小

川隆夫の JAZZ BLOG
Profile

©Kozocom (photo by Shuichi Kasahara)
職業:JAZZジャーナリスト、整形外科医、DJ

ニューヨーク大学の大学院在学中にアート・ブレーキーやマルサリス兄弟など数多くのミュージシャンと知り合う。帰国後、JAZZを中心に約3000本のライナーノーツを手がけると共にJAZZ関連の著書を多数出版。ブルーノートの完全コレクターとしても有名。その他、マイルス・デイヴィスやブルーノートの創始者アルフレッド・ライオンの来日時の主治医を勤めるなど、現役の整形外科医としても第一線で活躍中。

小川隆夫の著書一覧
Link




Topics
最新刊
「ジャズメン、ジャズを聴く」

「証言で綴る日本のジャズ」

「ジャケ裏の真実
ジャズ・ジャイアンツ編」
TALK EVENT■
小川隆夫ONGAKUゼミナール
@銀座le sept
3.19:ジャズメン、ジャズを聴く!


■TALK EVENT■
民音音楽博物館
「3月文化講演会」@神戸
3.26: 関西国際文化センター
コスモホール
TEL: 078-265-6595

詳細やその他ライナーノーツなどは 「Works & Information」へ>>
カテゴリ
最新のコメント
どうも初めまして。 レ..
by 竹田 at 04:38
> 名古屋の正ちゃんさん..
by jazz_ogawa at 15:58
以前は良くお書きになって..
by 名古屋の正ちゃん at 01:42
名古屋の正ちゃん、このコ..
by jazz_ogawa at 15:02
聴きたかったバンド、つい..
by 名古屋の正ちゃん at 18:51
Grecoを購入したとき..
by bjwfan at 21:30
小川さん、お久しぶりです..
by kiku at 11:53
> 名古屋の正ちゃんさん..
by jazz_ogawa at 12:10
久しぶりのブログありがと..
by 名古屋の正ちゃん at 00:11
小川さん、ブログ久しぶり..
by Fujiyama at 17:46
がんばってください♪^^
by yuricoz at 17:26
Fujiyamaさん、あ..
by jazz_ogawa at 20:43
小川さん、東京JAZZカ..
by Fujiyama at 15:11
kentokanpoo..
by jazz_ogawa at 18:02
小川さんの本、早速買って..
by kentokanpoo at 12:30
小松仁さん、いつもありが..
by jazz_ogawa at 12:45
小川さん、今度の新作も読..
by IT起業研究所 小松仁 at 11:21
渡部さん、今年も1回目か..
by jazz_ogawa at 09:32
楽しく参加させていただき..
by 渡部 at 10:48
Fujiyamaさん、コ..
by jazz_ogawa at 18:06
最新のトラックバック
ストックホルムでワルツを
from 雨の日だからジャズでも勉強しよう
New Herd In ..
from 雨の日だからジャズでも勉強しよう
物質文明、情報社会と融合..
from dezire_photo &..
When a Rock ..
from 雨の日だからジャズでも勉強しよう
映画「アンナ・カレーニナ..
from soramove
ONゼミ in 雨ことば..
from 雨の日だからジャズでも勉強しよう
ARGO
from 雨の日だからジャズでも勉強しよう
映画「007 スカイフォ..
from soramove
007 スカイフォール
from 雨の日だからジャズでも勉強しよう
映画「007 スカイフォ..
from soramove
映画「人生の特等席」タイ..
from soramove
クリント・イーストウッド..
from IT起業研究所 ITInvC..
宝物シリーズ♪
from ♪♪♪yuricoz caf..
推理作家ポー 最期の5日間
from 雨の日だからジャズでも勉強しよう
映画「推理作家ポー 最期..
from soramove
映画「ボーン・レガシー ..
from soramove
最強のふたり
from 雨の日だからジャズでも勉強しよう
映画「最強のふたり」毎日..
from soramove
小川隆夫のONGAKUゼ..
from ♪♪♪yuricoz caf..
ONGAKU ゼミナール..
from 雨の日だからジャズでも勉強しよう
以前の記事
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2017年 11月
2016年 12月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 12月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2005年 07月
2005年 06月
検索
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
カテゴリ:ライヴは天国( 361 )
 キース・ジャレットのコンサートは、トリオでもソロでも、いつも聴き手に心地よい緊張感を与えてくれます。昨夜(10月20日)、池袋の東京芸術劇場で聴いた彼のソロ・パフォーマンスも、緊張感の中にぬくもりが感じられる素晴らしい内容でした。

 ビル・エヴァンスと比較されることの多いキースです。しかしキースが決定的に違うのは、同じ美しさでも、エヴァンスの繊細で触れれば冷凍したバラが粉々に砕け散るようなあやうい美しさに対して、強く触れてもびくともしない力強さを伴っている点でしょうか。
 キースのソロ・コンサートは、ほとんど純粋なインプロヴィゼーションです。ときには途切れることなく、1回のステージの中でさまざまな表情を見せながら演奏が進行していきます。しかし今回は1曲が5分前後と、比較的短い曲を各ステージで7~8曲演奏したでしょうか。
 穏やかな表情のもの、激しいパッションを感じさせる演奏。ゴスペル調の曲を演奏したときは、中腰姿勢で足を踏み鳴らし、リズムを取っていました。クラシックに通ずる荘厳な演奏も定番です。万華鏡のように、ひとつひとつの曲が多彩な表情を持っています。
 曲が終わると、ひと呼吸おき、あるいはグラスの水をひとくち飲んで、すぐ次の曲に向かいます。その間に新たな創造の心や力を得るのでしょうか? 曲間のインターヴァルがちょっと短い気もしたのですが、それだけいまのキースは音楽に没頭しているのか、創造性に溢れているのでしょう。
 ただしぼくだけかもしれませんが、その素早い気持ちの転換にときとしてついて行くことができなかったのも事実です。これは否定的な意味ではありません。それだけ、彼とぼくの音楽的なレヴェルが違うことを痛感した次第です。
 その場でキースの素晴らしい音楽に触れていたことは間違いありません。しかし、自分の理解力不足で彼の音楽がリアルタイムでは咀嚼できないもどかしさも同時にひしひしと感じました。音楽の奥深さ、そしてキースの常に前進している姿に、いろいろな意味でショックを受けたのです。

