11月11日
ツアーが終わった。とても楽しいツアーだった。今までのツアーの中で一番楽しかった。
楽しかった理由は、100%、俺達がその場所に行って音を鳴らしたからだ。バンドマン、そして機材車、この呼称は伊達ではない。自分が一番だと思う音を鳴らす為の楽器やアンプを載せて、俺達の場合は、その音をライブハウスの中で一番E音で鳴らしてくれるPA(オペレーター)にも同乗してもらい、その場所に行き、音を鳴らす。予定していた全ての場所に行くことが出来た。そして、音を鳴らすことが出来た。音を鳴らしている間は“今”しかなかった。それが最高だった。とても楽しかった。
楽しかった理由のもう100%は、君が来てくれたからである。君が来てくれなければ、ぎりぎりロックは出来たとしてもロールすることは出来なかっただろう。最初に音を鳴らす人がいて、その音を感じ、受け取り、鳴らす人がいて、ロックがロールする。そのロックとロールはそこに居る人だけのものだ。そしてロックとロールは、そのまま風に消えていく。しかし、確かにそこにあったのだ、ということをロックとロールの当事者は覚えている。そして、それを感じる場所、覚えている場所こそが、自分のソウルなのだ、と知っている。世の中には揺るぐことのない悲しみがある、ということも薄々は、あるいは確かに知ってはいるけれど、同時に、それはきっと人生の一部で残り全部をどう楽しむかは自分のソウル次第なのだ、ということも知っている。ロックとロールの当事者は、人生を楽しむ才能がある。そういう当事者である君と、風の中に消えていってしまうロックとロールの爆発を起こすことは、誰にも知られることの無い秘密の企みの様でいつだってワクワクする。そして、その企みは“今”しかできない。そう、君と俺達の間には“今”しか無かった。やっぱりそれが最高だったのだ。
残りの100%はライブハウス。ライブハウスがそこにあったからだ。ライブハウスでやるロックとロールが好きなのだ。今回ツアーで回ったライブハウス、久しぶりの場所もたくさんあったけれど、どこに行っても何も変わらずに大好きなままそこにあった。初めての場所もあったが、またやりたいと思う素敵な場所だった。ライブハウスが無くても、音楽は鳴らせるし、ロックもロールもやることは出来るだろうけれど、俺はライブハウスでやるそれが大好きだ。そこを待ち合わせ場所にして行う秘密の企みが大好きだ。人間をやめることが許される場所、ライブハウス。大好きな場所、ライブハウス。ライブハウスよ、ありがとう。
これら100%同士の足し算、あるいはかけ算、そして、このでたらめな数式を倍加することを生業とする各地イベンターさんの熱きソウル、その時その場所にしかない不確定な要素も多々加わり、それらは数学や常識や法則を無視してふくれあがって、結果、君や俺達の“今”は最高だった。
このツアー、最高だったよ。
このツアーが終わって、ライブが無い日々が続いたら、きっと寂しくなってしまうだろうなぁと思っていた。あらかじめそう思っていたので、ライブの予定をたくさん入れておいた。“今が最高”と叫ぶ為に、今より先のことを少し考えておくのも、楽しくやる為に必要なことだ。11月の14日には渋谷で、もう次のライブがある。「この日は“大人の音”って感じでお願いします」とイベントを企画した人から言われた。「そうか。つまり、アダルトだな」と思い当たり、4人で色々考えているが、なんだか楽しげなセットになりそうな予感である。あぁ、寂しいことなど何もない。大好きなやつをいつでも鳴らせよ、勇ましくいけよ、この俺よ。楽しいことはまだまだまだまだたくさんあるよ。
おお、油断をすれば、気づいてみれば。とりとめもなく、長い文章になってしまったよ。いつだって、本当に伝えたいことはそう長くはないはずなんだ。
つまり、君に何を伝えたかったのかというと
ありがとう、またやろうな、とそれだけなんだ。
うん、
ありがとう。
また、やろうな。
コヤマシュウ