今日はヴァレンタイン・デイですが、男性のみなさんはチョコレート、もらいました? ぼくは、ウーン、どうでしょうか(笑)。
10日のことですが、青山にあるクラブ「Velours」で開かれたブルーノート創立70周年記念のパーティに行ってきました。
【INVITATION】
祝!! ブルーノート・レーベル創立70周年!!
アニバーサリーを記念した限定プレミアム・パーティーへご招待!!
日本を代表するクラブ・ジャズ・バンド=クオシモードがブルーノートの名曲をカヴァーするスペシャルLIVEセットをお披露目します!!
2009年、ジャズの名門ブルーノート・レーベルがめでたく70周年を迎えました。創設者アルフレッド・ライオンがこだわり続けた洗練されたサウンド、アートワーク、スタイルは、今でも“CLUB”という若い世代のダンス・ミュージックのシーンで大きな影響を与えています。そんなシーンを代表するDJ/アーティストを招き、プレミアムな70周年パーティーを開催いたします。
出演:SPECIAL LIVE:quasimode(クオシモード)
DJ:沖野修也、須永辰緒、MURO
レコード会社から声をかけてもらったこのパーティはJ-WAVEのリスナーを対象にしたものです。なんでも抽選で25組50名が招待されたとか。応募総数は1300以上あったそうです。
ブルーノートの創立記念パーティといえば、20年前の1989年1月6日にニューヨークで開かれたときも参加しました。あのときはルー・ロウルズ、ダイアン・リーヴス、アンドリュー・ヒルとかが、会場の「バードランド」でパフォーマンスを聴かせてくれましたっけ。その日は大雪で、翌日帰国する予定だったぼくが「飛行機、飛ぶかなぁ」と心配していたら、隣にいたジャッキー・マクリーン夫妻が口を揃えて「明日は明日よ」と、慰めなのかなんなのかわからない言葉をかけてくれました。
パーティ終了後、まだイースト・ハウストンにあった「ニッティング・ファクトリー」でデヴィッド・マレイのインタヴューをしましたが、そのときに彼の口から天皇陛下崩御の知らせを受けたことも鮮烈な思い出です。そのあとは、わざわざこの日のためにサンディエゴから出てきたルース・ライオンとミッドタウンのレストランで夕食をして、アルフレッド・ライオンの最後の日々についていろいろ聞かせてもらいました。みんな、いまとなっては懐かしい思い出です。
しかし、ジャズは思い出の彼方に押しやるほどヤワな音楽じゃありません。ブルーノートはいまも進化を続けています。その象徴がクオシモードです。ぼくは、彼らのライヴがなにより聴きたくてパーティに出席しました。
このグループが1月にブルーノートから出した『モード・オブ・ブルー』がとにかく素晴らしかったからです。ブルーノートの名曲、それも隠れた名曲にスポットライトをあてたレパートリーを演奏したのがこの作品でした。それがかっこよくて、ぼくはすっかりノックアウトされてしまいました。
クオシモードのメンバーは4人。平戸祐介(ピアノ、キーボード)、松岡”matzz”高廣(パーカッション)、須長和広(ベース)、奥津岳(ドラムス)。ただし、レコーディングやここしばらくは奥津が体調不良のためドラムスを今泉総之輔が務め、そこにギグによって何人かのホーン・プレイヤーが参加します。この日は福山光晴(トランペット)と岩本義雄(テナー・サックス)が加わり、アルバムから平戸のオリジナル「モード・オブ・ブルー」、ジャック・ウィルソンの「オン・チルドレン」、ホレス・パーランの「コンガレグレ」(作曲はレイ・バレット)、シダー・ウォルトンの「ザ・ロナー」、そしてケニー・ドーハムの「アフロディジア」が演奏されました。
ぼくは招待席で関係者と歓談していたんですが、最初の一音が鳴ったとたん、そのサウンドの素晴らしさに思わずフロアに飛び出し、そのまま最後まで聴き入っていました。これぞ、この間から勝手にいっている「現代の1960年代型ジャズ」です。典型的なブルーノート・サウンドでありながら、いまのジャズなっています。すべてがかっこよくて、ジャズがファッショナブルな音楽であることを改めて痛感しました。
ブルーノートの黄金時代って、とにかくジャズがかっこよかったじゃないですか。音楽も演奏も、そしてミュージシャンもみんなかっこよかった。その現代版がクオシモードです。
ブルーノートの70周年記念パーティがクラブ・ジャズと呼ばれる音楽で埋め尽くされていたことも嬉しかったです。アルフレッド・ライオンは常に時代の先端を行くジャズを好んでいました。もし彼が生きていて、いまもレコードを作っていたら、こういうジャズに興味を向けていたに違いありません。
このイヴェントに参加し、クオシモードのパフォーマンスに聴き惚れ、体でリズムを取っていたら熱いものが込み上げてきました。ライオンの遺志が感じられたからです。こういう体験ができるとき、ぼくはジャズが、そして音楽が好きでよかったと思います。自分の息子に近い世代のメンバーから、ジャズの楽しさを改めて教えてもらえる。これって素敵でしょ?
ところですっかり忘れていたんですが、ピアノの平戸さんは、15年前にぼくも審査員を務めたハイネケン主催のジャズ・コンテストで1位になったひとです。そのときもレコーディングの話があったのですが、実現はしませんでした。そんな実力派の彼がクオシモードでぼくの前に登場してくれた喜びも、この夜はしみじみと感じました。音楽って、ほんとにいいですね。