 考えてみると、初来日した1974年以来、ぼくはキースのライヴを30年以上にわたってコンスタントに観てきました。これだけ長い間、平均すれば数年に一度の割合になるかと思いますが、コンスタントにひとりのアーティストを観続けてきた例はあまりありません。
 マイルスにしたって、途中で6年の隠居時代がありますし、多くのアーティストはいつの間にか音沙汰がなくなってしまいました。そんな中で、キースはいつも素晴らしい音楽や演奏を聴かせてくれています。その彼の音楽にこれほど距離感を覚えたことは初めてでした。

 キースの演奏は、明らかにジャズ・クラブや気楽な場所で寛いで聴くジャズとは違います。コンサート・ホールのようなフォーマルな場所で聴く音楽です。一概には言えませんが、ジャズ・クラブで演奏されるものをエンタテインメントとするなら、昨日聴いたキースの演奏はアートに近いものでした。
 言葉で音楽をジャンルわけするのは本意でありません。しかし、例えば「ブルーノート」で聴くハービー・ハンコックやチック・コリアの音楽とはまったく質が違います。エンタテインメントとしてのジャズ。こちらにジャズの本質があるのかもしれません。それに比べると、キースの音楽は本来的なジャズとはかなり異なっています。
 しかしジャズが誕生して100年。この間にさまざまな革命的発展がありました。そして、その中でキースは自分なりに最高の創造性を凝縮させることで独自の音楽を確立したのです。
 帰りに、ぼくはこれまでに聴いたキースのコンサートの数々、そしてさまざまな作品に思いを巡らせていました。とても池袋から田町までの時間では追いかけきれません。それで家に帰ってからも、明け方近くまで彼の作品を聴きながら、いろいろな場面を思い返していました。
 コンサートを聴いて何に触発されたのか。それは自分にもよくわかりません。しかし、これほどそのひとの音楽のことを考えてみたいという衝動にかられたことは滅多にありません。そんな反応を起こした自分にびっくりもしました。

 多分、ぼくは悔しかったのでしょう。そしてそれ以上に嬉しかったのです。キースの音楽についていけなかったことが。40年間本気でジャズを聴いてきても、まだ未知の部分があるということです。
 これが斬新な音楽や突拍子もない方法論で成された演奏なら、これほどの衝撃は受けなかったと思います。そんなものなのね、で終わったかもしれません。ところが、キースはぼくが慣れ親しんできた手法で、こちらの想像をはるかに上回る演奏をしてみせたのです。
 思えば、ニューヨークに住んでみたのも、その直前に菊地雅章とギル・エヴァンスの対談を読んで、彼らの話していることがさっぱり理解できなかったのが発端でした。ニューヨークで彼らが体験していることを知らなければ、ふたりの話は理解できない。そして、ぼくは彼らの話についていけるようになりたかった。それが、いくつかある留学した理由のひとつです。

 いま、ぼくはあのときと似た気持ちを感じています。次にキースがソロ・コンサートをするときまでに、何とか彼のレヴェルに達していたい。しかしキースはさらに先を行っていることでしょう。この追いかけっこを、ぼくはしばらく楽しみたいと思います。
by jazz_ogawa | 2005-10-21 23:33 | ライヴは天国 | Trackback | Comments(0)
 先日観てきたストーンズとポールのセットリストです。忘れないために、ここに記録させておいてください。

e0021965_4552192.jpg それにしても、どちらも昔の曲が多いですね。ポールなんかビートルズ時代の曲が半分くらいありますものね。しかも休憩なしで36曲。いろいろな意味で凄いと思いました。
 だけど、どういうことなんでしょう? これは後ろ向きの姿勢なんでしょうか。しかし、ぼくはこういうレパートリーを聴いて、前向きな気持ちになれました。それは、彼らのパワーとか創造性とか継続性とか、そういうものに触発されたんだと思います。でも、マイルスは最後の最後になるまで過去を振り返りませんでした。そんな彼のライヴに接したときと同種の感動を覚えたぼくの感性は、少しおかしいのかもしれませんね。
 でもいいものはいい。それはどちらにも共通していることです。そこに、感激したり触発されたのかも。自分で自分の気持ちを分析するのは難しいですね。まあ、深く考える必要はないんでしょうが。やっぱり、いいものはいい。それを結論としておきます。

■The Rolling Stones MCI Center, Washington, DC Monday, October 3, 2005
【The set list】
1.Start Me Up
2.You Got Me Rocking
3.She's So Cold
4.Tumbling Dice
5.Rough Justice
6.Back Of My Hand
7.Beast Of Burden
8.Bitch
9.Mr. Pitiful
--- Introductions
10.The Worst (Keith)
11.Infamy (Keith)
12.Miss You (to B-stage)
13.Oh No Not You Again (B-stage)
14.Shattered (B-stage)
15.Honky Tonk Women (to main stage)
16.Sympathy for the Devil
17.It's Only Rock'n Roll
18.Brown Sugar
19.Satisfaction
20.You Can't Always Get What You Want (encore)
21.Jumping Jack Flash (encore)
 楽しめたのは9曲目の「ミスター・ピティフル」。オーティス・レディングのオリジナル・ヴァージョンに近い形のブラス・アンサンブルも最高でした。
 あとは、最後にみんなで挨拶する段になって、チャーリー・ワッツがドラムスのスタンドから降りてステージに向かいながらセーターを着たことが面白かった。汗をかいて着ているものを脱ぐのが普通なのに、このひと、汗をかかないにかしら。


■Paul McCartney Madison Square Garden Tuesday, October 4, 2005
【Pre-show:】
Freelance Hellraiser is the pre-show DJ playing tracks from "Twin Freaks" and a few extras that blends into a 10 minute film by Mark Haefeli that Paul's entire life from childhood right through to this year's Live 8 performance. The film climaxes with the start of the stage show by Paul and the band.

