まぐれ仲間に送付してきた。 それが「エチュード・サンフォニック」という題の私家本となり、今は三巻まで発行されている。 そのYY通信の最新号に、「仁のわざ」と言う徳川義親の文章が紹介されている。 昭和10年の文芸春秋三月号に掲載されたものだが、大変面白いのでここにその一節を孫引きさせていただく。 医は“仁術だからと云って、苦悩と生命を託している医者をいじめるのは心得ちがいだ。もし仁術を主張する人があったら次の話を読んで貰いたい。 昔赤鬼と云われたきわめて強欲非道の高利貸があった。鬼の霍乱ということもあるとおり鬼だって病気にはかなわない。とても重患で命旦夕に迫った。 これに借りた者どもは赤鬼の奴何とかごねて呉れればいいと祈っていたが、命を託された医者だけは懸命に仁の術を施したので、人の恨みも医者の誠意には負けたと見えて、人々の期待に叛いて不思議にも命を取り留めて回復しかけた。 此病人、ある時不意に床の上に起き直って息子を呼んで「すぐに金千両医者にやってくれ」と云い出した 何しろ平常から強欲無類、出すと聞いては舌を出すさえ嫌いな親父が、こんな途方もないことを言ったので、之は親父てっきり気が狂ったのだと思って、いきなり手近にあった煙草盆をとって身構えて、いよいよ親父がおかしくなったら眼潰しをくれて逃げ出そうとしていると、親父の赤鬼はいつになくにやにや笑って 「慌ててはいけない、おれは気ちがいになったのじゃないから安心しろ。じつは俺が初め病気にかかって、とても助からないと思った時、若し医者の力で之が快くなったらこの財産全部お礼にやってもいいと思った。 それが医者の医者の骨折りで病が峠を越したとき、これで助かったならば財産の半分をやってもいいと思った。 病がだんだん好くなるってくるに従って医者にやりたいと思うお礼の金が少なくなってくる。今おれの病気は八分どおり良くなったがまだ二分の不安がある。そこで之で癒ったら千両ぐらいやってもいいと考えている。 此塩梅では病気が全快したら普段の俺の心懸けでは医者には一文だってやるのが嫌になるだろう。医者は命を救ってくれた恩人だ。この気持の変わらないうちに千両やって呉れ」 と云った。 私の話はこれでおしまい。此上書くとお医者の棚卸になる。病気になった時がこわいから此辺で筆を擱く。” なんとも人を食った噺ではないか。 僕から一言。 今の医療崩壊の元凶は「全国民が健康保険によって、最高の医療を受けることができる」と実現不可能な宣言をし、そのメンツにこだわって小手先のビホウでごまかしてきた厚労省にある。 そのため“医療はタダであたりまえ”という概念を国民に植え付けてしまったのが最大の過ちである。
by n_shioya
| 2009-04-20 20:25
| 医療崩壊
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Comments(6)
![]()
そういう意味で、私は、モルヒネその他の痛み止めを制限ナシで
じゃんじゃん打ってくれるアメリカの医療制度も「良いいかも」と 思い始めました。もちろん、医療費は膨大ですけど。。
0
では映画『シッコ』や映画『ジョンQ』に出て来るような、良い医療とは金次第のアメリカが良いのでしょうか。
それとも、医療は教育も受診も無料だったから、その体制が崩壊した後も給料遅配があろうと働く医師がいっぱいいる旧ソ連のようなのがいいのでしょうか。
きのこ組さん:
でもアメリカの格差医療は行き過ぎのところがありますね。 ![]()
医療費をタダである必要のある人とそうでない人がいるのですから
必要な人のいろいろな事情を汲み取った上でうまくバランスとってほしいんですが・・・ ![]() ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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![]() 塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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