
今年も「東京JAZZ」の季節になりました。木曜日はウェルカム・パーティがあったんですが、残念ながらこちらは都合で欠席することにしました。サム・ムーアとかスライ・ストーンに会えたかもしれないのに、残念なことをしました。
それで、昨日が初日です。今年も面白いプログラムが目白押しで、観られるだけ観ようと思っているのですが、体調のこともあるのでどこまで付き合えることやら。
会場は去年と同じ東京国際フォーラムの「ホールA」。5000人収容のホールを5回のコンサートすべてで満員にするのは大変なことですが、初日の昨日は、ぼくの周りはほとんど席が埋まっていました。こういう光景は見ていて晴れ晴れしい気分になりますね。主催者じゃないのに、このコンサートに気持ちが入っているってことでしょうか。そもそもこのブログは、「東京JAZZ」との連動企画で始めたものだし、まんざら無縁ではないですから。

オープニングはFRENCH JAZZ QUARTER ALL STARS。ピアニストのエリック・レニーニがリーダー格のグループです。最初にトリオで「コン・アルマ」、次にサックスとトランペットが加わり、コルトレーンから影響を受けたというリーダーのオリジナル、最後はシンガーが加わって「モニュメンタル・ミス・パッチ」という曲が披露されました。
悪くはありませんが、昨日のコンサートを全部聴いたあとで感じたのは、オリジナリティの点でちょっと物足りないかな、ということです。もっとも、後続する凄いリーダーたちの音楽と比べるのは酷ですが。

この日の目当ては日野皓正クインテットです(多田誠司、石井彰、金澤英明、和丸)。とくにここ数年の日野さんのプレイは素晴らしく、観るたびに新しい興奮を覚えてきました。たった2曲、30分ほどの演奏でしたが、日野さんが40年以上にわたって作ってきた音楽が見事な形で凝縮されていたと思います。誰のジャズでもない、日野さんのジャズ。
17歳のドラマー和丸君のプレイも見事でした。彼のプレイを聴いていて、若いころの日野元彦さんの姿が浮かんできました。切磋琢磨して互いの音楽に磨きをかけていた若きころの日野兄弟。あの時代が彷彿とされました。いまの和丸君も日野さんに鍛えられているんだろうなぁ、そんな感じです。全編フリーのリズムでいくらでも多彩なプレイが続けられるところに彼の高い実力を感じました。

日野クインテットが黒で服装を統一していたのに対し、次のロン・カーター・カルテットはお揃いの白いスーツで登場。演出も心得ています。ピアノ・トリオ+パーカッションの編成で、ボサノヴァを取り上げた新作からの曲を混ぜながらのメドレーでした。
ちょっとしたきっかけでリズムが変わり、次の曲に移っていくところがスリリングです。ピアニストのステファン・スコットが目立つのは当然ですが、バックのカーターも見事です。単なるバッキングに終わらないプレイでリーダーシップを発揮してくれました。目立ちはしないものの、パーカッションが効果的に用いられていたところが趣味のよさでしょうか。

最後はデヴィッド・サンボーン。リッキー・ピーターソンのオルガンが相変わらずかっこよくて、サンボーン以外にもバックの演奏に目を引かされました。サンボーン節が以前ほど目立たなくなり、ジャジーなフレーズが連続するようになったのは、年齢からくるものでしょうか。こういう彼のプレイも大好きです。
ただし、サンボーンのステージが始まったのが10時ごろ。体調のことを考え、泣く泣く途中で帰ってきました。それが心残りではあります。
今日は昼の部でハンク・ジョーンズとロン・カーターがN響と共演します。しかもアレンジがドン・セベスキー。今回のフェスティヴァルで一番楽しみにしているのがこのセットなので、心して聴いてきたいと思います。