【The set list】
1.Magical Mystery Tour
2.Flaming Pie
3.Jet
4.I'll Get You
5.Drive My Car
6.Till There Was You
7.Let Me Roll It (Foxy Lady jam)
8.Got to Get You In My Life
9.Fine Line
10.Maybe I'm Amazed
11.Long and Winding Road
12.In Spite Of All The Danger
13.I Will
14.Jenny Wren
15.For No One
16.Fixing a Hole
17.English Tea
18.I'll Follow the Sun
19.Follow Me
20.Blackbird
21.Eleanor Rigby
22.Too Many People
23.She Came In Through The Bathroom Window
24.Good Day Sunshine
25.Band on the Run
26.Penny Lane
27.I've Got A Feeling
28.Back in the USSR
29.Hey Jude
30.Live and Let Die
-- 1st Encore --
31.Yesterday
32.Get Back
33.Helter Skelter
-- 2nd Encore --
34.Please Please Me
35.Let it Be
36.Sgt. Pepper's (Reprise) / The End
e0021965_4564492.jpg 2回のアンコールで6曲、しかもすべてビートルズ・ナンバー。そこにポールの思いがあるのかもしれません。
 あと、ぼくがふーんと思ったのは「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」。これ『レット・イット・ビー』のアレンジを用いていました。『ネイキッド』では、オリジナルの形に戻して、あとからダビングしたストリングスを外していたんですが、ポールはやっぱり『レット・イット・ビー』のほうが好きなのね、っていうことでした。まあ、どうでもいいことかもしれませんが。
by jazz_ogawa | 2005-10-13 23:51 | ライヴは天国 | Trackback | Comments(4)
 昨日のストーンズに続いて、今日(4日)はニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでポールのライヴ。8時開始が20分くらい過ぎたところで、まずはDJが登場。20分ほどポールの曲をリミックスしていましたが、ぼくは早くコンサートが始まらないかと気もそぞろ。
 このパートが終わると、今度は生い立ちから現在までをダイジェストした10分くらいのフィルムが流されました。これはスピーディな展開で面白かった。そしてそのフィルムの終了と同時に、吊るされていたカーテンが上がり、「マジカル・ミステリー・ツアー」からコンサートが始まりました。
 この登場の仕方とステージの具合が最高にかっこよかった。ステージは、昨日のストーンズもそうでしたが、いたってシンプル。ほとんどアンプもないし、楽器と言えばピアノやキーボードとドラムスが置かれているくらい。非常にこざっぱりとした印象です。
 感心したのは、かなり高いところから吊るされているカーテンを4メートルくらいしか上げず、残りの部分をスクリーン代わりにして、曲ごとに違った映像やライトを当てていたこと。これがカラフルで、曲や演奏と合っていて、視覚的にも楽しめました。

 「マジカル~」から始まったコンサートは「ジェット」を経てすぐにビートルズの「アイル・ゲット・ユー」になり、そのまま「ドライヴ・マイ・カー」、「ティル・ゼア・ウォズ・ユー」とビートルズ・ナンバーに突入。e0021965_4395068.jpg
 いつものことですが、ビートルズとウイングス時代の曲が大半を占めていて、いまさらながらにいい曲が多いこと、そしてそれらの曲が次から次へと登場してくることで、こちらは感激のため、息も絶え絶えとなってしまいました。
 ぼくの好きな「アイ・ウィル」や「ブラック・バード」もやってくれたし、「バンド・オン・ザ・ラン」とか「死ぬのはやつら」だとかの凝った曲も完璧に聴かせてくれました。あと、今年は初めてアイルランド出身の宇宙飛行士が宇宙に飛び立ったと紹介して、彼女とNASAのやりとりをテープで流してから「グッドデイ・サンシャイン」を演奏した趣向もそれこそグッドでした。このときは、一緒に宇宙に行った野口さんの映像も登場しました。こういうのを外国で観ると、ちょっと誇らしい気分になります。やっぱり日本人なんですね。

 ポールは相変わらず精力的で、休憩を挟まずに2時間半ほどのステージを繰り広げ、アンコールも2回、それも各3曲ずつで、結局コンサートが終了したのは11時半ごろでした。
 最初のアンコールでは「イエスタデイ」、「ゲット・バック」、「ヘルター・スケルター」、そして2回目は「プリーズ・プリーズ・ミー」、「レット・イット・ビー」、「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハート・クラブ・バンド」と『アビー・ロード』B面のメドレーの後半部を繋げて、怒涛のエンディングでした。e0021965_4401045.jpg
  2日間にわたって凄いコンサートを観させてもらったものです。ミックは不良少年がそのまま大人になった感じで、ポールは昔の不良がいまは分別をわきまえた大人になった感じとでも言えばいいでしょうか。これはあくまでぼくのイメージです。
e0021965_4412331.jpg 実際のミックは、ビジネスマンとしても有能で、ストーンズのビジネスはすべてきちんと仕切っているそうですし、体調の維持とか自己管理もしっかりとやっているという話です。もちろんポールだって、ただの才能に溢れたひととは違います。40年以上にわたって世界中のひとに愛されてきた歌の数々を作り続けることは、才能があるだけでは絶対にできません。
 ミック(だけじゃなくてストーンズのメンバー全員)とポール。まったく好対照の大人になったふたりですが、ぼくはどちらにも強い憧れを抱いています。憧れとは、ただ好きなだけじゃなくて、そのひとの人生感とか生き方に少しでも近づきたいと思うことじゃないでしょうか?
 絶対に彼らのようにはなれませんが、何かひとつでも彼らに通じるものが自分にも身につけばいいなぁ(それが何かは内緒です)なんて思っています。ほかにも憧れているひとはいろいろいるんですが、そういうひとが沢山いるっていうのは幸せなことです。いい年をしてちょっと恥ずかしいとも思いますが。
 今日はコンサートが終わってからそんなことを考えていました。

