週末の土曜日に「ビルボードライヴ東京」に行ってきました。新人シンガー兼ベーシストのエスペランサを聴くためです。
この女性の存在を知ったのは、昨年だったと思いますが、エスペランツァ・スポールディングの名前でスタンリー・クラークの『トイズ・オブ・メン』に参加していたからです。そのときはシンガーとしての起用でしたが、ベース繫がりでスタンリー・クラークのアルバムに起用されたんでしょう。
エスペランサは1984年の生まれです。とても若いのにバークリー音楽大学の講師だそうです。なんでも、最年少の講師だとか。
名前からしてラテン系であることはわかります。土曜に聴いた歌と演奏もそういうテイストでした。ただし、生まれはアメリカのポートランド。16歳で飛び級をしてポートランド州立大学でベースを学び、翌年からバークリーに移っています。こういうひとはやっぱり神童とか天才と呼ばれるんでしょう。
ステージも堂々としていました。小柄な女性ですが、アコースティック・ベースを弾きながら歌う姿は、なかなかチャーミングです。というか、こういう光景って、結構珍しいんじゃないでしょうか。途中でベース・ギターに持ち替えましたが、これもオヴェーションのギターをかなり大きくしたような形のもので、それを抱えるようにして弾きながら歌っていました。
ベースも相当な腕前ですが、ぼくはシンガーとしての魅力に惹かれました。いわゆるスタンダードは歌わなかったんですが、オープニングがベティー・カーターの曲で、これを聴けばエスペランサがどんなタイプのアーティストかわかります。
彼女を最初に認めたのがゲイリー・バートンやパット・メセニーでした。その後はパティ・オースチンのバックアップ・シンガーを務めたり、リチャード・ボナやフォア・プレイとも共演しています。
以前にインディーズから1枚アルバムを出しているそうですが、本格的なデビュー作となった『エスペランサ』でその魅力が堪能できます。なにせ、オープニングが「ポンタ・ジ・アレイア」です。こういう曲をカヴァーするところに、彼女のテイストが感じられるでしょう。ぼくの言ってること、わかるひとにはわかりますよね。
このアルバムではスタンダードの「ボディ・アンド・ソウル」も取り上げています。ただし歌詞はスペイン語でビートも5拍子。そこがエスペランサらしいところでしょう。
今後、彼女がどういう方向に進んでいくのかわかりません。でもせっかくライヴを観たご縁もありますから、どうかもっと大きな存在になってほしいものです。そうしたら、また自慢ができますから。