このところもっぱら音楽はクラシックを聴いていますが、それだけじゃ気がすまないのがぼくです。そういうわけで、数日前のことですが待ちに待ったボックスが届きました。小坂忠さんの10枚組です。
構成は、過去に出したCD7枚に、レア・トラックス集+DVD2枚というもの。7枚のCDはすべてLPとCDで持っているんですが、紙ジャケット化は初めてなので(たぶん)、これはこれで買うべきものでした。DVDは、ぼくも観にいった2001年のコンサート映像と、75年のテレビ番組など、こちらは初DVD化だと思います。
このボックスは、久々に出る新譜『コネクテッド』と合わせてのものでした。小坂さんも早いもので、今年でデビュー42周年、還暦だそうです。エイプリル・フールで聴いたのが最初ですか。このグループがやがてはっぴいえんどに発展します。
最初、小坂さんもはっぴいえんどに入る予定でしたが、彼は日本版の『ヘアー』に出演するため、単独行動を取ります。ぼくは浪人中に渋谷の「東横劇場」で初日の『ヘアー』を見ました。期待したような騒動は起こらず、ちょっとがっかりしましたが。
買ったのは初版限定のCD+DVDのセットです。レーベルやその他のデザインがアトランテック・レコードのパロディになっていました。というのも、小坂さんのヴォーカルがアトランティック系のR&Bみたいだからです。
昔出した『ほうろう』が、ぼくは日本で出た最高のソウル・アルバムだと思っています。その再現みたいなこの新作は、早くもiPodで何度も聴く1枚になりました。それで、4月にアルバムの発売に合わせて「ビルボード東京」でライヴをやるみたいなので、これには行きたいなぁと思っています。
はっぴいえんどとくれば和幸の『ひっぴいえんど』もよかったです。これについてはコンサートの紹介もこのブログでしましたね。その和幸の新作『ひっぴいえんど』にも入っていたのがムッシュの「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」です。和幸のアルバムにはムッシュ本人も登場します。この歌、最初に聴いたときはピンとこなかったのですが、何度もムッシュがセルフ・カヴァーしているうちに好きになってきました。
それでこのアルバムですが、こちらはムッシュが70歳になったことを記念して吹き込んだものです。それにしても恐るべし70歳! ミックもキースもクラプトンもロッドも超えています。年齢だけじゃなくて、その飄々としたロッカーぶりがお見事で、ほんと羨ましくなってしまいます。こういう歳のとり方、したいものです。
ムッシュといえば、何年か前にテレビで加賀まりこさんとお話をしていました。六本木にあった「キャンティ」の話で盛り上がっていたのですが、ああいう感じで昔話ができる大人の男と女っていいなと思ったものです。若いころ、一緒に遊んだ仲間と昔の思い出話に花を咲かせる。それって、いまも充実しているからそういう話が楽しめるんでしょうね。
おふたりほどではありませんが、ぼくも最近は高校時代の仲間とときどきは会って、昔話に花を咲かせています。これが楽しくて、時の経つのを忘れます。
ぼくなんか、高校時代の記憶の一部が飛んでいて、みんなで夏休みに行った旅行のことが完全に頭から消えています。そのときに「小川はあんなことやった」「こんなこといってた」といわれると、自覚がないだけにちょっと怖いです。どんな自分がそこにはいたんでしょう。
でも当時は子供だったし、友人とはそんなに深い話なんかほとんどしていません。あれから40年が過ぎて、みんなそれぞれの人生を送ってきたあとで再会すると、面白いです。いろんなことが話せますから。
当時は思っていたけれど恥ずかしくていえなかったことやなんかも本音で話すことができる楽しさ。あと何年くらいこういう集まりが続けられるかわかりませんが、続けられるうちはそうやって彼らとときどきは会いたいと思っています。
話が脱線しました。最後は斉藤哲夫さん。彼もデビューしたころから聴いてきたひとりです。最近はめったにCDを出さなかったんですが、久々にメジャー・レーベルから新作が登場しました。
これもムッシュと同じでセルフ・カヴァー中心ですが、若いころに歌ったうたを何十年か過ぎてもきちんと歌えるっていいな、と思います。だって、ぼくが昔作った歌なんて恥ずかしくていまじゃ絶対に歌えませんから。
斉藤さんのアルバムでは、昔の作品も2枚も初CD化されました。LPの溝が磨り減るまで聴いたのでこのCD化はありがたいですね。
ここに紹介したアルバム、みんなメジャー・レーベルからの発売です。それぞれが40年ほど活動してきて、いまも才能を枯れさせずにそれぞれのスタンスできちんと自分の歌を歌っている。歌いたくても歌える場がなかったり、才能があってもそれを表現できる場がなかったり、チャンスに恵まれなかったり。それぞれに雌伏の時代はあったと思いますが、継続の重みっていうのはときにそういう不条理を凌駕することがあるんですね。
ぼくも途中で諦めずに続けてよかったと思うことがしばしばあります。やっぱり自分の夢や希望を諦めないこと、捨てないこと、それが大切なんだとつくづく思うようなりました。夢や希望って、諦めたら、そこで夢や希望じゃなくなってしまいますものね。