※ ポールマッカートニー情報はこちらから
※ ポールマッカートニーの楽曲試聴&DLはこちらから
by jazz_ogawa | 2005-10-05 16:10 | ライヴは天国 | Trackback | Comments(7)
 改めてそう思いました、ローリング・ストーンズのライヴを観て。今回はこれまでのツアーよりステージのセッティングが断然シンプルで(大会場ではなくて2万人規模のアリーナだったせいかも?)、大仕掛けの装置がない分、ロックンロール・バンドとしての魅力が楽しめました。これ、ロックではなくて、ロックンロールというところが重要です。
e0021965_4355157.jpg それにしてもこのひとたちは凄い。年齢をまったく感じさせないこともさることながら、「サティスファクション」でも「ホンキー・トンク・ウーマン」でも、あるいは最新シングルの「ラフ・ジャスティス」でも、まったく同じ感覚のロックンロールになっていることに、その凄さと素晴らしさを味わいました。
 古いと言えば古い。けれど、新しいと言えば新しいとも言える普遍性。こんな音楽を聴かせてくれるバンドはほかにいません。それは当たり前の話で、40年以上も常に最前線に位置してきたロック・バンドがほかにいないからです。
 「スタート・ミー・アップ」から始まったコンサートは、アンコールの2曲も入れて2時間くらいでした。これまでのツアーが2時間半くらいやっていたことを考えればちょっと短くなりましたが、そもそも2時間半というのはぼくの感覚からすれば長すぎるので、ちょうどいい感じになった気がします。1曲の時間も短くなっていたと思いますし、その分、曲ごとの密度が濃いコンサートでした。e0021965_436616.jpg
 ストーンズのコンサートに行くといつも思うのが、同世代のひとが多いこと。今回も周りの多くはぼくの世代でした。あとは、子供も連れて一家で来ているひともいましたね。それで「ホンキー・トンク・ウーマン」とか「サティスファクション」では大合唱になります。昔はストーンズも彼らも不良だったはず(?)なのに、みんないい大人になったものです。
 音楽についてああだこうだと言うのも好きなんですが、こういうコンサートに行ったときは単純にみんなでその時間を楽しむのが一番。ストーンズの元気さ、とくにミックの若さにぼくも触発されて帰ってきました。ワシントンDCまで行ったかいがあるというものです。
 こういう幸福感って、やはり音楽が好きなひとにしかわかってもらえないんでしょうね。サッカー・ファンが何を差し置いてもワールド・カップを観に行くのと同じだと思います。だから、あと何回、彼らのコンサートが観られるのか。こちらも年ですし、あちらも年です。もちろん、ぼくもストーンズも(多分)若いつもりではいるんですが。来年は日本にも来ると思いますが、それ以外の場所でももう1回は観たいところです。
 てなことを書いていたら、日にちは10月4日に変わっていました。今日は昼ごろにニューヨークに戻り、夜はマジソン・スクエア・ガーデンでポール・マッカートニーのコンサートに行きます。ストーンズと元ビートルのはしご。こんなタイミングで両方が観られることなんかないので、無理をしました。われながら贅沢しているなぁ。
 ほとんどのひとは聴いていないと思いますが、ついでなので書いておきます。日本ではあと10何時間後かな? 5日(水)の午前7時20分過ぎからInter FM「赤坂泰彦のOne On One」で、ストーンズのライヴについてニューヨークから国際電話で話をします。もしそのころに起きていて、興味がある方は聴いてみてください。それより、このブログをどのくらいのひとが読んでくれているのか、はなはだ自信がないのですが。 

※ ストーンズ情報はこちらから
※ ストーンズの楽曲試聴&DLはこちらから
by jazz_ogawa | 2005-10-04 14:01 | ライヴは天国 | Trackback(1) | Comments(5)
 ここ数年、日本では素晴らしいピアニストが何人か登場してきました。この間の「東京JAZZ 2005」に出演した山中千尋、アメリカのテラークというジャズの世界ではたいしたレーベルからデビューした上原ひろみ、そしてもっと凄いレーベルのブルーノートからアルバムが全米発売された松永貴志。

 中でも松永さんはデビュー直前に紹介されて以来、何かと注目してきました。何しろ最初に演奏を聴いたときで彼は17歳だったのです。ぼくの子供より若い松永さんの屈託のなさ(ぼくは彼の父親よりはるかに年上、のはず)にまずはびっくりし、ひと懐っこい性格に微笑ましいものを強く感じました。
 しかし、ピアノを弾き始めたらそこには紛れもない天才がいたのです。聞けば、ジャズを本格的に始めてからまだ数年だというではありませんか。年齢を考えれば当然のことなんですが、その時点でジャズの歴史の何10年分かの要素を、彼は本能的に消化・吸収していたのだと思います。e0021965_10355297.jpg
 驚かされたのは、聴くたびに松永さんの演奏や音楽性が着実に成長していたことです。多分、最初はモード・イディオムなんかも知らなかったと思います。だから、初めて聴いたときの印象はバド・パウエルの現代版のような感じでした。それだって十分に凄すぎるのですが、その後にモード・イディオムはもちろんのこと、ジャズのさまざまな手法を彼は自分なりに身につけていったのでしょう。
 成長途上の若いミュージシャンの姿に接することができるのも、音楽を聴く上で楽しみのひとつです。松永さんと知り合って2年と少しです。つまり彼はまだ19歳。この若さは何よりの武器であり宝だと思います。それと持って生まれたオープン・マインドな姿勢で、昨日はこれまでで最高の演奏を聴かせてもらいました。

