
第四話 「Full out」
それからというもの 俺達のもっぱらの遊びは
「X Japan ごっこ」
これはどういうものかと言うと
1、休み時間 掃除時間などを利用し
6年4組の教室のとなりにある図書館に集まる
2、こっそり買って来た 学校の隣の駄菓子屋の人気商品
「タラタラしてんじゃねーよ」という 恐らく原材料名の鱈(タラ)と
かけたのであろう ヘビメタなあんちゃんが表紙で叫ぶ
お菓子を食べ 空腹を満たしモチベーションの上昇を図る。
3、ヤスダ イワオ を含む他3人のX好き
「G」「スギチョウ」「Oちゃん」 というメンツと共に
図書委員の机の上にどかっと座り
ギターのかわりに恒例のほうきを
ドラムスティックのかわりに図書委員が本の整理に使う鉄の棒を
それぞれ構える
4、Rio扮するYoshikiの「てめえらいくぜーっっ!!」
という絶叫のあと ひたすら鉄の棒で図書委員の机を
叩く 叩く 叩く! ただ一心に 叩く!
その際にブロンドの長髪、、、もとい 刈り上げ頭を
振る! 振る! 振る! ただ無心に 振る!
他の連中はほうきをかき鳴らし
跳ねる! 吠える! 機材(ほうき)を破壊する!
小太りのイワオは その中肉中背の体を左右に細かく
シェイクしてリズムを取りながら (TMN 宇都宮隆の真似)
貫禄たっぷりにToshiばりのハイトーンで 歌う! 揺らす!
時に「気合い入れろーっ!!」と客席を煽る!
5 荒れ狂う野郎共の様を眺めて「Yoshikiーー! 」「 Hideーー!!」
とメンバーの名前を黄色い声で連呼するヤスダ。
ノンストップで息が切れるまで演り続けた後
ゼーゼー良いながら図書室の机の上に寝転び
えも言えぬ爽快感 満足感に包まれながら笑い合うメンバー達
やがて立つであろうステージを想像しながら
俺は 生まれて初めての運命的な快感に身悶えするのであった。
-続く-