
1週間近くが過ぎてしまいましたが、2月29日に渋谷の「ORCHARD HALL」で初日のコンサートを観てきました。
ハワイに行ってきたころから立て続けにいろいろな原稿を頼まれて、書いても書いても終わらない日々が続いています。こういう状況、ぼくは嬉しくて、この幸せな気分のまま死んでもいいくらいですが、とにかくかなり先まで寸暇を惜しんで原稿を書くことになっています。
しかもこういうときは悪い癖が出て、いつも以上に丁寧に原稿を書いてしまうんですね。時間に追い詰められる気分が堪らないという、いやな性格というか、アホな性格というか、とにかく自虐的な日々を送っています。そういうことなので、映画も観にいきませんし、ライヴもパス、レコード店にも足を踏み入れていません。

それで、本当に久しぶりに、ライヴに行ってきました。お目当てはパット・マルティーノ。今回はハーヴィー・メイソン・トリオにフィーチャーされての出演でしたが、マルティーノ・トリオといっていいくらい彼が目立っていました。
まあ、マルティーノはどんな編成だろうが、いつもと同じに超絶技巧で弾きまくるので、こちらの予想どおりの内容でした。これがほかのギタリストだと「いい加減にしてよ」と思うこともあるのですが、彼にこう弾かれてしまうと「おみそれしました」となるのはどうしてなんでしょう。
マルティーノって妙に神格化されているところもありますが、ぼくは特段そんな風には思っていません。好きなギタリストのひとりですが、特別な存在というほどじゃないんです。それでも、このひとのプレイは、いつ聴いても心がときめきます。ってことは、やっぱりぼくも神格化しているのかしら。

このオルガン・トリオが大迫力で演奏したため、続いて登場したクルセイダーズのサウンドは、最初「なんてしょぼいんだろう」と思いました。音はすかすかですし、レイ・パーカー・ジュニアなんか、ソロを弾いても「音をけちってるんじゃないの?」みたいな感じでした。しかし、演奏が進むにつれて、このしょぼいサウンドが妙にいい感じになってくるんですね。マルティーノに比べたら、音数が20パーセントくらいしかないレイ・パーカー・ジュニアのギターまで心地よくなってきました。
オリジナル・メンバーのジョー・サンプルにしてもウィルトン・フェルダーにしても、決してうまいとは思えない程度のプレイでした。それでもそこが味になってしまうんですね。いくら若手が張り切ってばりばりとプレイしたって、こういう人たちにはかなわないだろうな、なんて思いながら観ていました。
ジャズは年輪が大切な音楽かもしれません。正確にいうなら「年輪が」じゃなくて「年輪も」かもしれませんが。だって昔のクルセイダーズには、先週のグループは逆立ちしたってかないっこありません。それでも、ぼくはいい感じで楽しめました。同じことは、全盛期だったころにニューヨークで聴いたマルティーノのプレイにもあてはまります。これだから、ジャズのライヴは楽しいんですね。
でも、しばらくは原稿書きですね。これも楽しいですから。で、どっちが楽しいんだろうと自問自答してみました。うーん、難しいんですが、目先のことが気になる性質なので、取りあえず原稿を書くのがいまの時点では楽しいかもしれません。でも、ストーンズとかポールが来るんだったら別ですよ。
それで、この夜の3番手はデイヴ・コッズでしたが、これは観ないで会場を出ました。9時前に夕食を食べるのが優先事項ですから。これもあって、なかなかコンサートやライヴに行けません。面倒な体になったものです。