 勝どきの「第一生命ホール」は初めて足を向ける会場でした。クラシックの小ぶりなホールです。現在、松永貴志NYトリオは国内ツアーの真っ最中。東京公演はここだけというので、何はともあれ駆けつけました。メンバーは、昨年のニューヨーク・レコーディングで共演したウゴナ・オケグォ(ベース)とエリック・ハーランド(ドラムス)という面々。e0021965_10373442.jpg
 すでにツアーも中盤に差し掛かっているので、3人の呼吸もぴったりでした。それで1曲目の「ジャイアント・ステップス」から物凄い勢いで演奏はスタートしました。「ジャイアント・ステップス」はジョン・コルトレーンのオリジナルで、多くのひとがレパートリーにしていますが、この松永ヴァージョンは中でもトップ・クラスの出来映えでした。
 何が素晴らしいかと言えば、その発展性です。次の展開がどうなるのかわからない意外性。そこに彼の性格同様、奔放な発想が認められました。きっと、自分の考えていることが、素直に10本の指で表現できるんでしょうね。これは大変な資質です。
 前半は他人の曲が多く、後半はオリジナルという構成です。松永さんの演奏はどれも力強くてリズミック。その中で、出身地をテーマにした「KOBE」の美しい響きも傑出していました。パーカッシヴなタッチからしばし離れての印象的なフレーズ。美しいメロディを積み重ねていく彼のプレイに、聴いているこちらもおおいにリラックスできました。
 コンサート終了後は、すぐにロビーに出てきてサイン会です。そうしたファンを大切にする姿勢も嬉しく思いました。その後、本当は打ち上げのパーティがあったのですが、ぼくは体のこともあるので失礼しました。松永さん、ごめんね。

 いいコンサートを聴いたあとは、いつもそうなんですが、ほのぼのとした気持ちになります。そのほのぼの感が、興奮した気持ちに沈静効果があるのでしょう。
 これって、凄いコンサートとはニュアンスが違うんですね。凄いコンサートのときは家に帰ってからもテンションの高まりがなかなか収まらないんですが、いいコンサートのときは穏やかになれます。最近のぼくは、どちらかと言えば穏やかでいたいモードに入っているので、松永さんのコンサートが聴けて本当によかったと思っています。
 なお、「オープン・マインド」とは、彼が作曲して演奏も担当しているテレビ朝日系「報道ステーション」のテーマ曲です。上に紹介した『TODAY』というアルバムで聴けます。ちなみに、最初のジャケット写真は17歳のときに吹き込んだデビュー作の『TAKASHI』です。あともう1枚、2枚目の『MOKO MOKO』というアルバム(これがブルーノートから全米発売されました)があります。なお、このツアー終了後に同じトリオで4枚目のレコーディングをして、来年早々に発売とのことです。
by jazz_ogawa | 2005-09-23 10:58 | ライヴは天国 | Trackback(1) | Comments(4)
 ハリケン・カトリーナがニューオリンズを直撃してからまだ3週間くらいしか経っていないのに、ニューオリンズ出身のドクター・ジョンのステージを観るのはちょっと複雑な気持ちです。独特のだみ声とニューオリンズ・スタイルのピアノが大好きなぼくとしては、落ち込んでいなければいいなぁと思いながら「ブルーノート東京」に向かいました。
 ところがこちらの心配をよそに、ドクター・ジョンは元気一杯、いつも通りのご機嫌なステージを聴かせてくれました。バックはギタ~エレクトリック・ベース~ドラムスの3人と、いたってシンプル。全員がニューオリンズ出身で、ベースとドラムスはダウンタウン(黒人)、ギターはアップタウン(白人)出身とのこと。うーん、ちゃんと住み分けができているんですね。と、感心しながらも、みんな大丈夫だったのかなと、ちょっと気になりました。
 そう言えば、いつもよりニューオリンズがテーマの曲を多くやっていたように思いましたが、こちらの勘ぐりでしょうか? 定番の「アイコ・アイコ」は歌わず終いでしたが、ハモンドB-3を弾きながらデューク・エリントンの「スイングしなけりゃ意味ないね」をファンク風に料理してみせたあたりにニヤリとさせられました。

 ちょっとぶっきら棒な印象のドクター・ジョンですが、実際は気さくなひとです。ぼくは10年くらい前に一度だけインタビューをしたことがあるのですが、そのときもとてもいい感じでした。見た目からはわかりませんが、このひと結構茶目っ気があって、お姉さん子で、甘えん坊のようでした(ぼくより年上のひとに向かって甘えん坊はありませんが)。
 曰く、「ドクター・ジョンというのは姉の命名」、「ニューオリンズを出てロスに言ったのは姉が住んでいたから」などなど、お姉さんあってのドクター・ジョンなんですね。独特の衣装もお姉さんのアイディアだそうです。この日も、ピアノの上に小ぶりの骸骨を乗せていましたが、これもお姉さんからのプレゼントだったはずです。
 そもそもドクター・ジョンとはどういう意味なんでしょうか? そのことも聞いてみました。ニューオリンズには古くからヴゥードゥー教という密教が伝わっています。本人はヴードゥ経とは無関係ですが、その教祖で秘薬の使い手(メディシン・マン)というコンセプトから、こういう名前と衣装になったそうです。

