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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
“そんなものはありません”
ファッション界の女王、森英恵女史はきっぱりとおっしゃった。 数十年前のこと、長崎大学の難波教授と東海大学の長田教授と三人で日本初の「美容外科」の教科書を作ろうという話しになった。 あやしげな「美容整形」が跋扈する中で、形成外科医によるまっとうな教科書を世に送ろうと、張り切って企画に取りかかった。 僕の考えはこうだった。「美容外科手術」は最後の手段と考えるべきである。その前に「メーキャップ」、「髪型」、「エステ」など安全に行える手術以外の方法を総動員して、ここだけは手術でないと解決にならないと絞り込んだところで、最小限の「侵襲的な処置」、すなわち手術を行うべきであると。 そのためにはこの教科書は、幅広く上記の分野や、心理カウンセリングも含んだものにすべきだった。 その中には当然「服飾」も含まれていたので、当時日本のファッション界のリーダーであった森英恵女史に、服飾に関する一章の執筆をお願いしたのである。 “先生ね、ファッションには法則性などありません。気まぐれ。だからテキストなど無理です”というのがお答だった。 ちょうどそのころアートの世界で“キッチュ”が横行し、ファッション界も、ボロ着からチンドン屋のような組み合わせ、要は何でもありの世界になってきたのを、正統派のデザイナーとして苦々しく感じられたのかもしれない。 だが今度、山田登世子教授の「ファッションの技法」(講談社現代新書)を読んで、なぜファッションが一見気まぐれで、予測がつかないのか多少飲み込めたような気がする。 中身は 1 女は誘惑する 2 隠すことと見せること 3 『現在』にときめきたい 4 ファッションは終わりのない遊戯 という挑発的な4章からなっている。 まず、「ノーと言いイエスということ、身をゆだねることと拒絶することにおいて、女性は名人なのである」という、哲学者ジンメルの言葉(大賛成である)を引用して、ファッションも、服を着た体は、自分を見せながら同時に隠しているし、イエスとノーを同時にあらわしていると分析する。 また女性は、たがいに『現在』という時を共有したい、つまり遅れをとりたくないのだ。その一方で正反対の、つまり、他人と「ちがっていたい」という矛盾した欲望も持っている。 しかもその『現在形』をとる流行(モード)は、常に新しいものを追いかける。それは必ずしも絶対的な、歴史的な新しさでなく、目新しさ、新奇性である。 別の哲学者バルトはこう言っているという。 「モードは進歩しない。ただ変化するだけだ。」 つまりモードの運動は「変化のための変化」なのだそうだ。 うーむ、森英恵女史が吐き捨てるように言われた、“気まぐれ”とはこういうことなのか。 その“気まぐれ”も法則の中に組み込めば、ファッションの理論も成り立つようだし、矛盾だらけで、一見不可解な女性の行動も、何となくわかってくるような気がする。 支離滅裂な説明で申し訳ないが、山田教授のご著書では、ファッションにまつわるその他もろもろの論旨が理路整然と展開されるので、“不可解なもの、汝の名は女!”とお悩やみの方々は是非ご一読を。
by n_shioya
| 2009-01-31 23:05
| コーヒーブレーク
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Comments(6)
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at 2009-02-01 08:53
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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n_shioya at 2009-02-01 09:05
どうさん:
入りました。ありがとう。
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silku928 at 2009-02-01 10:30
おはようございます。
興味深い本ですね。是非呼んでみたいです。 女心とファッション..時に気まぐれ!時に、今を感じたい! 嗚呼、何だか双方の女史が仰ること、分かるような気がします。 女性はその日の気分(朝目覚めたとき)によって、 その日のファッションを決めることもありますし、 お相手やお天気に左右されることもあるでしょうし(気まぐれでしょ?) もちろんその場のTPOに合わせてきちんと考えることも...。 その反対に、気分が乗らないときこそ、ファッションで気合を入れる! なんていうこともあるのではないでしょうか。 ちなみに今の私は、着心地の良さ♪が決め手かも(^^ゞ。 素敵な着こなしの女性(男性)を見ていますと、 それだけでも、嬉しくなり、元気を頂きますね。 先生のファッションも毎回楽しませて頂いています♪。
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n_shioya at 2009-02-01 11:51
silku928さん:
コメントありがとうございます。 僕にとっても“着心地の良さ”は決め手です。 大上段に振りかぶって言えば、今まで人生の岐路に差し掛かった時、いつもどの状態に身を置いた時が一番自分にとってしっくりし感ずるか、というごく原始的な基準で損得を抜きに決めてきました。 ちょうど下着が合わないと、ごそごそして気持ちが悪いですね。そんな道はどんなに世間的には価値があっても、避けて通ることにしてきました。 それを反骨の美学などと勝手に取る仲間もいましたが、芙蓉さんのコメントで気がついたのは、要するに着心地のレベルの問題だったようです。
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ruhiginoue
at 2009-02-01 11:57
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n_shioya at 2009-02-01 19:40
ruhiginoue さん:
どのリンクでしょうか?
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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