第三話 「やっぱこれしかねえ!」
そして俺はと言うと
ヤスダに「バツ」の「ベニ」の正体を教えてもらった後
Xの全CDを借りて朝から晩まで聴いていた。
カウントダウンTVでドラムのYoshikiとヴォーカルのToshiが
「もう二度と届かない この想い」
と一瞬歌ったそれが 俺の心の鐘を特大のハンマーで打ち抜いたのだ。
一番弾かれた原因は、、、
きっとその尋常ではないエネルギーの放出具合である
一打一打を首をちぎれんばかりに振りながら
まるで鬼の様に全力で打つYoshikiと
魂の叫びで命や生の意味を問うToshiの歌、、、
その激しさと共にある どうしようもない切なさ 問いかけ 叫び
家で一人で聴いていて何故か涙が出てくる。
それが不思議に凄く心地よく 自分のまだ言葉にできない想いを
代わりに叫んでくれているような気持ちに 心がぎゅーっとなり
俺の魂はわしづかみにされ揺さぶられたのである。
「いや しょうみXはヤバい ほんまにやばい。
俺エックスみたいなかっこええバンドやりたいわ!」
「え リオちゃんは『ろくでなしBLUES』読んでから
ボクサーになりたい言うてたやん?」
「いや バンドやバンド! これが一番かっこええって!
殴られんのは痛いし! ほんでおまえ
こんなにみんなにキャー!って言われたくね?」
そう ここでりお少年の
「心がぎゅーってくるこの感じが好き!」
「何かでっかい事がしたい!」「目立ちたい!」
「その際に女の子がキャーっとなって欲しい!」
という願望を全て叶え かつ痛くないという理想的な未来が
像を結んだのである。
「日本一かっこいい バンドをつくる!」 少年の夢がその時目覚めたのだ。