e0021965_421887.jpg ぼくはドクター・ジョンになる前の、マック・レヴェナックという本名で活躍していたころからのファンです。16歳でスタジオ・ミュージシャンになった彼は、ニューオリンズのブルースやR&B系アーティストのレコーディングにいろいろと参加していました。独特のピアノ・スタイルは、ニューオリンズ・ピアノの大御所プロフェッショナル・ロングヘアー譲りです。
 このピアノが大好きで、彼のソロ・ピアノ集『ドクター・ジョン・プレイズ・マック・レベナック』はいまも愛聴盤の1枚です。
そして最近のお気に入りは、昨年発表した『ニューオリンズ』です。この中の「セント・ジェームス病院」は、ドクター・ジョンのブルージーでジャジーなスタイルが最高の形で花開いた傑作と思っています。

e0021965_424388.jpg ニューオリンズの災害で、彼も多くのものを失ったり強いショックを受けたことでしょう。しかしそんなことは微塵も感じさせない力強いパフォーマンスを目の前にして、ぼくなりにさまざまな思いが胸の中を去来しました。まさに「カトリーナをぶっ飛ばせ」です。そしてドクター・ジョンのステージは、これまでに何度か観た中でもっとも感動的なものでした。音楽にはさまざまな力が宿っていることを改めて実感した次第です。

追伸:そうそう、明日と言っても、もう今日ですが、朝のInter-FMでもカトリーナ関係の話をします。多分7時20分過ぎに登場します。ほとんどのひとは聞いていないと思いますが、チャンスがあったら76.1まで周波数を合わせてみてください。
by jazz_ogawa | 2005-09-21 00:02 | ライヴは天国 | Trackback | Comments(2)
 その昔、米軍ハウスに本気で住みたいと思っていた時期があります。もう米軍ハウスなんて知らないひとのほうが多いと思いますが、狭山や福生などの米軍基地に勤務する士官クラスのひとたちが住んでいた家のことです。
 それがあるとき、日本人に売り出されたり、貸し出されたりするようになりました。そこは、中学生のころに『サンセット77』だとか『カレン』なんかで観て憧れたアメリカの家そのものでした。本気で大学の友人4人と借りようと思い、福生まで観に行ったほどです。しかし修理が必要だったり、予算が合わなかったり、そして一番のネックが大学に遠かったりで、諦めざるを得なかったのです。

 なぜそこに住みたかったのかと言えば、それはアメリカへの憧れと共に、多くのミュージシャンが住んでいたからです。細野晴臣、大瀧詠一、麻田浩、南正人といったひとたちが、そこから新しい音楽を発信していました。いっぱしのミュージシャン気取りだったぼくもそこに住んでみたい──根が単純なもので、そう思っていた次第です。
 でも、憧れから何かが始まることだってあります。もしあのとき米軍ハウスに住んでいたら、いまごろ何をしていたかなぁ、なんて思っています。

 そして近くに狭山の米軍ハウスがあった稲荷山公園で、昨日(9月3日)と今日、「Hyde Park Music Festival 2005」が開催されました。狭山にはジョンソン基地があり、そこの米軍ハウスには細野晴臣をはじめいろいろなひとが住んでいました。そのひとたちが中心になって、とても懐かしい、そして当時非常に刺激を受けたミュージシャンたちによるフェスティヴァルが行なわれました。
 ロック・フェスティヴァルなんて、どれくらい久しぶりなんでしょう。覚えていないくらいだから、相当に久しぶりだったことは確かです。40分ずつのステージで、フェスティヴァルは1時から9時まで、ぼくは初日の2時過ぎごろから8時近くまで会場にいました。
 西武池袋線の稲荷山公園駅から徒歩1分というのがいいです。駅前の公園が会場です。そんなに広くない場所に、どのくらいのひとが集まっていたでしょうか? 1000人はいなかったかもしれません。でもこのくらいがほどよくて、会場には和やかな空気が流れていました。

 ぼくが着いたときはテキーラ・サーキットという3人組が出演中で、カントリーにソウルっぽい味わいが加わったいい感じのコーラスを聴かせていました。彼らもそうですが、フェスティヴァルに出演しているアーティストの大半はぼくと同世代かほんの少し年上のひとたちです。
e0021965_3354061.jpg いまだにかっこのよさを失っていない鈴木茂や、声だけを聴いていれば永遠の少年を思わせる(みかけはふつうのおっさんになっています、ごめんなさい)を保っているブレッド&バター、高校の先輩でもある森山良子、小気味のいいカントリー・ロックを聴かせてくれたセンチメンタル・シティ・ロマンス、そして去年は下北e0021965_337116.jpg沢のライヴ・ハウスまで聴きにいったラリーパパ&カーネギーママ(このグループは若いです)がバックを務めたマーク・ベノ(これまた普通のおっさんになっていたところが寂しくも嬉しい)。                  
 目当てはこのマーク・ベノです。その昔、散々聴いたのがレオン・ラッセルと組んで吹き込んだ『アサイラム・コワイアII』というアルバム。ジャケットの右側がマークですが、何と普通のひとになってしまったことか。e0021965_3411835.jpg

 でも、それでいいではありませんか。ローリング・ストーンズのようにいまだにロック・スターのオーラを発しているひとも凄いですが、年齢を重ねるにつれて若いときのとんがりがなくなって、いい雰囲気で好きな音楽をマイ・ペースでやっているアーティストっていうのも大好きです。そんなひとたちのオンパレードになっていたのがこのフェスティヴァルでした。

 小坂忠のステージを観ないで帰ってきたのが心残りでしたが、その思いは来年のフェスティヴァルまで稲荷山公園に置いておきます。年を取るのっていやだなぁと思うことが多い昨今ですが、昨日は久しぶりに年を取るのっていいなぁと思えた1日でした。
e0021965_3435873.jpg      














