また買ってしまいました。自分へのクリスマス・プレゼントです。以前このブログで紹介したイギリスのGENESIS社が出した新刊『California Dreaming』が先日届きました。これは、その昔モダン・フォーク・カルテットにいたヘンリー・ディルツの写真集です。
いつものようにこの本も豪華な装丁で、2500部限定、筆者のサインと限定ナンバー入りです。ぼくには決まった番号が割り振られていて、それは605番なんですが、最初に買ったジョージ・ハリソンの本がこの番号だったことから、これがぼく専用になりました。そういうわけで、新しい本が出るときには事前にオファーが届きます。それを購入するとこの番号の本が送られてきますが、買わなければ、誰かほかのひとのところに行くようです。
今回も段ボールのパッケージで2重に梱包されて届けられました。
箱を開けると、ご覧のように布の袋に入った本が出てきます。
袋の中にはスリップ・ケース(左)に入った本があります(当たり前ですね)。ケースはろうけつ染めした布ばりで、本は背表紙が皮です。
表紙を開くとこんな感じです。右ページの真ん中に木のイラストが描かれた四角いものが見えますが、これは付録のCDが入っているペーパー・スリーヴです、これで本の大きさがだいたいわかるでしょう。CDはディルツが参加していたMFQが1970年代に吹き込んだフォークの名演集です。
で、このディルツですが、彼が写真を撮るようになったのは、MFQでツアーをしていたときに、メンバー全員で中古のカメラを一台ずつ買ったのがきっかけだそうです。それでツアーの時間潰しをしていたんですが、すっかりはまってしまったのが彼でした。
そういうわけで、最初は仲間内で写真を撮っていたそうです。ところが、この仲間が半端じゃありません。1966年ごろといえば、ロサンジェルス周辺のフォークやロックが盛り上がろうとしていた時代です。バッファロー・スプリングフィールドからはじまって、CS&N、そこにニール・ヤングが加わり、ロックではドアーズが大きな評判を呼んでいました。
ディアツはそういうひとたちを片っ端から撮っていきます。友達ですからみーんなプライヴェート写真。ジョニ・ミッチェルなんか、かなり個人的な人間関係まで撮らせていますし、まだ無名だったリンダ・ロンシュタットも彼らの仲間だったことがわかります。
そのうちディアツは、腕が見込まれてレコード会社から写真撮影の依頼が舞い込むようになります。有名なアルバムのジャケットもたくさん撮っています。
こんなお宝写真もあります。手前はジョージ・ハリソンでしょうか。奥にはジョニ・ミッチェルとママ・キャスがいますし、右にはドノヴァンの顔も見えます。
ミックとスティーヴン・スティルスの2ショットなんていうのも出てきてドキッとしました。
しかもこの本、テキストも充実していて、本に登場する多くのロック・スターたちがかなりの量のコメントを寄せています。
時代はまさに「Summer Of Love」でした。ぼくもこの時代にカリフォルニアに居たかったと、いまさらながらに思います。しかしその時代を享受するには少しだけ若かったので、居てもぼくの周りを楽しいことは素通りしていったでしょうね。
日本でも、この時代は、一部ですが「Summer Of Dream」の様相を呈していました。フォークやロックが体制を打破して、自分たちの世界を作る。学生運動とは違う形で、そういうことをやろうとしていたひとたちがいました。新しい時代が信じられる、あるいは信じたい、もしくは信じられるかもしれないと、ぼくも他愛なく思っていました。
そのころ、ジョン・レノンは「30歳以上の大人は信じない」といいました。ぼくもそう思っていました。しかし、その年令の倍近くになったいまは、あの突っ張った気持ちがすっかり陰を潜めて、なんと妥協的な日々を過ごしていることでしょう。
たまにはこの『California Dreaming』を眺めながら、そのころの自分や熱い思いがたぎっていた日々を思い出さなくては。もういまではなにも出来ませんが、そういう突っ張った気持ちは忘れちゃいけないと。こんな風に思うのはセンチメンタリズムかもしれませんし、ぼくの未成熟な部分かもしれませんが、ね。
明日からはニューヨークです。結局、向こうでも原稿の仕事が中心になりそうです。でもそれが楽しいんだから、自分でも呆れています。こういうの、ワーカホリックっていうんでしょうね。