6日の毎日新聞朝刊の書評欄で、先月発刊した『ジャズマンがコッソリ愛する ジャズ隠れ名盤100』(河出書房新社)が取り上げらました。ぼくのところには写真のようなファクスが版元から送られてきたので現物は見ていませんが、かなり大きな扱いだったようです。
評者の井上章一さんは『美人論』で知られる国立国際日本文化研究センター教授で、41歳のときからジャズ・ピアノを弾くようになり、そちらでも著作を物にされている方です。それだけに、拙著も少しはお役に立てたのかもしれません。だとしたら嬉しい限りです。
井上さんは、こんな風に書かれています。
「しかしジャズ批評の書き手に、楽器の心得がある人は、あまりいない。どちらかと言えば、文芸的な作文にながれてしまうむきが、主流となっている。このことに、私は以前から不満をいだきだしていた。楽理のわかる人が書いた批評を、読ませてほしいと、そう思うようになっている。まあ、ピアノをすこしかじって、生意気になったというべきか。『スイングジャーナル』誌には、そんな私のかわきをうるおしてくれる欄があった。「アイ・ラヴ・ジャズ・テスト」のコーナーである」
井上さんはこの欄を、「毎回読むのを楽しみにしていた」そうで、「雑誌そのものは買わずに、そこだけを立ち読みですませていたのだが」と続けます。SJの人が見たらがっくりでしょうが、ぼくはそれでも嬉しいですね。この頁を気にかけてくれていたひとがいたんだとわかりますから。
「本職のミュージシャンたちが本音で語っていたかは、うたがわしい。(中略)しかし、そのあたりのことは編者の小川隆夫が、解説でおぎなってくれている。これもあわせ読めば、今のべたのようなゆがみは、いくらか修正することができる」
そういうことなんです。ぼくも社交辞令だけじゃなく、なるべく本音を語ってもらおうと迫ったのですが、「本気でそう思っているの?」というコメントをしてくれたミュージシャンもたまにはいました。そのあたりを補足したくて、各頁に「after thoughts」という欄を設けました。ここには、自分の感想なども書いてあります。
それで、今日、書きたかったのは、この書評のお陰だと思いますが、フト思いついてAmazonをチェックしたところ、月曜の夜の時点で、この本の売れ行きランキングが480位になっていたことです。このランキングがどういう基準で作られているかはいまもって謎ですが、ともかく3桁台はぼくにとって2度目です。いったい何冊の本をAmazonが扱っているかは知りません。それにしたって瞬間的にでも480位は凄いでしょ?
おまけにそれ以前に出した2冊の『100』も、1冊目が1589位、2冊目が4990位と、かなり上位にランクされていました。1冊目はそれまでにもコンスタントに売れていて増刷になりましたし、2冊目もここに来ていい感じになってきました。相乗効果でしょうか。
そして今回の3冊目は、版元によればこれまでの2冊より出足が快調で、年末・年始もコンスタントにオーダーが入っていたそうです。今回は、タイトルに少し「マニア向け」のニュアンスを込めたんですが、それがよかったのかもしれません。
筆者にとっては本が売れるのがなによりの励みになります。ジャズ本はそんなに売れないのが常ですが、出したからには売れてほしい――そう思うのは至極当たり前のことで、そのためには内容のある本を書かなくては。いまも新刊の執筆に取り掛かっていますが、このことを肝に銘じ、楽しみながら真剣に書いていこうと思います。