           マーク・ベノと
by jazz_ogawa | 2005-09-04 23:44 | ライヴは天国 | Trackback(2) | Comments(5)
 今日は珍しくクラシックのコンサートに行ってきました。と言っても、以前このブログで紹介したクリヤ・マコトさんが絡んでいたからなんですが。コンサートは『山田耕筰・新たな展開 第5回~ニュー・コラボレーション・タイムII」(紀尾井ホール)というもの。山田耕筰が書いた曲の数々を、ジャズとクラシックのひとたちがそれぞれのスタイルで演奏しようという企画です。
 出演したのは、クラシック畑から平野公崇(サックス)、和谷泰扶(ハーモニカ)、小森邦彦(マリンバ)、宣谷亮一(パーカッション)、ジャズ畑からクリヤ・マコト(ピアノ)、早川哲也(ベース)の面々。彼らがさまざまな組み合わせで、「箱根八里は」、「この道」、「待ちぼうけ」、「あわて床屋」、「赤とんぼ」、「鐘が鳴ります」といった懐かしい曲を、個性的なアレンジやアプローチで聴かせてくれました。
 子供のころに散々歌ったうたが、メロディもわからないほどデフォルメされていたり、かと言えばメロディに忠実だったりと、山田耕筰の書いた曲からいろいろな可能性を引き出してみせたことに、感心しきりの2時間でした。印象に残ったのは、ハーモニカの音色が郷愁を誘う「赤とんぼ」、フリー・ジャズもびっくりの平野さんフィーチャー(アレンジも)の「曼珠沙華(ひがんばな)」、全員で演奏した「ペチカ」です。

 ぼくは何年か前に平野さんのアルバムをプロデュースしたことがあって、そのときに共演をお願いしたのがクリヤさんでした。平野さんにとっては2枚目のアルバムで、ジャズのミュージシャンと共演したいという希望から、ぼくのところに話が回ってきたのです。
 平野さんの演奏を聴いて、まっさきに思い浮かんだのがクリヤさんでした。ありきたりのリズム・セクションを平野さんにぶつけても面白くありません。平野さんはまともな(?)ジャズ・アルバムを作るつもりでいたのかもしれませんが、ぼくに頼んだのが運の尽きでした。
 そもそも平野さんはパリの音楽院で即興演奏を学んできたひとです。それなら即興演奏で勝負してもらおう、と思った次第です。ですから、当然ありきたりのリズム・セクションを集めても意味がありません。クリヤさんの幅広い音楽性なら、平野さんからさまざまな持ち味を引き出してもらえるのでは? と考えたのです。

 何度もクリヤさんのお宅で打ち合わせをしたことも懐かしいですね。平野さんは、ジャズのひとたちと本当に一緒に演奏できるのか、随分不安だったようです。でも、最初は打ち合わせだけ。クリヤさんもピアノなど弾きません。徹底的にふたりが考えていることをぶつけ合うことでイメージを膨らませていきました。その間に、平野さんは不安もあったのでしょうが、段々と覚悟ができてきたようです。
 そう、ぼくが平野さんに持ってほしかったのが覚悟でした。それも、「自分のスタイルでいくぞ」という覚悟です。ジャズを演奏したって面白くないことは最初からわかっていました。まったくバックグラウンドが違う音楽家の出会いに妥協はいけません。それを言葉で納得するのではなく、覚悟として心に刻み込んでほしかったのです。
 そして初めてのリハーサルで、それまでの思いを平野さんはいっきに爆発させてくれました。これを聴いて、レコーディングは絶対に上手くいくと思ったのはクリヤさんとぼくです。平野さんはまだ不安な様子でしたが、手ごたえは強く感じたみたいでした。
 平野さんもクリヤさんも創造的な音楽家ですから、レコーディングは納得が行くまで徹底的にやりました。そして完成したのが『ジュラシック』と題されたアルバムでした。

e0021965_1102381.jpg 『ジュラシック』とはジャズとクラシックを掛け合わせた平野さんの造語です。そして、これを機に、平野さんはジャズのフィールドにも進出するようになり、クリヤさんともたびたび共演してきました。

 ぼくは不義理をして、平野さんの演奏は今日が久しぶりでした。以前に比べると、音色に艶がでてきたようです。フレーズもゆったりとして余裕が感じられました。数年の間に一段と素晴らしいサックス奏者になったようです。よかった、よかった。
 ぼくはふたりの出会いをセッティングしただけですが、いい形で共演を育んできた姿を見るのは何とも嬉しいことです。ステージ上のふたりも楽しんでいる様子で、観ているこちらも嬉しくなってきました。

 その余韻に浸りながらこの文章を書いていますが、明日は埼玉県の狭山だったかな? で開催されるロック・フェスティヴァル「Hyde Park Festival」に行ってきます。こちらには懐かしの面々も沢山でるので、しばらく前から楽しみにしていたものです。このフェスティヴァルの様子も次に報告しますね。
 
by jazz_ogawa | 2005-09-03 01:14 | ライヴは天国 | Trackback | Comments(5)
 久々に矢野顕子のライヴに行ってきました。「ブルーノート東京」のステージには、ピアノとシンセサイザー、それにベース・アンプとドラム・セットがあるだけ。そこにアッコちゃんの登場です。
 相変わらずの浮遊感に溢れたヴォーカルは、こちらと思えばまたあちらと変幻自在。こんな歌がうたえるひとは、世界を見回してもいないでしょう。
 いつもはむっつりしていて、怒っているのか機嫌が悪いのか、そんな雰囲気ぷんぷんのアンソニー・ジャクソンが珍しくにっこりする場面も。彼とは、その昔、デニス・チェンバースの作品をプロデュースしたときにお願いしたことがあるんですが、そのときも「ひとを寄せないもんね光線」を放っていました。ミュージシャンも腫れ物(者?)に触るように気を使っていたんですが、実は照れ屋さん、マイルスと同じです。
 ドラムスはくるりと一緒に今年のフジ・ロックにも出たクリフ・アーモンド。

 アッコちゃんの歌と曲を聴いていつも思い浮かぶのは服部良一です。モダンな響きの中に日本的なものがたっぷりと詰め込まれた歌の数々。現代性と郷愁が織り交ざった世界とでも言えばいいでしょうか。
 ちょっと国籍不明のところもあるけれど、やっぱり日本の情緒が歌詞にもメロディにも滲み出ています。ニューヨークに住んでいても変わらないんだなぁと、ちょっと安心したり、それでいて変わってくれたら面白いのに(実際はサウンド面などで変わっていますが)と思ったりするぼくでした。
 それで久々なんですが、彼女が88年に発表した『ウェルカム・バック』を家に帰って聴いてみました。これはジャズ・ファンもびっくりのアルバムです。
 パット・メセニー、ウォレス・ルーニー、チャーリー・ヘイデン、ピーター・アースキン、アンソニー・ジャクソン、ジョン・クラークといったジャズ・ミュージシャンがバックについているからです。そのほかに坂本龍一や大村憲司も加わっていますが。
 これが滅法面白くて、ひところはよく聴いていました。久々に聴く『ウェルカム・バック』は、今晩のアッコちゃんの奔放な歌に通じるものでした。
 錚々たるジャズ・ミュージシャンたちも、彼女のヴォーカルと同じで自由自在。ジャズを演奏しているときより生き生きとしているようで、これじゃぁぼくとしては困るんですが、それも許しちゃえという気持ちになるほどです。
e0021965_2351326.gif
 アッコちゃんもジャズ・ミュージシャンが好きなんだ、そう思ったのがこのアルバムを聴いたときでした。そう言えば、パット・メセニーの『レター・フロム・ホーム』のライナーノーツはユーミンが書いていたことを思い出しました。彼女もパットのファンだったんですね。
 異色のライナーノーツと言えば、ソニー・クリスの『アップ・アップ・アンド・アウェイ』は村上春樹が書いていました。彼は作家になる前、千駄ヶ谷あたりでジャズ喫茶をやっていたという話をどこかで聞いたことがあります。
 なんだか話が脱線してしまいましたが、きりがないので今晩はここまで。

e0021965_23522179.jpge0021965_23524339.jpg
by jazz_ogawa | 2005-08-16 23:59 | ライヴは天国 | Trackback(1) | Comments(9)
e0021965_0585626.jpg 行ってきました、「ブルーノート東京」のセルジオ・メンデス&ブラジル2005(8月9日)。ぼくがジャズにはまったのは、中学のときに聴いた『ゲッツ=ジルベルト』。これでボサノヴァが好きになって、その後にジャズへと流れていったんですね。その途中で出会ったのがセルジオ・メンデス&ブラジル66の「マシュ・ケ・ナダ」。高校のときでした。随分聴いたなぁ。
 それで彼らのレコードが欲しくなり、買ったのが『分岐点』というアルバム。e0021965_0571597.jpg「マシュ・ケ・ナダ」が入った1枚目を買ったつもりが、間違って2枚目を買ってしまいました。最後まで聴いても「マシュ・ケ・ナダ」は出てこない。当たり前です。でも、このアルバムにもはまりました。 









 「コンスタント・レイン」がとにかくかっこよかった。ヴォーカルのラニ・ホールも魅力的なお姉さんという感じで憧れました。そんなこんなんでブラジル66が大好きになって、70年の大阪万博で初来日したときは、万博の会場まで観に行った記憶があります。e0021965_10251.jpg
 このときは、フィフス・ディメンションのコンサートにも行って、こっちもよかったし、ぼくも大学に入った年だったんで、いろいろハッピーでした。大阪の街で映画の『M*A*S*H』も観たんじゃなかったっけ? 医学部の1年生になったばかりのぼくには、不思議と眩しい映画でした。あんな医者にはなっちゃいけないのかもしれないけど、なってみたい。これは怖いものみたさに通じる感覚でしょうか?

 さて、セルジオさんです。ぼくは6年ほど前に「ブルーノート東京」で彼にインタビューをしました。そのときに一番印象に残った言葉です。
 「わたしはブラジルからアメリカに移り、素晴らしい人生を過してきました。ですから両方の国が故郷です。それで自分に何が出来るかを考えたとき、浮かんだのが、ブラジルの音楽にアメリカの音楽を掛け合わせることでした。それが、自分でも思わぬほどの成功を収めました。ですから、その気持ちを忘れずに、いまも両方の音楽をブレンドすることで自分ならではのサウンドをクリエイトしたいと願っているんです」
 何とも模範解答ですが、このときのセルジオさんの目は真剣そのものでした。それで、ぼくはますます彼のことが好きになったんです。

 「ブルーノート東京」からの帰りは、家までウォーキングです。約50分。iPODに入れた『分岐点』を聴きながら、少し涼しくなった夜風が気持ちよくて、高校や大学時代のことなんかを思い出しながら歩きました。
 青春時代にわくわくして聴いたブラジル66。ですが、いまのぼくには洒落たムード・ミュージックのようにも聴こえます。そんな風に彼らの音楽を捉えることができるようになったぼくも、少しは成長したのかしら?
by jazz_ogawa | 2005-08-10 23:16 | ライヴは天国 | Trackback(3) | Comments(6)
当サイトに掲載されている記事および写真の無断複写 、 転載等の利用・使用はお断りします。
Copyright ©1997-2008 Excite Japan Co.,Ltd. All Rights Reserved.

免責事項
- ヘルプ - エキサイトをスタートページに | BB.excite | Woman.excite | エキサイト ホーム